KADOKAWAがまたやらかした!? もはや人間ですらないアイドル「石膏ボーイズ」の真相を中の人に直撃!

2015/3/26

「石膏ボーイズ」メンバー

 アイドルは人間――。誰もが疑うことすらなかった事実である。戦国時代、群雄割拠と称されたアイドル業界では、様々なコンセプトを打ち出すユニットが目につく。仮面で姿をひた隠すユニットがいるかと思えば、女性ながらも男性として振る舞うユニットがいたりと、枚挙にいとまがないほどのグループが乱立している。

 また、近年では女性たちの活躍が目立っていたアイドル業界だが、ここ最近では男女混合ユニット、男性ユニットの躍進もめざましい。老舗であるジャニーズ勢の活躍はもちろん、『妖怪ウォッチ』のエンディングテーマや紅白出場で話題となったDream5や、スターダストプロモーションの超特急など、もはや「男性アイドル戦国時代」へとさしかかってきたかのようにみえる。

 しかし、今年2月上旬。たしかに男性ではあるものの、人間か否かで解釈が二分されるかのような“アイドルユニット”たちの動画がネットで話題を集めた。その名は「石膏ボーイズ」だ。メンバーは誰もがおそらく一度は目にしたことのある石膏像たち。中学や高校の美術室に置かれていたような、あの真っ白で上半身のみの姿をした彼らである。

 メンバーは4名。愛に一途な軍神・マルスと、商業・牧畜・泥棒の神を司る美肌のマルチタレント・ヘルメス。そして、親からの宿命を継ぐ軍人かつ聖人である聖ジョルジョ、文人や芸術家との親交が深かったとされる元祖セレブリティのメディチからなる。


 いまだ素性には謎の多い彼らだが、なぜ石膏像がアイドルとしてデビューすることになったのか。また、今後の展開はどうなるのかを関係者に直撃。老舗画材メーカー・ホルベイン画材株式会社の野尻浩二さん、ザリガニワークスの武笠太郎さんと坂本嘉種さん、株式会社KADOKAWAの成田耕祐さんに、お話を伺った。


無数にあった石膏像の中から“ボーイズ感”を持つ4名を選んだ

――プロジェクト発足の経緯からお聞かせ下さい。

武笠「ホルベイン画材さんから『従来のイメージに囚われない新しい商品企画』を求めらたのが出発点でした」

野尻「共通の知人がザリガニワークスさんを紹介してくれたんですが、絵画人口の減少もあり『とにかく面白いモノを作りたい』と考えたんですよ。美大生も少なくなっているので、美術用品の老舗として新たな販路を開拓する狙いもありました」

武笠「初期段階では『“コレジャナイロボ”の石膏像を作りませんか』という話もありましたが、坂本と話しているうちに『新しいけど、一方でちゃんとホルベイン画材さんらしさが醸しだされるものを作ろう』と意見がまとまっていきました」

――そこからどういったいきさつで石膏ボーイズのアイデアが?

武笠「たまたま参考資料として、ホルベイン画材さんから『デッサン用品カタログ』を頂いたんですよ。木炭や鉛筆といった画材も掲載されていて、後半になるにつれて120万円もする石膏像などがタレント名鑑のように並んでいて(笑)」

野尻「画材屋さんや学校の先生などが参考にするものですね。一般の方はあまり目にしたことがないんじゃないかな(笑)」

武笠「眺めているうちに『コレこそがホルベイン画材さんにとっての新しさと“らしさ“が出ているんじゃないか』とひらめきました」

――各メンバーそれぞれの“選考基準“は?

武笠「美大生や美大をめざす受験生にとって、デッサンなどで親しみのある人物たちを選びました。なおかつイケメン、僕らの感じる中での“ボーイズ感”を重視しました」

坂本「“ボーイズ感”は大事だよね(笑)。1軍クラスで人気のある石膏像はやっぱりいるんですけど、『コイツらは絶対外せないだろ』『石膏像といえばこの人たちでしょ!』という中でもボーイズ感のある人たちを選びました」

武笠「“ボーイズ”というコンセプトは企画当初から掲げていて。僕と坂本も浪人して美大をめざした経験があり、当時の記憶を辿りつつ話し合いましたね」

坂本「美大生の中でも石膏像の人気はバラバラで。じつはモリエールという長髪でヒゲの生えた石膏像もいるんですけど、エゴサーチしたら『何で入ってないんだ?!』という声を多数見かけたんです。ヒゲがちょっとボーイズ感とは違うかなということで、今回は惜しくも“落選”しましたが、今後は何かしらで登場するかもしれません(笑)」

――期待したいですね(笑)。ところで、先ほどから出てくる“ボーイズ感”を皆さんはどう捉えていますか

坂本「抽象的なんですが、爽やかさであったりほどよい青年らしさですね。アムールほどの少年だと行き過ぎているし、ブルータスやモリエールだとイカツ過ぎるかなという印象もあったので、バランスを考えた上で今の4人が選ばれました」


当初は葛藤があったものの、今では“アイドル”にしか見えない

――彼らは『アイドル』という位置づけでいいんですね?

武笠「そうですね。いいんですよね?」

成田「アイドルです(断言)。じつはその前に紆余曲折はあったんですよ。ホルベイン画材さんとザリガニワークスさんの企画がある程度固まってから相談されて、初めは『アイドルだ』と言い切ってしまうと変に“色”が付いてしまうんじゃないかと懸念もあったのですが、美術に寄ったものをテーマにすると絵画の世界から出てこられない、と思ったんですよね。今となってはもう“アイドル”にしか見えません(笑)」

坂本「当初はイケメン程度のイメージしかなかったんですよ。ホルベイン画材の担当者の方とデザインをすり合わせるうちに、カッコよさを求め過ぎると『意識の高い画材』『ちょっとオシャレな画材』にしか見えなくなるのを自覚したんですよ。だから、もうバカっぽく振り切ってしまおうと。それからアイドルとしての色付けがされていった感覚はあります」

成田「イケメンは当初からの軸ですね。それに加えて、テレビや映画にも出演できる芸能人という“人”として活躍させてあげたいという思いを抱くようになりました」

――命ある血が通った“人”としての表現で大変な部分はありますか?

坂本「写真選びでもけっこう悩むんですよ。撮影後に『石膏像としてのカッコよさなのか。それとも、人としてのカッコよさなのか』を見きわめるのも難しいですね」

成田「宣材写真の撮影も6時間押しでしたからね(笑)」

坂本「見ている僕らも何が正解なのかが分からず、試行錯誤の連続ですし。特に、聖ジョルジョ以外の瞳がない3人は、照明の当て方で微妙に変化するまなざしを選ぶのが大変でした」

――とはいえ、純粋無垢で心身共に“真っ白”な姿からは想像もかき立てられますね。

成田「一時は『声を当てようか』とも話していたんですが、ヘタにキャラが付かない方がよいという意見もあったのでやめました。神秘的な存在であるといえば、まさにアイドルの語源そのものである”偶像”ですね」

坂本「元々、僕や武笠のような美大出身の人間にとっては“友だち”にも近いんですよ。それぞれの出身者にとって、予備校や美大の時代に連れ添った仲間のような」

野尻「好きなだけではなく、どこか愛憎もこもっていますよね。デッサンでモリエールが『上手く描けない』と苦戦した人もいる。でも、長く見ていたから懐かしいというか『結局、モリエール好きなんだ』と巡り巡って思い至るという」

坂本「メンバーそれぞれには偉人や神としての史実や背景があり、それは軸として持っていますけどね。ただ、人それぞれに解釈する余地もじゅうぶんあると思います」


彼らは仕事を選ばない。メディアを問わずアイドルとして展開

――ちなみに彼らのプライベートについて、わずかでもお聞かせ願えますか?

成田「そうですね、難しいな……。ええと、調布に住んでいます(!)。3平方メートル程の空間で同居しています。家賃が月1万8千円ですね」

坂本「調布とKADOKAWAのある飯田橋をよく行き来していますよね(笑)」

成田「高速道路が苦手ですよね。まだ一度も乗ったことがない。これまではハイエースに乗って移動していたんですけど、メンバー同士が“衝突”しかねないので……まだ高速経験はありません(笑)」

――いつか乗れることを祈っています(笑)。最後に、今後の展望をお聞かせ下さい。

成田「何でもアリといえばアリなんですよ。4月にはホルベイン画材さんとKADOKAWAからグッズが発売されますが、そこからが本格的なデビューですね。『ダ・ヴィンチ』編集部との連動企画も始まりますが、当面は、芸術の秋に向けてメディアや学園祭などのイベント出演で露出を増やしていきたいです」

野尻「美大生や美大をめざす方たちだけではなく、過去に美大へ通っていた方にも懐かしさと共にふれてほしいと思います。もちろん存在が少しでも気になる方々にも、彼らを追いかけて頂ければ嬉しいですね」

成田「彼らは仕事を選びませんから。雑誌の表紙でも音楽番組でも何でも、成人向けでなければ何でも引き受けます(笑)」

坂本「今回惜しくもメンバーから漏れた石膏像や、女性たちのユニットもできればおもしろいですね。モリエールやブルータスもいつか何かしらのユニットへ参加できればと思います(笑)」

武笠「一人ひとりのファンのみなさんが、これからの彼らにぜひ“色”を付けていってほしいですね」

寡黙で純粋無垢な彼らからは、アイドルならではの神秘性もにわかに感じさせられるのが不思議である。ハイエースどころか、いつかは飛行機で故郷・ギリシャへ凱旋する日も心待ちにしたいところだが、彼らがいったいどこへ向かっていくのか。今後の展開からは目が離せそうにない。

公式facebookページ: https://www.facebook.com/sekkoboys

公式twitter: @sekkoboys

Youtube「石膏像が芸能活動!? 『石膏ボーイズPV』」

https://www.youtube.com/watch?v=gDv3HPkvYTs

取材・文=カネコシュウヘイ

特集「メディア化する超(スーパー)アイドル。」


“発信力”が問われるアイドル群雄割拠時代と生き残りの秘訣を書籍から読み解く【前編】
“発信力”が問われるアイドル群雄割拠時代と生き残りの秘訣を書籍から読み解く【後編】
アイドル特集【総論】 改めての素朴な疑問「アイドルとは何か?」
なぜ同性を好きになるのか? ジャニオタ男子(東大生)のアイドルファン分析
“売れる”ではなく“生き残る”。Negiccoに学んだ小さいながらの戦い方
警備の数が2倍に。AKB48傷害事件以降の“接触系イベント”の変化
KADOKAWAがまたやらかした!? もはや人間ですらないアイドル「石膏ボーイズ」の真相を中の人に直撃!