「7日後に必ず死が訪れる…」奇妙な“何か”との出遭いから始まった悪夢――『クダンノゴトシ』

マンガ

公開日:2018/10/29

『クダンノゴトシ』(渡辺 潤/講談社)

 件(くだん)と呼ばれる妖怪をご存じだろうか? それは牛の体に人間の顔を持つ生き物で、牛から生まれ、数日で死んでしまうとされている。そして、死に際に予言を残すのだが、それは決して外れることがないという。

 そんな妖怪をモチーフに描かれたホラーが、『クダンノゴトシ』(渡辺 潤/講談社)だ。

 本作の登場人物は、7人組の大学生たち。どこにでもいる平凡な彼らは、卒業旅行の帰り道で、奇妙な生き物を轢いてしまう。思わず「人を轢いてしまったのではないか」と狼狽する彼らが、恐る恐るその物体に近づいてみると、なんとそれは、牛の体に人の顔を持った生き物だった。そう、くだんである。

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 驚いた彼らは、その化物を殴り殺してしまう。しかし、それが悲劇の始まりだった。

 彼らの夢に現れたくだんは、ひとつ予言を残す。それは「7日後に死が訪れる」という不吉なもの。そして、その予言通り、次々と死を迎えるメンバーたち。本作の見どころは、自らの死を予言された人物が残りの日数をどう生きるのか。その葛藤と恐怖に人間くささが滲んでおり、ホラーテイストの人間ドラマがくり広げられている。

 また、物語のテーマは、「生の価値」という大きなものへと向かっていき、ラストでそれが見事に収束する。人間の醜さが描かれるエピソードでは、くだんの存在を悪と言い切っていいのかどうか、それぞれが考えさせられるだろう。

 くだんはどうして存在するのか。人間はどう生きるべきか――。古来より伝わる妖怪の伝承を現代風にアレンジし、複雑なドラマへと昇華させている本作。民話や民俗学に興味がある人ならば、きっと楽しむことができるはずだ。

 もしも、夢にくだんが現れ、余命宣告されてしまったら。あなたなら、どうする?

文=五十嵐 大