某巨大掲示板で生まれた、伝説のホラー『師匠シリーズ』。ホラー好きを魅了してやまない、その理由は?

アニメ・マンガ

2018/9/16

『師匠シリーズ』(ウニ:原作、片山愁:漫画)

 ネットの海には、身の毛もよだつような怪談が漂っている。特に珠玉の名作(?)が投稿されているのが、某巨大掲示板の「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」というスレッドだ。ここから生まれた「八尺様」「ヤマノケ」「リアル」「コトリバコ」といった怪談は、ホラー好きの間では知らぬ者がいないほどの有名作。

 そんな「洒落怖」で生まれた怪談のなかで、いまも人気を博すシリーズがある。それが「師匠」シリーズだ。これは語り手(投稿者)である〈僕〉と、そのオカルトの〈師匠〉との怪奇じみた日々を淡々と綴ったもの。2013年より『師匠シリーズ』(ウニ:原作、片山愁:漫画)としてコミカライズされ、ネット発のホラー作品としてヒットを記録した。

 本作には実にさまざまなホラーが登場する。とあるファミレスで語り継がれる「店員の足がひとり分多い」という噂、絶対に行ってはいけない「降霊実験」、死んだ友人からの「着信」、廃墟の地下室に残された「爪痕」。そのなかには、どこかで聞いたことのあるような話もあるが、本作の面白いところは、それらに独自の解釈が加えられているところだ。強い霊感を持つ師匠の解説を踏まえると、どの怪談もそれまでとは捉え方が180度変わるだろう。そして、そのほとんどが決して円満解決されるわけではない。むしろ、因果が明らかになったところで、事態はなにも解決されない。その“ご都合主義”ではない展開が、ホラー好きの心をくすぐるのだ。

 さらに、個性豊かな登場人物が物語を彩っていくのも魅力的。師匠の彼女であり、予知夢などの不思議な能力を持つ〈歩く(ありく)〉、オカルトフォーラムの住人である〈京介〉など、師匠に負けないような濃いキャラクターたちが、〈僕〉を恐怖の深淵へと誘っていく。

 ちなみに、第1話のラストでは、師匠が「失踪すること」が示唆される。彼はどこへ消えてしまったのか。その理由はなんなのか。読者はオムニバス形式で語られていく物語をもとに、師匠が失踪した理由についても思いを巡らせていくことになる。恐怖に彩られた日常×師匠失踪の謎、これが本作を複雑で深みのあるホラーにしているのだ。

 ネット上で語り継がれる伝説の名作ホラーシリーズ。まずはマンガでその恐怖に触れてみてもらいたい。そして、気になった人はぜひ検索を。ただし、師匠が残した次の言葉を忘れずに。

“闇を覗く者は、等しく闇に覗かれることを畏れなくてはならない”

文=五十嵐 大