AV女優本から徹底分析! なぜ、AV女優は大衆化したの?【前編】

AV

2014/12/10

 

  

 AV女優にあこがれを抱く女性が増えているらしい。昔は、AV業界といえば、裏社会との関係が濃厚、ダークなイメージが付きまとっていたが、現在では、自ら志願してAV女優になる者も少なくはないようだ。「アイドルよりも可愛い!」「生き方に共感!」と男女問わず、多くの人が彼女たちの動向を気にしている。かつてはマイナスのイメージだったAV女優が、どうして今、人々の注目を集める存在となったのだろうか。今回は、彼女たちをテーマとした本「AV女優本」を4ジャンルに分類し、「AV女優本」マップを作成した! さぁ、このマップを元に男性だけでなく女性にもAV女優が世の中的に、“アリな存在”となった過程を前編・後編に分けてみていこう。

 

男性向けに作られた「How to系」の対象が次第に女性へと変化

■古臭いAVが広めた「男性本位のセックス」を否定するアダム徳永

 ポルノ映画に代わる新しい分野として1980年代にAVが誕生して以降、1990年代までAV女優という職業は社会の底辺のひとつとして認知されていた。現在に比べれば、この頃のAVの作品レベルは低く、女性の裸とセックスが映っているだけのもの。そんなAVに影響されて生まれたのが射精や絶頂を目的とした男性本位のセックスであり、それを批判するものとしてセックスセラピストのアダム徳永が2007年に『スローセックス完全マニュアル』を上梓。その流れを受け、女性が喜ぶセックスの方法を伝授すべく誕生したのが「How to系」のAV女優本だ。調べてみると、AV女優だからこそ知るセックスの奥義に関する書籍が2009年以降、次々と出版されていることがわかる(この年に始まったのがテレビ東京系列で放送された『おねだりマスカット』だ)。

 たとえば、希志あいの著『焦らしセックス』や、吉沢明歩著『ポリネシアン・セックス』、範田紗々著『フィンガーセックス』では、超人気AV女優たちが自身の過去の性体験を赤裸々に暴露しながら、彼女たちがしたいセックスの秘技を読者に伝えている。大好きな女優が綴る「How to本」は、AV以上の興奮を与えるに違いない。「希志あいのは家でノーブラ」「吉沢明歩はバックが好き」などという秘話は、How to本として書籍を手にした読者にとって本来ムダな情報であるはずだが、それが逆に支持を集める要因となった点から見て、この頃のHow to本は、男性のためのファンブックとしての傾向が強かったといえるかもしれない。

■東大教授も認めたAV監督・二村ヒトシの恋愛論

 そのうち、2010年に『女医が教える本当は気持ちのいいセックス』が発売され、男性だけでなく、女性を対象とした書籍が発売されるようになる。女性も性的なものに関心を強く持っている、という認識が広まると、AV女優本も女性読者を意識したものとなっていく。特に、監督、男優として数々の女優と関わってきた二村ヒトシは『すべてはモテるためである』などの書籍で、AV業界で働くことを通じて身につけたセックスにとどまらない独自の恋愛論を公開。ジェンダー研究のパイオニアで東京大学名誉教授の上野千鶴子氏が絶賛するように、女性からも強い支持を集めるようになった。

 女性の中に眠る性的関心が明らかになることで、AV女優や彼女たちをとりまく環境により強くスポットライトが当てられ始めた。AV業界という特殊な環境下にいる彼らだからこそ体得できた哲学に注目が集まってきたのである。

 
【本の紹介】

アダム徳永『スローセックス完全マニュアル』(2007年)

男性本位のセックスを否定し、アダムタッチなどを用いたスローセックスを提唱した画期的な一冊。

吉沢明歩『ポリネシアン・セックス』(2009年)

人気AV女優によるセックスハウツー本。吉沢自身の性癖についても触れられており、男性ファン向け。

二村ヒトシ『すべてはモテるためである』(2012年)

AV監督、男優の著者が自身の経験をもとに綴った恋愛論。女性読者を獲得し、ベストセラーに。

 

「業界裏話系」書籍からAV業界の変化が見える?

■「中の人」が語るAV業界黎明期の壮絶ストーリー

 ベールに包まれたAV業界が興味を惹きつけてしまうのは、今も昔も変わらない。AVを見ているだけでは分からない業界の裏の姿を男優や監督などの関係者が暴露した「業界裏話系」の書籍はいつの時代も人気があり、人々はどうしても過激さを期待してしまう。特に1999年に発売されたAV監督・バクシーシ山下の『セックス障害者たち』の過激さは、今もなお語り継がれている。井川楊枝氏著 『封印されたアダルトビデオ』にも数多く取り上げられているように、元々バクシーシ山下の作風自体が「抜けないAV」や「社会派AV」と形容されるものだった。代表作「女」シリーズでは、レイプシーンの暴力性に女性団体から抗議があった程だし、他の作品も排泄物や吐瀉物は当たり前。包茎切除した皮と、脂肪吸引されたAV女優の脂肪を食べる「人肉食AV」や、死亡したAV女優の墓石を縄でグルグル巻いて縛りつけ、鞭で打ち、ロウソクも垂らすSM(?)などの作風は狂気じみていた。こうした作品を作るに至ったきっかけ、思いなどをバクシーシはこの本の中で綴るが、覚醒剤も麻薬もやくざも当たり前のように存在する業界のダークな印象が色濃く反映されている。

 その他にAVの黎明期に活躍した監督といえば、村西とおるについても触れる必要があるだろう。本橋信宏著『AV時代―村西とおるとその時代』では、村西自らが監督・男優・カメラマンを兼ねて本番をする「ハメ撮り」、顔面に射精することで本番行為を行っていることをアピールする「顔面シャワー」、ストッキングを荒々しく破く行為など、村西が現代のAVにも通じるスタイルを生み出したことが触れられている。彼の出世作は1986年に発売された「SMぽいの好き」。横浜国立大学でイタリア美術を専攻しているという高学歴かつ良家の令嬢・黒木香が、16歳以降剃ったことのないというわき毛を露出し、絶頂時にはホラ貝を吹き鳴らす(?)という姿は、当時大きな話題を呼び、その特異なキャラクターが重宝されて黒木はテレビ番組にも多数出演した。このような高学歴・個性派AV女優は時代を進むにつれて、一般化していくが、彼女の存在はその先駆といえるかもしれない。

■ハイスペック化するAV女優に憧れ応募者が増加

 現在、AV女優に求められるスペックは10年前と比べものにならないほど高くなった。ルックスやスタイルだけでなく、協調性がある性格でないと競争に勝つことができない。ただでさえ倍率が高いのに、AV女優は毎年2000人程度がデビューし、翌年まで残るのは10人いるかいないかだという(溜池ゴロー『AV女優のお仕事場』より)。現在では、AV女優を目指す者は後をたたず、昔のような陰鬱な世界ではなく、みなビジネスライクに割り切っているようだ。製作費が下がり、スタジオを借りて分刻みのスケジュールをこなす女優たちの様子を描いたこの本を読むと、業界がある程度健全化しつつあるのが伺える。

 かつては過激さを売りとした場所、ダークさが漂う場所だったAV業界は現在クリーン化が進んでいる。また、AV女優や男優、監督によるHow to本の流行、AV女優のテレビや雑誌への露出増加により、AV女優に憧れる女性が応募者も増加。需給のバランスで高いスペックが求められる現状となってきたのだろう。

 
【本の紹介】

バクシーシ山下『セックス障害者たち』(1999年)

“社会派”AV監督・バクシーシ山下自身によるウンゲロまみれの撮影記録はじつに生々しい。

本橋信宏『AV時代―村西とおるとその時代』(2005年)

サブカルチャーを中心に論評を行う本橋が、AV監督・村西とおるを軸に業界の裏側に迫った。

溜池ゴロー『AV女優のお仕事場』(2013年)

数々のAV女優を見出してきた人気AV監督が、AV女優という仕事の本質と彼女たちの真実を抉りだす。

 

 続く【後編】では、さらに「外から分析系」「自分切り売り系」の書籍も見ることで、業界の変化に迫ってみよう。

文=アサトーミナミ

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