思わず感動の涙…泣ける子育て漫画まとめ

マンガ

更新日:2018/9/10

 楽しさと辛さ、そして感動を与えてくれるのが妊娠、出産、そして子育てだ。本稿ではこれらを題材にした数多くのコミックの中から、とびっきり泣ける5作品をご紹介する。パートナーに先立たれた父と娘、他人同士の大人と子供がつくる新しい家族の形、超高齢出産からの子育て、子供の目線から見えてくる家族のリアル、小学生の子育て…。これらは泣けるからといって暗く苦しいだけのストーリーというわけではなく、いずれも前向きに生きる親子が描かれている。

■これぞ飯テロ親子コミック! 父と娘の笑顔の食卓

 まず紹介したいのは『甘々と稲妻』(雨隠ギド/講談社)。妻を亡くした犬塚公平は男手ひとつで娘のつむぎを育てていたが、料理が苦手で外食やコンビニのご飯で済ませていた…。ある日、ふたりで出かけたお花見で公平の教え子である飯田に出会う。彼女との出会いで、つむぎに美味しいご飯を食べさせたいと思った公平は飯田の母親が経営する料理屋を訪ねたことをきっかけに3人で料理を作ることになるのだが…。

 人気を博しTVアニメ化もされた。つむぎが皆と食卓を囲んだ時にみせる「美味しい笑顔」は、読む人の母性や父性を喚起させ、さらに胃袋もわしづかみにする。グルメ漫画にもカテゴライズされる本作だが、つむぎが成長していく様や、シングルファーザーである公平の苦労する描写を読めば、感動できる子育て漫画であると納得できるはず。この夏、約5年の連載がフィナーレを迎えたばかりの親子の物語をまずはおすすめしたい。

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■他人同士がつくりあげる“リョーモモイ”の家族関係

 本当の親子とは? そんな風に考えさせられるのが『ママゴト』(松田洋子/エンターブレイン)だ。スナックのママである映子は、心の底に抱えた悲しい過去から自由になれないでいた。そんな彼女の元に、純真無垢な少年・タイジがあずけられる。他人同士である女性と子供が、一風変わった家族の形をみせてくれる。ちぐはぐでたどたどしい生活の中で、2人はいつしか「リョーモモイ」(両想い)になっていく。映子とタイジの感動のラストは一読の価値ありだ。

■超高齢出産からの育児! 老夫婦の元にやってきた「みらい」

 65歳の夫と70歳の妻の妊娠、出産、そして育児を描いた『セブンティウイザン』(タイム涼介/新潮社)。江月朝一は定年退職を迎えたその日、家に帰ると妻、夕子から妊娠を告げられる。終活という言葉もよぎる老夫婦。彼らのもとへやってきた「みらい」ちゃん。非現実的とも言える設定であっても、妊娠、出産、育児をとりまく状況や、丹念に奥行きが描かれた夫婦の人生は、実にリアリティがある。残された時間が長くないだろう夫婦の子育ての物語は、せつなさと幸せが同居するような不思議な感動を与えてくれる。

■健気でいじらしくてちょっぴり大人な菫ちゃんに癒される

 子供が優しくまっすぐに育つ物語、それが『すみれファンファーレ』(松島直子/小学館)だ。ほのぼのとした絵柄で、家族や子育てなどが子供の目を通して語られる。主人公の菫(すみれ)ちゃんは小学4年生の女の子。他人に気をつかい、健気で、いじらしく、一生懸命に生きている。作中での菫ちゃんの大人なセリフの数々には思わずはっとさせられる。印象的な名言、名シーンのオンパレードだ。ほぼ1話完結のエピソードは、どれも読後感が爽やかで心地いい。菫ちゃんの温かさが、奥行きのある登場人物たちと、読者を癒してゆく。今はまだ子供が小さく、苦労している方にこそ読んで癒されてほしい作品だ。自分の子供が菫ちゃんみたいに育ってくれたら…そう願わずにはいられない。

■子育て漫画の不朽の名作! 小学生男子が育児!? 兄弟愛に涙…

 テレビアニメ化もされた不朽の名作『赤ちゃんと僕』(羅川真里茂/白泉社)。榎木家にはママがいない。パパ、長男の拓也、まだ赤ちゃんの実が3人で暮らしている。こう書くと単なるシングルファーザーの物語のようだが、決してそうではない。主人公は小学生の拓也。彼が懸命に弟を育てるストーリーが、あくまで明るく描かれている。いたずら好きで泣き虫の赤ちゃんに振り回される拓也。彼が疲れきってへとへとになりながら、結局赤ちゃんの笑顔に癒される。これは親になっている人なら理解できる「あるある」かもしれない。育児の大変さと感動が溢れている『赤僕』は、未読だった若い人にはもちろんおすすめ。そして連載やアニメを楽しんでいた、絶賛子育て中な人もぜひ読み返してほしい。

 アニメにもなった人気作、WEB漫画からのヒット作、各漫画賞に輝いた作品、時代を超える不朽の名作…。これらは実際に出産や育児を体験していない人も、涙すること間違いなしだろう。そもそも現実の子育ては、それだけで立派な感動ドラマである。そんな現実がもつ感動のハードルを、軽々と超えていくかもしれない5作品。この機会にぜひチェックしてみてほしい。

文=古林恭