2本のAV出演料はわずか5万…。業界人が明かした“AV業界の真実”とは?

社会

2018/7/22

『AV女優消滅 セックス労働から逃げ出す女たち』(中村淳彦/幻冬舎)

 アダルト業界はここ数年、「AV出演強要問題」に揺れている。2016年にAV女優として活躍していた香西咲氏がAVを告発し、業界の闇を浮き彫りにしたことは記憶に新しい。だが、アダルト業界は閉鎖性が強いため、自分には関係のない問題だと思っている人も多く、女性の中にはAV女優という職業に白い目を向ける人もいるだろう。

 そんな方にこそ手に取ってほしいのがAVライターの中村淳彦氏が業界の闇をリアルに記した『AV女優消滅 セックス労働から逃げ出す女たち』(中村淳彦/幻冬舎)だ。中村氏は、AV出演強要問題を労働問題としても捉えているようだ。果たして、今のアダルト業界ではどのようなことが起きているのだろうか。

■AVへの出演強要は労働問題だ

 AV出演強要問題と聞くと、性の問題にのみスポットが当てられてしまいやすい。しかし、これは性の問題であり、労働問題でもあるのだ。その理由は本書の中で語られる、くるみんアロマ氏の体験談によって明らかとなる。

 くるみんアロマ氏は、スカウトマンと事務所から執拗にAVへの出演を説得され、ほぼ洗脳された形で歌手へのステップのため、AVを撮影することになった。しかし、彼女を待ち受けていたアダルト業界の実態はあまりにブラックだった。

本当にツラかった。想像を超えていました。本番をする時間があまりにも長いとか、NG項目をやらされたり。できないって言ったら“あなたのせいで何人もの大人が生活できなくなる。どうしてくれるの?”みたいなことを言われて。できないって言わせない空気があった。事務所の人もいて“他の女の子も仕事がなくなるからちゃんとやれ”って

 そう語るくるみんアロマ氏は当時、逃げることもできなかった。なぜなら、彼女のようにひとりでもヒットが見込めると見なされた単体AV女優の撮影現場にはプロダクションの監視がつくからだ。もし、仮に運よく逃げられたとしても、撮影費用を負担させられたり、プロダクションから巨額な違約金を迫られたりすることも理由のひとつである。

 そして、こうした劣悪な環境の中で2本のAVに出演した後、彼女が受け取った出演料はわずか5万円だった。AV業界では女優に出演料を教えることはご法度とされており、AV関係者たちによって女優同士が連絡を取り合うこともできないように仕組まれている。そのため、彼女はひとりで悩むしかなかった。さすがにおかしいと思い、周囲に出演料のことを尋ねてもみたが、「お金の管理は他の人がしている」や「社長がお金を持ち逃げした」と言われて、なすすべがなかった。

 AV業界はこのように被害者が声を上げづらいよう、業界関係者によって巧妙な細工がなされているため、表ざたになりにくい。そして、グレービジネスであるアダルト業界には、一般企業のように労働組合や相談窓口もない。こうした状況の中でAV女優は心身共にボロボロになり、自殺という道を選んでしまうこともある。こうした状況はブラック企業となんら変わりがないのに、AV女優には頼る場所がないのだ。だからこそAV出演強要問題は労働問題としても考えていかなければならないのである。

 AV女優という職業は差別を受けやすく、同性に理解されづらい。だが、彼女たちを救うためには、同性である女性たちも「女」を食い物にする悲惨な労働環境が存在していることを知る必要があるのではないだろうか。

■適正AVが広まるように

 過酷な労働環境によってAV女優が消滅してしまうと、アダルト業界は大打撃を受ける。近年はコンビニからアダルト雑誌が撤収され始めたり、スマホの普及によりアダルトビデオが売れにくくなったりし、ただでさえ業界は厳しい立場に立たされている。だからこそ、クリーンな労働環境を作り、業界に染みついたイメージを払拭させていく必要があるのだ。そのためには、出演者の人権や自己決定権が尊重された「適正AV」を作っていかなければならない。

 現在のアダルト業界では、プロダクションの力に女優が屈してしまうことも多いため、労働問題にも発展しやすい。しかし、AV女優が自ら、プレイ内容や金額などが記載された契約書を交わせるような環境を築いていけたら、AV出演強要問題も生まれなくなり、AV女優も消滅しなくなる。

 限りなくブラックに近いグレーな世界をホワイトにするのは、難しいことなのかもしれない。しかし、人権や守られる権利は誰にでもあるのだということを忘れてはいけない。

文=古川諭香