全員フリーランス!講談社から生まれた8人の小さな会社【星海社広報・築地教介さんインタビュー】

更新日:2015/2/28

   

 例年、人気企業ランキングの上位には複数の大手出版社の名前があがるが、当然ながら現実の出版業界はそうした大手ばかりではなく、多くの中小出版社、地方出版社で成り立っている。出版業界への就職をめざすなら、会社の規模にとらわれすぎずに、広く業界を見渡したほうがチャンスは確実に増えるだろう。
 実際、小さな出版社には大手とは違うどんな武器があるのか? 働き方に違いはあるのか? そんな疑問に迫るべく、今回の突撃取材は(株)星海社へ。個性的な新書シリーズなどで話題のこの会社は、現在創業5年目。社長・副社長以外のメンバーは全員フリーランスという一風変わった組織づくりで知られる、業界でも注目の存在だ。社内には異業種からの転職も多く、今回お話をうかがった広報担当の築地教介さんもその一人。気になる会社の実態に迫ってみよう。

星海社 広報・築地教介氏

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小出版社だからできる「親しみやすさ」と「機動力」

—星海社さんは、とても変わった会社だという印象です。どういう会社なのか、学生向けにざっくり説明していただけますか?

出版業界の同業からも「謎」の組織といわれていますからね(笑)。弊社は元々、講談社の起業プロジェクトから実現した講談社100%出資の会社です。講談社の営業だった社長、同じく編集だった副社長の下、メンバーは副社長を含む編集者5名と広報、フォントディレクター各1名という体制です。メンバーは全員フリーランスとして業務委託契約で働いていますから、就業規則や出社義務もありません。必要に応じて出社し、星海社というリソースを使って、自分自身の市場価値を高めることを目指しています。経営サイドには“未来の出版を実現する”、というミッション、“デジタル、ペーパー、イベントの3つを連動させることでお客様に新しい体験を提供し、感動を共有するコミュニティを作る”というビジョンがもちろんあるものの、そのためにはまずメンバー一人一人が「一出版人としてプロになる。そのために星海社というステージを利用してほしい」というのを強くメンバーに伝えていますね。

—講談社の100%出資ということですが、講談社の一部門としてブランド化するのではなく、あえて新しい会社を作ったのはなぜなのでしょう?

ここは社長から聞いた話なのですが、小規模になることで機動力をあげ、よりチャレンジャブルであることを目指したとのことです。

—大きな組織では実現が難しい面があったと

ある作家さんの本があったとして、購買者が作家のファンなのか出版社のファンなのかはたまたそのレーベルファンなのかがわからない。もちろん作家のファンが買ってくれればいいんですが、できればもう少し版元の力、レーベルの力というものを、読者に意識して好きになってほしいという思いもあるわけです。やはり小さな組織ですからSNSの運用もスムーズですし、読者の反応もダイレクトでファンがついてきてくれることを実感しますね。文芸や漫画を軸とした『最前線』、新書を軸とした『ジセダイ』という2つの自社WEBサイトも注目があがってきていますし、メンバーがあえて実名でやっているTwitterも、圧倒的に読者と近い。そのあたりはやはり大きなメリットになっていますね。

—なるほど。そういう関係を築きながら、着々といろんな本を出してこられたと

 最近は星海社新書が好調で、類書のないタイトルが多いということで、割と目立つところにおいてもらえるようになりました。2月の新刊も『内定童貞』(中川淳一郎)、『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』(山谷剛史)と、毛色の変わったものが出ますので、出版記念イベントなどで盛り上げる予定です。また、6期目に入った今年は、TOHO animationさん、セガネットワークスさんと連携したアニメ、スマートフォンゲーム、ボードゲームが連動したメディアミックスプロジェクト『ケイオスドラゴン』がスタートしましたので、大きな勝負の年でもあります。

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