宮崎駿、谷川俊太郎、坂本龍一… 川村元気が芸術の巨匠に聞いた唯一無二の仕事術

ビジネス

2018/3/3

『仕事。』(川村元気/集英社)

映画製作者の川村元気氏。『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』などの映画を製作し、『世界から猫が消えたなら』『億男』などの小説でも有名だ。私は、川村氏は芸術分野の仕事人として超一流の人物であると思うのだが、そんな彼にも、「働き方」の悩みはあるのだという。

「バスケがしたいです」
『スラムダンク』71話。
グレていた三井寿が、師となる安西先生に心からバスケがしたいと告白する。
感動的なシーンだ。

ふと思う。
僕は今、心から「仕事がしたいです」と言えるのだろうか。
金のため、もしくは立場上、なんとなく働いているのではないだろうか。

川村元気氏が12人の巨匠のもとを訪ね、「私と同じ年の頃、何をしていましたか?」と尋ねる対談集『仕事。』(川村元気/集英社)のまえがきにて、川村氏は上のように述べている。

まず本書を手に取った瞬間、その12人の対談相手の顔ぶれが実に豪華絢爛で驚く。本書の対談の構成は、著者・川村元気×山田洋次・沢木耕太郎・杉本博司・倉本聰・秋元康・宮崎駿・糸井重里・篠山紀信・谷川俊太郎・鈴木敏夫・横尾忠則・坂本龍一(敬称略、登場順)。まさに日本代表級の仕事人たち。これほどの巨匠たちのもとへ対談に行き、超一流の仕事論を引き出せる川村元気という人物が積み上げてきたものの凄さに改めて気づかされる。

仕事は、金のためだけにあるのではない。
だからこそ、どんなに金持ちになってもスティーブ・ジョブズは働き続けた。
それはきっと彼にとっての仕事が、人生を楽しくするための手段だったからだ。

まさに著者の言う通りだと思う。なぜ宮崎駿氏が映画をつくり続けるのか、なぜ篠山紀信氏が写真を撮り続けるのか、巨匠と呼ばれる人たちは、なぜ表現することをやめないのか。その答えが本書には詰まっている。暗がりの中無我夢中で走り続けた。無茶をして自分の才能を売り込みに行った。悔しくてひとり泣いた。そんな日々を通り過ぎて「今」に至った各人の、仕事論。その根底にあるのは、「この仕事をすることで人生が楽しくなる」という、最強の動機だ。

そしてもう1点、本書全体を通して感じたことがある。仕事人は皆、「やわらかい」のだ。成功した一流の人物とは、どうしてもガツガツしたり尖っていたりというイメージが先行しがちで、場合によってはそれも間違いではないが、しかし皆、感性に関わる部分は「やわらかい」。例えば、篠山紀信氏は「世界をどうにかしようなんておこがましい。大事なのは受容の精神です」と語り、秋元康氏は「時に判断を間違えるのは仕方ない。大切なのは、間違いを元に戻す力だ」と述べている。ストイックな姿勢と併せて、このような「やわらかい」感性や考え方を持っているからこそ、彼らは一流として活躍し続けることができるのだと感心させられた。読後私は、本書は、芸術分野で羽ばたきたいと野心を抱く人には勿論のこと、全ての「仕事人」に強くおすすめできる1冊であると感じた。

「働き方改革」が叫ばれる今日この頃。自らの仕事の現状に対して疑念や悩みを抱えている人も多いことだろう。本書に登場する12人の巨匠、そして著者の川村氏は、芸術的な分野で活躍する人物たちであるため、直接的にはビジネスパーソンの仕事術と結びつかない内容でもあるかもしれないが、しかしもっと根本的で大切なことを本書は教えてくれる。

各巨匠の言葉には並々ならぬ重みがある。そして、勇気がもらえる。本書の読後、皆様はきっとこう思われることだろう。「仕事がしたいです」と。

文=K(稲)