アイドル特集【総論】 改めての素朴な疑問「アイドルとは何か?」

更新日:2015/3/28

   

 アイドルとは何か。特集の執筆を任されるにあたり、進行するに連れてじわじわと身体中に染み渡ってきた疑問である。過去から現在に至るまで、いや、もっといえば未来永劫、誰一人として答えにたどり着けない超難問なのかもしれない。

 偶像。崇拝。カリスマ。辞書を元に並列される言葉は、どれも杓子定規でしっくりこない。分かるようで分からない。考えれば考えるほど、ジレンマに苦しみ、何をしていても頭の中にこびりつき、次第には「アイドル」という単語そのものに、ゲシュタルト崩壊を起こしはじめる。

advertisement

 しかし、分からないというのは立派な、けっして逃げではない一つの答えなんだと気づいた。百組のアイドルがいれば、その数だけの定義がある。百人のファンがいれば、人の数だけみなそれぞれに自分のアイドルを求める。

 今回、アイドルという大きな括りの中で様々な記事をまとめてみたが、その当事者としてわずかながらに私見を述べさせていただきたい。

 僕にとってのアイドル。今この時点で抱くアイドル像というのはきっと、現実にいながらにして、手が届きそうで届かない存在である。(あえてこの文脈で用いるが)BABYMETAL私立恵比寿中学、Berryz工房、吉田凛音、武藤彩未、さくら学院、カントリーガールズ、アンジュルム……、思いつくままに挙げればキリはないのだが、たしかに彼女たちは一人の人間として、それぞれの個性を武器にステージで輝きを放っている。

 そして、彼女たちのまわりにはたくさんの人たちがいる。汗をかいて、歌やダンスに磨きをかける瞬間を見守るスタッフ。彼女たちの幸せを願い、共に成長していくことを覚悟したファン。彼女たちを本気で後押ししたいと願うメディアの人間など、時に苦しみを味わいながらも、今日も明日も、目をキラキラさせて彼女たちの活躍を心から願っている。

 ただ、時には蔑視の対象ともなりうるアイドルという存在。しかし、その空気を何も知らずに語る人たちに言いたい。「イメージのみで語るな」と。彼女たちやそれを支えるスタッフ、そして、イベントやライブへ身銭を切り、時間すらもいとわないファンのすべては、ただただ真剣なのだ。今、自分に問いかけて欲しい。愛を持って、情熱をぶつけられるものはあるのか。自分すらも犠牲にして、相手のために動けるものはあるのかと。

 血が繋がっているわけでもなければ、出生地や年齢、もっといえば国籍すら違うかもしれない。しかし、アイドルや周囲を取り巻く人たちは一心同体である。彼女たちが笑顔になればみんな喜ぶ。辛い時には、互いに苦しむ。そして、ライブ終わりには人と人が繋がり、時に「初めまして」を合図にファン同士で酒を呑みつつ語り合う。

 繋がりが求められるという今の時代、これほどまでに人を結びつける存在があるだろうか。お年寄りにとっての毒蝮三太夫、フィギュアスケートファンにとっての羽生結弦、北海道民にとっての大泉洋と同じく、アイドルファンにとっての彼女たちは、まぎれもなくそれぞれにとってのスターである。

 きっとそこには、CDやDLの販売数、ライブ会場の収容規模では測れない、それぞれのグループならではの魅力も隠されている。今、心の中にわずかでも気になる曲やそのフレーズ、どんな子だろうと興味を寄せるメンバーがいるならば、ぜひ彼女たちのステージへ足を運んでみてほしい。彼女たちが輝くその瞬間を、空気に身を任せて体感してほしい。

 理由などいらない。ただ何となく「足を運びたい」「応援したい」という感情に任せて、彼女たちのまわりにはこれからも様々な人たちが自然と集まり続けるのだ。

取材・文=カネコシュウヘイ

特集「メディア化する超(スーパー)アイドル。」


“発信力”が問われるアイドル群雄割拠時代と生き残りの秘訣を書籍から読み解く【前編】
“発信力”が問われるアイドル群雄割拠時代と生き残りの秘訣を書籍から読み解く【後編】
アイドル特集【総論】 改めての素朴な疑問「アイドルとは何か?」
なぜ同性を好きになるのか? ジャニオタ男子(東大生)のアイドルファン分析
“売れる”ではなく“生き残る”。Negiccoに学んだ小さいながらの戦い方
警備の数が2倍に。AKB48傷害事件以降の“接触系イベント”の変化
KADOKAWAがまたやらかした!? もはや人間ですらないアイドル「石膏ボーイズ」の真相を中の人に直撃!