『夫婦サファリ』『うさぎドロップ』… “しあわせな結婚”を考えるマンガ5 選!

夫婦

2015/7/25

 近年、事実婚や夫婦別姓、同性婚など、多様化している結婚のカタチ。型にはまることなく、お互いにとってベストな夫婦生活を送りたい、そんな気持ちが時代に反映されているのかもしれない。そこで今回は、多種多様な“しあわせな結婚”を描いたマンガを紹介しよう。

“結婚”に踏み切れない同棲カップル

 恋人はいるけれど、長年一緒にいると“結婚のタイミング”がわからない……。日暮キノコの『喰う寝るふたり 住むふたり』(徳間書店)は、交際10年、同棲歴8年を迎えた町田りつ子と野々山修一という、ベテランカップルの日常を綴ったラブコメディ。水族館デートや小さなケンカなど、多くのカップルが経験する出来事を、男女それぞれの視点で描き、一進一退を繰り返す2人の気持ちを、読者もかいま見ることができる。あまり“劇的”とはいえない彼らの毎日だが、読者も同じ時間を過ごしているような心地よさを感じる作品だ。

 そして、3年の月日が流れた同棲11年目、修一の異動をキッカケに引っ越しをすることになった彼らは、10年住んでいた家を離れることに。その引っ越しのさなか、とある合理的(?)な理由で、ついに結婚に踏み切ることになる。少々時間はかかったものの、りつ子と修一の3年間を見守ってきた読者は「なるほど、その手があったか!」と、膝を打つかもしれない。

現代の『源氏物語』!? 年の差婚カップル

「それってほぼ親子だよね!?」なんて驚いてしまう歳の差婚。これもまた、ひとつの結婚のカタチなのだろう。アニメ化や実写映画化もされた人気作、宇仁田ゆみの『うさぎドロップ』(祥伝社)は、死んだ祖父の隠し子・りん(6歳)と、彼女を引き取り面倒をみることになった青年・ダイキチ(30歳)が、育児に奮闘する姿を描く。幼いながらもしっかり者のりんちゃんと、ちょっとだらしないけど頼れる大人、ダイキチのほのぼの日常マンガ……そう思っていたのもつかの間。高校生になったりんは、あることをキッカケに自身のダイキチへの恋心に気づいてしまう。一方のダイキチは、りんの幼なじみから彼女の気持ちを聞き、“一人の女性”として向き合うことを心に決める。ダイキチとりんは、育ての親と子という関係から、24歳の年の差を超え、男女の関係に!? この展開には賛否両論あるようだが、コミックス10巻に掲載された番外編では、最終回後のダイキチとりんが登場する。熟年夫婦のような新婚生活を送る2人に、ほっこりしてしまったのは言うまでもない。

きっかけは脅しでした。脅迫結婚

 職場や合コン、お見合いなどなど、結婚相手との出会いは十人十色。それでも“脅迫”が結婚のきっかけになるパターンはそうそうないかもしれない。ジョージ朝倉の『夫婦サファリ』(祥伝社)で描かれる結婚は、まさしく脅迫からはじまった夫婦生活。バツイチの漫画家・祭田ジョーの家にやってきた漫画編集者の日歌は、彼女が過去に描いた作品をジョーが盗作していることをエサに「バラされたくなければ、わたしと結婚して下さい」と脅迫。ジョーもしぶしぶそれに応じることに。ジョーは、結婚自体にトラウマを持っているため、妻と真剣に向き合うことができなかったが、日歌のブレることのない精神的な強さや元カレ出現に焦りを感じるなど、どんどん彼女の魅力にハマっていく姿がユーモアたっぷりに描かれる。ジェットコースターのようにはじまった2人の生活は、その後も“人生の節目”を暴走気味に通過していく。そのスピード感に、つい引き込まれてしまう読者も多いはずだ。かなりイレギュラーな状況だが、脅迫結婚も悪くないかも?

不倫に翻弄される男女

 西炯子の『姉の結婚』(小学館)は、タイトルにこそ「結婚」とあるが、不倫に翻弄される男女を描く。東京から故郷に戻り図書館司書として働く主人公・岩谷ヨリはアラフォーの独身女。過去に経験した恋愛は妻帯者との不倫ばかりだった彼女は、結婚や恋愛に諦めを感じながら、地味に慎ましく暮らしていた。そんなヨリの前に、元同級生のイケメン精神科医・真木誠が現れたことで物語が動き出す。真木の猛アタックに、やっとヨリの気持ちが傾きかけたとき、彼が妻帯者であることが判明する。それでも構わないと、迫ってくる真木に対して「不倫を楽しみましょう」と告げ、毎週金曜18時に会いセックスをしてお金をもらう、ヨリの愛人生活がはじまる。それは、自分の中の真木への想いに一線を引くための策でもあったが、真木と抱き合うたびに彼を愛してしまっている自分に気づき「早く別れなければ」「私は結婚がしたいんだから」と、心のなかでつぶやく。おそらく、彼女にとっての結婚は、真木と別れるための手段でしかなく、それと同時に真木と離れられないヨリの弱さが絶妙に表現されている。 そのほかにも、妹の結婚や冷めきった真木の家庭、未亡人になった同級生など、さまざまな結婚のカタチが登場する本作。“自分にとっての結婚とは何か”を見つめなおすきっかけになるかもしれない。

許嫁と結ばれる、大正時代の結婚

「許嫁」とは、本人たちの意志とは関係なく親同士の合意のもとで、結婚の約束が交わされること。将来を約束された2人の結婚までの道のりを描いた名作マンガといえば、大和和紀の『はいからさんが通る』(講談社)。大正時代、陸軍少佐を父に持つ、おてんば女学生の花村紅緒と許嫁の伊集院忍少尉は、出会った当初は反発しあう仲だった。“はいから”を嫌う少尉と、「親の言いなりになって結婚したくない」と猛抗議する紅緒。しかし、少尉の優しさに触れていくうちに本当の恋に落ちていく、王道の少女漫画だ。その一方で、大正デモクラシーや忍のシベリア出兵など、実際に起きた出来事とリンクする展開も見どころの一つ。関東大震災によって東京が火の海になり、火事の中に取り残された紅緒を忍が救い出すシーンは手に汗握るクライマックスとなっている。結婚が約束された“許嫁”といえど一筋縄ではいかない、まさに大恋愛漫画なのだ。

 ひとくちに“しあわせな結婚”と言っても、夫婦の数だけしあわせは存在する。結婚をしている人も、これから夫婦になる人も、参考までに手にとってみては?

文=不動明子(清談社)