絵本の目利きが選んだ「クリスマスに贈りたい絵本」おすすめ16選! 出版社編Part①

文芸・カルチャー

公開日:2020/12/12

『からすのパンやさん』や『ぐりとぐら』など、大人にとっては懐かしいロングセラーの名作絵本や、不動の人気、ヨシタケシンスケさんの哲学的な絵本など…子どもも大人も楽しめる絵本作品が数多くある中、 ダ・ヴィンチニュースは、本の目利きのみなさんに贈りたい人を想定して「クリスマスに贈りたい絵本」を選書してもらいました。お家時間が増えた2020年、会えない遠くの大切の人や、友人、自分へのプレゼントに絵本を! まだお子さんのクリスマスプレゼントが決まっていないという親御さんの参考になれば幸いです。

絵本作家さんのお嬢さんへ

【選者】あかね書房 副編集長 榎一憲

選んだ理由

 プレゼントを贈りあう絵本の内容は、自分以外の誰か大切な存在を思えるようになってきた時期のお子さんに読んでもらいたいです。プレゼントを贈る楽しさを感じてもらいたいと選びました。

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絵本『プレゼント、あけてみて!』の魅力は?

 動物たちがプレゼントをリレーのように贈っていく様子が楽しい絵本です。プレゼントを開けるときのワクワクする気分、中身を知ったときの発見の喜びを味わえるめくりの仕掛けが魅力です。そして温かみのある色づかいとかわいいキャラクターたちに何度でも開きたくなります。

もうすぐママになる親友へ

【選者】岩崎書店プロモーション部 下浦理子

選んだ理由

 この絵本は、息子がお腹にいるときによく読んでいた1冊でした。お腹の中の子は、どんな子だろう?元気いっぱいな子?それとも恥ずかしがり屋さん?なんて想像している時間がとても幸せでした。時は巡り、子どもも無事生まれ、初めての育児に追われる日々の中で、そんなマタニティライフも忘れていたころのこと。会社の同期の結婚式で、両家の母親がこの絵本をサプライズで朗読するという余興がありました。繰り返しの「アイラヴユー」のフレーズ、温かくて優しい声。その式場の誰もが、母親の愛情に包まれた瞬間でした。もうすぐママになる親友。この絵本を通して、これから生まれるわが子と幸せな時間を過ごしてほしいと思い、この絵本を選ばせていただきました。

絵本『ラヴ・ユー・フォーエバー』の魅力は?

 お母さんがあかちゃんをだきながらうたいます。アイラヴユーいつまでも アイラヴユーどんなときも…。全米で1200万部突破のベストセラー絵本の日本語版。全ページにわたって、親が子どもを想う気持ちが伝わってくる、心あたたまる絵が印象的な1冊です。「アイラヴユーいつまでも アイラヴユーどんなときも…。」繰り返されるフレーズにじわりじわりと子を想う親の愛情が伝わってくるよう…。ラストシーンには思わずほろりとさせられます。静かに、やさしく親子の愛情のきずなを語る、世代をこえて感動を呼ぶ、ベストセラー絵本です。

今年は笑顔が少なかったと感じている方へ

【選者】NHK出版 児童・学校図書開発事務局 編集長 祝 尚子

選んだ理由

 今年は何をするにも不安がつきまとい、思い切り楽しんだという記憶がない――。そうした方が多いのではないでしょうか。わたしもその一人です。そのようなときに出合ったのが、刀根里衣さんの新作絵本『にじいろのせかい』でした。ページから溢れ出てくる柔らかな光が、心の中心にズンと居座る黒い塊を溶かしてくれました。子どもだけでなく大人の読者も魅了する刀根作品。今回も幻想的な世界を堪能できます。この一年、笑顔がより少なかったかもと感じている方へ、「癒しの一冊」として本書を推薦いたします。穏やかな日常が一日も早く戻ってきますように。

絵本『にじいろのせかい』の魅力は?

 名作『ぴっぽのたび』の刊行から6年。刀根里衣さんが母となってはじめて手掛けた作品です。わが子が生きるこの世の中が、突然色を失しなったら、無力な自分に何ができるだろうか──。そうした自問から生まれた絵本です。主人公である絵描きの少年は、静けさのなかで考えます。「そうだ、小さな光を灯していこう」。そして、動物や植物に色をつけ、星や月を描いていきます。命を吹き込まれた生き物たちは、徐々に光を放ち始めます。そのとき、少年はひとりぼっちではないことに気づくのです。繊細な筆致、柔らかな色づかいは読む人の心をやさしくそして豊かにしてくれます。寒い夜、絵本のページをめくって心と身体を温めてください。メリークリスマス!

孫へ

【選者】絵本館 代表 有川裕俊

選んだ理由

 いただくだけでなく、サンタさんにもプレゼントを用意する女の子。いわれてみれば「なるほど」ですよね。しかし、今まで誰も思いつかなかった。なにごともちょっとした気づきが大事です。

 また、微笑みながらただ見つめているサンタさん。その子どもとの距離の取り方がなんともいい。愛嬌のあるサンタさんが実に可愛い。

 多くの大人も、子どもをただただ微笑みながら見つめる、見習わないといけません。

絵本『クリスマスにはおくりもの』の魅力は?

 優れた絵本作家というものは、出すのは結論ではなくヒントです。「こんなやさしい気持ちの子どもがいるんだ。いいなあ」と、読者が自分で気づく絵本。その点でも、この『クリスマスにはおくりもの』は名作です。

 いつもプレゼントをくばってばかりのサンタさん。そのサンタさんにプレゼントを準備しようと考える女の子。とりあえず逆の立場も考えてみる。そうした心の動きが自然とみえてくる絵本です。

 五味さんの絵本は、新しいものの見方をさりげなく提示していくのが魅力です。今までなかった絵本の登場といっていいでしょう。これ見よがしではない「さりげないおもいやり」が、読む者をしあわせな気分にしてくれる絵本です。

有川裕俊の「編集長の直球コラム」連載中です。
https://ehonkan.co.jp/column/

子どもからの”あの質問”に、どう答えようかと悩んでいる方へ

【選者】偕成社 販売部 宮沢香織

選んだ理由

 この時期「サンタクロースって本当にいるの?」と子どもたちにきかれることが、あるのではないでしょうか。難しい質問だ、なんとこたえよう? そんな困っている大人のみなさんから、子どもたちにぜひ読んであげてほしい、と思って選んだのがこの本です。インターネットが発達して、疑問に思ったことはすぐに調べられるし、知ることができる現在ですが、検索ではたどりつけない、「信じる」ということの大切さを教えてくれます。子どもにも大人にも、読んでもらいたい絵本です。

絵本『サンタクロースっているんでしょうか?』の魅力は?

 1897年秋、ニューヨーク・サン新聞に、ある社説が掲載されました。それは、8歳の少女バージニアが新聞社宛に送った「サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?」という質問に答えたものでした。まるまる1冊その社説の訳となっているこの本は、「ほんとうに、いる」か、の答えを知っている!と思っている大人にも、あたらしい考えをさしだしてくれます。子どもたちは、なおいっそうサンタクロースを信じようと思い、大人は、子どものときの純粋な気持ちに、もう一度立ち返ることができます。信じる心、そして言葉の力を感じさせる1冊です。

来年は、弊社の代表作「ノンタン」絵本シリーズ、『はらぺこあおむし』ともにそろって、刊行45周年をむかえます!

5歳の女の子へ

【選者】学研プラス 編集長 木村真

選んだ理由

 ちょっぴりおませな5歳の姪っ子のお気に入りは、しまだゆかさんの「バムとケロ」シリーズやどいかやさんの「チリとチリリ」シリーズなど。『Mou』はそんな普段親しんでいる、明るく楽しい絵本に比べると夜のシーンも多く、少し大人っぽい印象のある絵本かもしれません。でもクリスマスの時期にちょっと背伸びして、今までに読んだことがない、静かな雰囲気の絵本を読んでもらって、物語の新しい扉を開くきったかけになればいいな、と思い選びました。

絵本『Mou』の魅力は?

 繊細で美しい絵と幻想的な物語。冬のひんやりとした空気感、暖炉のある暖かそうな部屋、静けさに包まれた森、どこか外国を思わせる世界観がこの本を手に取る子どもたちにときめきを感じてもらえるのではないでしょうか。主人公の少女トットが見たこともない生きものムーに示す優しさと胸に秘めた思いの強さも心に残ることでしょう。この世界にはまだ見たこともない世界が広がっていて、それは誰にも知られることなく、森の奥で静かに存在しているかもしれない。子どもたちがそのような想像力の翼を広げるきっかけになるかもしれない一冊。

学研の絵本を紹介中! Instagram:@gakken_ehon

子育て中の“あのひと”へ

【選者】KADOKAWA 児童統括部 児童図書編集部 一般児童書編集部 鈴木敦子

選んだ理由

 終わりの見えないコロナ禍の日々、世界中の母親が、どれだけ歯をくいしばって過ごしていることか(もちろん父親も。そして大変なのは子育て中の人だけではありません)。子育て中の友人、母親になった娘、そして今日も子どもにつらくあたってしまった自分自身……。助けの手を差しのべたくても、「助けて」とSOSを出したくても、ためらわれるのが「新しい日常」の現実です。だけど、実際に会うのは難しくても、気持ちを寄り添わせることはできる、かもしれない。かけることばに迷ったら、この絵本を贈ってみては。どんなにことばを重ねるよりも、その人を大切に思う気持ちがきっと届くはずです。

絵本『あなたのことが だいすき』の魅力は?

 本書誕生のきっかけとなった、西原理恵子さんのベストセラー『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(KADOKAWA)に、こんな文章があります。「家なんて、もっと汚くてもよかった。洗濯物も、ためちゃえばよかった。家事なんて、全部あとまわしにしたらよかった。もったいないことしちゃった。だって、あんな時間はもう二度とない」。このことばに心を動かされたえがしらみちこさん。繊細なタッチの水彩画が、揺れ動く母の心に寄り添います。出産直後に、子どものイヤイヤ期に、卒園して新たな世界へはばたくときに……。我が子の姿を重ね、涙が止まらなくなった、という声がたくさん寄せられています。いまのこの瞬間を大事にしたい。読後、そんな気持ちになる一冊です。

KADOKAWAの絵本 公式アカウント Instagram:@kadokawa_ehon

コロナ禍でさまざまな思いを抱えている(もちろん子どもも含めて)すべての方へ

【選者】金の星社 編集長 斎藤裕子

選んだ理由

「時間銀行」という話をご存じでしょうか。アメリカで回っていた作者不詳のチェーンメールで、この文にインスパイアされて、いもとようこさんが作ったのが『まいにちがプレゼント』です。Presentには「現在」と「贈り物」の意味があります。良いことも辛いことも、一日経れば昨日=過去となり、また新しい今日が始まる。今日も明日には過去となるけれど、未来であるうちは自分で変えることができる。だから今日はpresent! それを小さなハリネズミが感じていくというお話です。特にクリスマスの絵本ではないのですが、緑色を基調とした表紙も相まって、コロナと共に過ぎた今年一年の終わりに贈りたい一冊です。

絵本の魅力は?

『まいにちがプレゼント』でいうと、元々の「時間銀行」にただ絵をつけても、それは挿絵のある文章です。それを原文には全く登場しないハリネズミを据え、言葉を選んでいくと「絵本」という別物になります。

 言葉から広がる世界を絵にする絵本は、1場面2ページ、二次元の紙であるはずなのに、絵本を開いた一瞬に、ページをめくった瞬間に、時間も空間も変化してそれが無限に広がっていく。絵本の魅力はたくさんあるけれど、それが最大の魅力かなと私は思います。

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イラスト:野瀬奈緒美