眉目秀麗な男たちが絡みあう、衝撃的なカバー。話題のBL『処女執事』は、実は泣ける純愛小説だった…!

更新日:2017/4/10

 ときに過激なカバーイラストが話題になるBL市場。ここにまたひとつ、衝撃的な作品が登場し、BLファンの間で注目を集めているのは、『処女執事~The virgin-butler~』(沙野風結子:著、笠井あゆみ:イラスト/白泉社)だ。

 イラストを手掛けたのは、笠井あゆみ氏。カバーや挿絵で絡みあう男性たちは、息を呑むほど眉目秀麗。その一方で、妖艶なエロさも満点。あまりの衝撃に、男性がこれを手にレジに並ぶのは、ちょっと憚られてしまうほど。パッと見は耽美な鬼畜系BLの雰囲気だ。けれど、その入口だけを見て引き返してしまうのはもったいない。本作は、見た目からは想像もつかないほど、「泣けるBL」として評判を集めている作品。読み手の心を震わすような「純愛モノ」なのだ!

 物語の主人公となるのは、保坂己裕。彼は、二条家の跡取り息子・二条則雅に献身的に仕える“執事”である。二条のことを盲信し、忠誠を誓う。他のことには目もくれず、ただただ二条のためだけに働く。それはもはや執事の域を超えている、ともいえる。どうしてなのか。答えは簡単、彼が“処女執事”だからだ。

 処女執事とは、特定の主にのみ絶対的な忠誠を誓うよう、“遺伝子操作”された執事のこと。登録された主人に対して尽くすことで幸福を感じるように設定されており、保坂の場合は、二条がマスターとなる。

 そんな2人の仲を引き裂くのが、二条の友人でもある、サイ・ネヴィル。粗暴を絵に描いたような男・サイは、保坂をひと目見た瞬間、彼が処女執事であることを見抜いてしまう。決して知られてはいけない秘密を知られてしまった――。平静を装いながらも動揺を隠し切れない保坂。サイはそんな保坂を手に入れるために、経営者としての手腕をふるい、二条邸ごと保坂を奪い取る。そしてサイは、保坂を夜ごと犯し、性的にも支配しようとする…。

 と、ここまで書くと、よくある「鬼畜系BL」のストーリーラインをなぞっているようだが、物語は中盤から急転直下の変貌を遂げる。サイがどうして保坂の出生の秘密を知っていたのか。どうしてそこまで固執するのか。保坂はどうして二条のための処女執事となっったのか。その答えは、保坂の失われた“記憶”に隠されている。果たして、彼の記憶の奥底に沈んでいる、秘密とは…。ここから先は重要なネタバレになってしまうため伏せておくが、読み終わったとき、サイの一途な想いに胸が締め付けられるだろう。

 生まれながらにして理不尽な人生を歩まざるを得ない存在だった保坂。そんな彼に、少しずつ“人間らしさ”を思い出させるサイ。ラストで、想いを通わせ合いながら二人が重なるシーンは、まさに感動のひとことだ。その後の2人の幸せを願わずにはいられないほどに。

 耽美でエロティックなカバー、そしてインパクト大なタイトル。それだけで本作を毛嫌いしてしまうのは、読書体験において非常に損をすることになると言い切ってもよいだろう。本作は、BLに抵抗がある人にこそ読んでもらいたい、“純愛小説”なのだから。

文=前田レゴ