【ステイホーム週間】ラスト1ページまでドキドキ…重厚ミステリー小説5作

文芸・カルチャー

公開日:2020/4/29

新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛が続く中、ダ・ヴィンチニュースがおすすめする「おうち時間充実!」のための読書・エンタメをお届けします。STAY HOME週間も本・エンタメで楽しく充実させましょう!
《以下の記事は(2019年12月)の再配信記事です。掲載している情報は2019年12月時点のものとなります》

 おうち時間がたっぷりある今だからこそ、読み応えのあるミステリー小説を5作品紹介! ラスト1ページまで楽しんでみてほしい。

■村八分の恐ろしさが伝わる最狂ミステリー小説

『ワルツを踊ろう』(中山七里/幻冬舎)

 閉鎖集落の恐怖や村八分の恐ろしさを描き切った『ワルツを踊ろう』(中山七里/幻冬舎)。金も仕事も住むところも失った元エリート・溝端了衛は20年ぶりに故郷へ。しかし、そこで待ち受けていたのは癖のある住人たち。彼らの悪意により了衛の心は荒み、物語は予想外の方向へ。スリリングな後半はぜひ「美しく青きドナウ」をかけながら読み、了衛の心境に成りきってみてほしい。

■“あの事件”を思い起こさせる折原一作品

『逃亡者』(折原一/文藝春秋)

 1982年に発生した「松山ホステス殺害事件」の犯人である福田和子は、約15年に及ぶ逃走劇を繰り広げた人物。そんな事件を思い起こさせるのが『逃亡者』(折原一/文藝春秋)。知人の夫を殺した智恵子が名前や顔を変え、時効まで逃げ切ろうとする様に読者はハラハラさせられる。ラストにはどんでん返しな展開もあるので、そちらも要チェック。なお、折原さんは他にも、実際に起きた事件を元にした小説を多数発刊しているので、サスペンス好きの方は必見だ。

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■ごく普通の主婦はなぜパート仲間の夫をバラバラにしたのか――

『OUT』(桐野夏生/講談社)

 結構な分厚さであるにもかかわらず、スラスラと読み進められ、ページをめくる手が止まらない。『OUT』(桐野夏生/講談社)には、不思議な中毒性があるように思う。物語は、深夜の弁当工場で働くある主婦がパート仲間の夫を殺したことにより、不穏な方向へ…。孤独や満たされない想いを抱えながらも、代わり映えしない日々を過ごすしかない主婦たち。その姿に自分を重ね合わせる方はきっと多いだろう。彼女たちの乾いた心に触れた時、あなたは何を想うだろうか。

■女性2人の惨殺死体から明らかになる“社会の闇”

『贄の夜会』(香納諒一/文藝春秋)

 今から10年以上前に発刊された『贄の夜会』(香納諒一/文藝春秋)は、重厚感のあるストーリーが胸を打つ1冊だ。ことの始まりは犯罪被害者家族の集いに参加した女性2人の惨殺死体が発見されたこと。「酒鬼薔薇事件」を彷彿させる本作は、一筋縄ではいかない展開のオンパレード。連続殺人事件を介して、表社会と裏社会の闇が明かされていく過程がたまらなくおもしろい。あなたもきっと、香納ワールドに呑みこまれてしまうはずだ。

■凶器はラッセルクサリヘビ!? 1匹のヘビに隠された“野蛮な世界”とは

『クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない』(越尾圭/宝島社)

 宝島社が主催する『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉作品として発表された『クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない』(越尾圭/宝島社)は、ラッセルクサリヘビが凶器という斬新さ。疾走感あるストーリーから目が離せなくなり、ラストに愕然とさせられる。読後には、人間の傲慢さや動物の命について思いを巡らせたくなるはずだ。1匹のヘビから始まった事件は、果たしてどんな結末を招くのか。作中に隠された“野蛮な世界”を、ぜひその目で見てみてほしい。

文=古川諭香