心霊写真の仕組み、自称・超能力者たち… 『超常現象の謎解き』がもたらすガッカリとロマン

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2015/4/30

「神の手雲」というチェーンメールをご存じだろうか? メールに添付されているのは、まるで人間の指のような形をした、不思議な形の雲の写真。このメールを7人に送信すれば、幸せが訪れるという。

 ところがこの画像、実は海外のジョークサイトに載せられた写真をCG加工しただけの真っ赤なニセモノだった! しかも、元になったのは男性が自分の尻を両手で拡げているという、とってもお下品な写真。神の恩寵どころか、どこかの誰かが仕組んだ悪質な悪戯だったのである。

 このショッキングな真相を教えてくれたのは、『謎解き超常現象』(彩図社)という一冊の本だった。本を書いたのはASIOS(アシオス)。2007年に設立された、「超常現象の懐疑的調査のための会」である。

 超常現象の懐疑的調査? それは一体どんなことをする団体なのか。代表者の本城達也さんに話を聞いた。

――本城さんがASIOSを始めた経緯とは?

「もともと超常現象が好きで、20歳くらいから自分で色々調べるようになりました。しばらく個人で活動していたんですが、一人だと調べられる範囲に限界がある。海外には超常現象を調べる団体がいくつもあるので、そういうものが日本にも欲しいなと思って、知り合いに声をかけていったんです」

――メンバーは?

「18人です。それぞれスタンスは多少異なりますが、超常現象に詳しくて、強い興味を抱いているメンバーで構成されています。歴史に強い方とか、科学に強い方とか、それぞれ得意分野を持っていますね」

――「オカルト否定派」とはどう違うのでしょうか?

「大槻義彦教授はじめ、否定派の方々は結論ありきのことが多い。そもそもオカルトに興味がないので、深く調べもせずに結論を出してしまいます。そういうのは嫌だな、と。ASIOSは結果はどうあれ、調べた結果を公表していくというスタンス。たとえ結論が同じでも、そこにいたるまでのプロセスが否定派とは違っていると思います」

心霊写真に写ったミミズ状生物の正体とは!?

 ASIOSが著書「謎解き超常現象」シリーズで解明してきたミステリーには、以下のようなものがある。

・映画『インディ・ジョーンズ』にも取りあげられた「クリスタル・スカル」
・古代のロマン溢れる「アトランティス大陸」「ムー大陸」
・海洋ミステリー「バミューダ・トライアングル」
・UFOが墜落したとされる「ロズウェル事件」

 これらはほんの一例。マイナーなところでは「エイリアン・ビッグキャット」「ミッキーマウスの壁画」なんてものまで、丹念な調査で解明している。オカルト好きなら、「え、あれもこれも解明済みなの!?」とちょっぴり淋しくなること請け合いだ。

トリックで再現されたUFO&心霊写真/提供:本城達也さん

――定番ネタから最近のネタまで広くフォローしていますね。
「新旧のバランスを取って項目を決めています。定番ネタを扱う際にも、なるべく新しい情報を盛りこんで、これまでと違った切り口で謎解きに挑戦しているつもりです。なかなかそこまで気づいてもらえないんですけど(笑)」

――結果が分かるものだけ掲載してるんじゃないか、という批判もあると思いますが。
「むしろ逆ですね。ネタを決める時点では、結果がどうなるか分からないものが多いです。『分からなければ無理せず、正直に分からないと書いてください』と毎回執筆者にはお願いしています」

――文献を使った調査がメインですか?
「過去に起こった事件は文献中心になりますが、心霊写真の謎解きなどでは現地に出向くことも多いですよ。最近では、マンションの玄関を撮った写真に、奇妙なミミズのような生物が写り込んでいた。ぱっと見た感じではよく分からなかったんですが、現場に行ってみて判明しました。ドアについた牛乳用のポストに、死角に置かれた物が反射していたんです。あれは現場に行かないと分からなかったですね」

ASIOSに挑戦してくる超能力者たち

 最新作『謎解き超常現象Ⅳ』では、超能力があるという人々からの挑戦に応え、実験をおこなっている。頭から不思議な力を否定するのではなく、とりあえず実験してみよう、というスタンスはいかにもASIOSだ。

――どんな人たちが挑戦してくるのですか?
「透視、スプーン曲げ、風を起こすことができるという方などです。残念ながら実験まで行ける人は一握り。多くはこちらが実験条件を提示すると、音信不通になってしまいます。お会いした方は皆さん、嘘を吐いているという感じはしなかった。自分の能力を信じて、調べて欲しいとコンタクトしてくるんです」

――本城さんは普段、別のお仕事をされているんですよね?
「そうです。プライベートの時間は、ほぼ調査に使っている感じですね。テレビの録画予約リストはずらっとオカルト系の番組ばかりで(笑)。ニュースサイトの記事もチェックしなければいけないし、時間がいくらあっても足りないですね」

――そこまで時間と労力とお金をかけて、超常現象を調査するのはなぜですか?
「やっぱり真相を知りたい、っていうのが最大の動機ですよね。調べてみると真相が分かるかも知れないじゃないですか。これは一体何なんだろう、という好奇心が根底にあると思います」

――最近特に印象的だった調査は?
「石が宙に浮いているように見える『フライング・ストーン』というネット動画があるんです。ぱっと見、CGじゃないかと思ったんですけど、よく調べてみるとクモの糸に石が吊り下げられていた。似たような動画が他にもあるんです。クモの糸にそんな強度があるなんて知らなかったので、ちょっと興奮しました。自分でも思いも寄らない結論に辿りついた時が楽しいんですよ」

すべてが解明されることなんてありえない

 ASIOSの「謎解き超常現象」シリーズは、これまであまりなかったタイプのオカルト本として読者にも好評のようだ。

――ASIOSが目指しているものとは?
「超常現象へのアプローチは人それぞれで構わないと思います。非合理的なものを批判することが目的ではありません。調べた結果をネットや本で参照できるようにしておくことがASIOSの役割。参考文献も載せているので、興味がある人は自分で調べられますしね。超常現象にはこんなアプローチもあるんだ、と知ってもらうだけで嬉しいです」

――真相を知ってしまうとロマンが壊れる、という批判もあると思います。そんな批判にはどう答えますか?
「気持ちはよく分かるんです。僕自身、ガッカリすることがよくあります(笑)。でも、超常現象を調べていくと、古代の高度な技術に感動したり、背後にある人間ドラマに興味を覚えたりという別の楽しみにも出会える。それに、いくら調査を重ねても、すべてが解明されることなんてあり得ない。毎回、現時点では分からない、というものも必ず掲載しています。その中には、もしかしたら真の超常現象の候補になるものがあるかもしれない。そこにロマンを感じてみてはどうでしょうか」

 ASIOSはオカルトを潰そうとしている? とんでもない。あらゆるオカルト番組を録画し、コンビニ売りのオカルト本までチェックするという本城さんは、半端なビリーバーの何倍も真摯にオカルトと向き合っていると言えよう。これが愛でなくて何だというのか。

 オカルトなんてどうせ全部インチキでしょ? と頭から思いこんでいる人は今すぐ『謎解き超常現象』を読んで、啓蒙されるべし!

取材・文=朝宮運河

謎解き超常現象』(ASIOS/彩図社)

謎解き超常現象Ⅳ』(ASIOS/彩図社