出版社はブラック?!出版業界新人たちのぶっちゃけ座談会【入社編】

マンガ

2015/2/28

「出版業界新卒座談会」と称し、【就活編】では、出版業界の就活事情に迫った。続く、【入社編】では、新人たちが実際に出版社に入社してみてからの奔走を見てみよう。

【座談会参加者】
札幌くん(仮名): 某出版社宣伝部所属・1年目(文系学部卒)・男性
好きな本=眞鍋かをり『眞鍋かをりのココだけの話』
調布くん(仮名): 某出版社週刊誌編集部所属・1年目(理系院卒)・男性
好きな本=ロバート・A・ハインライン『夏への扉』
川越さん(仮名): 某出版社電子メディア事業部所属・1年目(文系学部卒)・女性
好きな本=穂村 弘『にょっ記』
磐城さん(仮名): 某WEB系の編集プロダクション所属・1年目(文系学部卒)・女性
好きな本=遠藤周作『深い河』

――皆さん、今どんな仕事をしているんですか?入社後の配属は望んだ通りのものでしたか?

【川越さん】元々出版業界の新人はなかなか書籍編集に行かないし、編集に行けても、大体雑誌だとは思うけど…。私の会社は基本、1年目は営業、何年かして編集って流れが多いみたい。だから、電子書籍とか扱うコンテンツ事業部に配属された時はビックリした。けど、最近は、新しいモノを生み出すんじゃなくて今あるものを使ってお金を稼ぐ方法を考えるっていうのも面白いなぁって思い始めたの。もちろん、今でも編集者になりたいけど…。

【札幌くん】僕は「テレビっ子」アピールをしていたから宣伝に配属されたのかもなぁ。結構楽しいけど、もうすぐマンガに異動になりそう。

【調布くん】俺は書籍編集志望だったけど、週刊誌担当になったのは結果として良かったかなぁ。世の中のことを調べるのって楽しいし、書籍を作るのとは違うけど、グラビアができたりとか、何でもできるから。色々やらされて、一年目は面食らっている部分もあるけれど、志望通りじゃないからこそ逆に、思い込みで仕事しなくて済むしね。

【札幌くん】自分が読んでいる雑誌とか読みたい本を作るばかりじゃないからね。

【調布くん】俺が作ってるのはおじさん向けの週刊誌だから、「年金」とか「政治」とか「精力減退と男のプライド」とかがウケるけど(笑)、自分の視点からだけだと、正直よくわからない。けど、「こういう人には受けるんじゃないか」っていう視点を持つことが大事なんだろうなってわかってきた。

――実際に働いてみて、今まで抱いていた出版社や編プロのイメージとのギャップはありましたか?

【磐城さん】いや…私は、「編プロはブラックだ」と思って入ったら、ブラックだったから、イメージ通り(笑)。私、最近新しいサイトをローンチしたばかりで、本当にしんどい。編集したり、書いたり、ライターさんブッキングしたりとか、編プロは何でも全部やりますからね…今日も徹夜明けだし。

【川越さん】え⁉ 編プロってやっぱすっごい忙しいの?

【磐城さん】家に帰れるのは週に1~2回くらいで、後は会社泊まり。会社の近くに銭湯はあるんだけど、仮眠室はないから、デスクで寝たり、椅子を3つくらい並べて、その上で寝てる。

【札幌くん】…まぁ…ちゃんと寝ようと思ったら出版業界選ばないよね。

【川越さん】でもさ、入ってみないと実感できなくない?

【調布くん】確かに…大学時代とか毎日10時間とか寝てたから、「寝なくったって余裕でしょ」って思ってたけど、10時間寝てる頭で考えてたからね…(笑)。

【磐城さん】ホント命削ってんなぁって思うよね。編集は楽しいけど…。

【調布くん】同業者じゃないとこの生活リズムはわかってもらえないだろうなぁ。

【札幌くん】学校の先生の彼女と同棲している奴は、頻繁に彼女に「帰れないわけないじゃん」って文句言われてるらしい。本当にやばい時は、「帰れるわけがないじゃん」って感じだと思うけど(笑)。付き合うなら、自社じゃなくても同業者がベストなのかもね。

――お酒を飲むヒマもない?

【磐城さん】私、お酒好きなんですけど、飲みにいく時間もなくて…皆さんは時間あるんですか?

【札幌くん】いや、こっちは結構飲んでるけど、それも「仕事」だなぁ…。

【川越さん】多くはないけれど、電子書籍も営業と一緒だよね、取引先と飲んだりとか、取次と飲んだりとか…。

【調布くん】まぁ、週刊誌は「いろんな人と飲んで仲良くなってネタを取ってくる」っていうのが仕事だからねぇ。他の会社の編集部だと、0時過ぎたら飲みながら仕事していいってルールとかあるらしいし。余談だけど、酒を飲むとゲラチェックの勘が冴えるって知り合いがいる。仕事しながら飲むしかないのかもね(笑)。

――そんなに忙しいということは…お給料は…?

【磐城さん】いやいや、全然妥当じゃないですよ。もう時給換算できない…。

【調布くん】よくいうよね、時給換算したら、吉野家のが稼げるらしいって。ボーナスや残業代が出なくても、家賃補助が出たり、逆の会社があったりいろいろ。そういう格差があるからかも知れないけど、転職も多いよね。だから行きたくない会社しか内定がなくても、とりあえず、出版業界に入って中途で入るっていうのは、現実的かも。

【川越さん】就活の時って、お金のこととかないがしろにしがちだけど、募集要項はきちんとチェックした方がいいかもね。

――じゃあ…出版業界はつらいことばかりということ?

【調布くん】そうかもしれないけど…でもまぁ、この業界の人ってどんなに忙しくても、忙しいからこそ、自分の趣味嗜好を仕事に昇華させている人が多いようなイメージ。

【札幌くん】うん。そうじゃなかったら仕事に時間を割かない。実際、人に会うのはすごく楽しいし、仕事じゃないみたいに思うこともある。地味な仕事が9割5分。残りを全力で楽しんでるのが実態かな。

 

 新人たちはシビアに出版業界のありさまを分析してくれた。華やかさばかりが取りざたされる出版業界だが、実態は、他の企業と相違ないのかもしれない。本当に出版業界を目指そうというのならば、夢ばかり見ず、しっかりと現実も受け止めて、飛び込んだ方が良さそうだ。とは言っても、あれやこれやと出版業界に文句を言いつつ、座談会参加者の新人たちはみな、活き活き働いているように見えた。真の本好きにとって出版業界の仕事は、寝食も忘れられるほど、惹き付けられるものなのかもしれない。

取材・文=アサトーミナミ