夜の繁華街で「ON SALE」と書かれたプラカードを掲げる女子高生…少女とセックスのオムニバス『センチメントの行方』

マンガ

公開日:2018/7/24

『センチメントの行方』(榎本ナリコ/幻冬舎コミックス)

 若さこそ女の武器だ、とは思わないが、電車に乗っていて制服を着た女子高生たちの姿を見ていると、やっぱりちょっと「かなわないな」と思う瞬間がある。ハリのある肌、ツヤのある髪、澄んだ瞳、みずみずしい空気感。そんな圧倒的な強みにまるで気づいていないかのような、危うさ。そんな無防備な少女たちについ目を引き寄せられてしまう。

 20年前に発売された『センチメントの季節』(全8巻)では、著者の榎本ナリコがそんな少女の性をエロティックかつ鮮やかに描いた。登場する少女たちは、どこかちょっと小悪魔的で、表情をコロコロ変える。空っぽな自分に虚しさを感じて落ち込むときもあれば、そんな彼女たちに手を差し伸べる大人を容赦なく傷つけたりする。少女たちの心を理解しようとするのは、空を掴むようなものだ。

 そんな『センチメントの季節』の続編のような形で発売された、『センチメントの行方』。いずれも短編集であり、物語はつながっていない。しかし、作者のあとがきにも書かれている通り、両作とも少女と性、そして少女性について描いたものであるという点では共通している。

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 第1話は援助交際をしていた経験のある社会人女性が主人公の「神待ち天使」から始まる。かつて少女だったその女性は、大人になってからは過去を悔いるようになり、NPO法人を設立し、自分と同じような少女たちを保護する活動をしていた。

 若さだけを頼りに自分の身体を売ることは不幸だ、と彼女は信じていた。しかし、ある日「ON SALE」と書かれたプラカードを掲げる少女と出会うことで、そんな彼女の考えは覆されることになる。

「少女」と聞いたときに、浮かび上がるイメージは、意外と画一的なものなのではないだろうか。冒頭で私もつい書いてしまったように、みずみずしい若さと、純真無垢な精神、無知ゆえの危うさ、儚い一回きりの青春……「少女」という存在を思い描くとき、どうしても彼女たちを神聖なもののように崇めるふしがある。だから、保護すべきもののように感じてしまう。しかし、『センチメントの行方』は、そんな能天気なイメージを否定されるところから始まる。少女に、わかった気になるな、と言われてしまうのだ。

 少女たちの、身勝手で理不尽な、それでいて魅力的なふるまいに、私は読んでいて終始ふりまわされっぱなしであった。官能的なセックスシーンにうっとりとしていると、次の瞬間には突き落とされていたりする。なのに読む手は止まらない。私も少女たちに魅惑される大人の一人なのだろう。

文=園田菜々