絵本専門の本屋さんがおすすめする「クリスマスに贈りたい絵本」6選!

小説・エッセイ

更新日:2020/12/16

『からすのパンやさん』や『ぐりとぐら』など、大人にとっては懐かしいロングセラーの名作絵本や、不動の人気、ヨシタケシンスケさんの哲学的な絵本など…子どもも大人も楽しめる絵本作品が数多くある中、 ダ・ヴィンチニュースは、本の目利きのみなさんに贈りたい人を想定して「クリスマスに贈りたい絵本」を選書してもらいました。お家時間が増えた2020年、会えない遠くの大切の人や、友人、自分へのプレゼントに絵本を! まだお子さんのクリスマスプレゼントが決まっていないという親御さんの参考になれば幸いです。

なかなか会えなかった大好きなあのひとへ

 今年、なかなか会えなかった大好きなあのひとに。いろんなことがあった2020年。気づかないうちに、だれのこころにもストレスが降り積もっている。行動が制限され、人種差別が跋扈し、学問の自由が脅かされていく不穏な空気。「元気でいてね!」のメッセージと共に贈りたい。受け取るひとの笑顔を思い浮かべて。

【選者】クレヨンハウス東京店 子どもの本売り場 伊藤保奈

選んだ理由

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 ある森に、ちょっと変わったくまさんがいました。出会うものすべてをhug、抱きしめてしまう、その名も「ハグくまさん」。

 抱きしめるのが困難なヘビだって、ハグくまさんはハグしてしまいます。なかでも特に好きなのは、森の中の木を抱きしめること。

 ある日、斧を持った人間の男がやってきて、ハグクマさんが大好きな木を切り倒そうとします。生まれてはじめて、抱きしめたくないものに出会ったハグくまさんは……。ひととの距離を取らざるを得ず、不安な日々を送るいま、だれもがこんなハグくまさんのようなおっきくて、あったかなハグを求めているのではないでしょうか。

 子どもにもおとなにも、いま贈りたい。

絵本の魅力は?

 絵本は、生まれてはじめて本に出会う子どもから、年齢制限なしの自由で豊かなメディアです。子ども時代に、大好きな一冊に出会った子は、一時期離れることはあっても必ず本の世界に戻ってきます。読む、感じる、考える、想像する、表現する。本が教えてくれることです。それらすべてがその子の「自前の力」になります。大人にとってももちろん。

 毎日、「ここ」から飛び立ち、「ここ」に戻っておいでよ。こころ温まる物語や、ユーモアあふれる作品だけではなく、病や死、戦争、環境問題、差別、いじめなど、絵本のテーマは広く、深く、私たちの「いま」と「これから」に関わっています。一冊の絵本を通して、深く豊かな時空を過ごしませんか。

クレヨンハウス
住所 東京都港区北青山3-8-15
営業時間 11:00~19:00
TEL 03-3406-6492
1976年の創業当時から、座り読み大歓迎のテーブルのある子どもの本の専門店。45周年を迎えました。ロングセラーを中心に、絵本や児童書が約5万冊。毎月スタッフ全員でおすすめしたい作品を選ぶ「新刊会議」開催。
クレヨンハウス公式オンラインショップで購入

◆告知情報
毎月1回、作家と読者を結ぶ講演会&サイン会「子どもの本の学校」を開催。30年目となる今年度は初めてオンライン生配信を会場と同時開催! 子どもの本や文化にかかわる多彩な講師に出会えます。どうぞご参加ください!
https://www.crayonhouse.co.jp/shop/pg/1gakko30/

かつて子どもだった大人へ

【選者】ちえの木の実 店長 比留間 万記

選んだ理由

 がまくんとかえるくんの友情が描かれている、『ふたりは~』シリーズ。相手を強く想うがゆえのまぬけな言動に、心の中でつっこみを入れながらも愛おしく感じています。

『ふたりは いつも』は、春夏秋冬の物語がぎゅっと詰まっている1冊です。最後のお話「クリスマス・イブ」は、なかなか家に来ないかえるくんを心配するあまり広がっていく、がまくんの豊かすぎる想像に思わず笑みがこぼれます。ふたりがなかよく過ごしている姿と、自分と大切な人との姿を重ねながら、クリスマスにこの1年間を振り返ることができる絵本だと思います。「また来年も一緒に楽しく過ごそうね」そんな気持ちと共に、贈ってみてはいかがでしょうか。

絵本の魅力は?

 読むたびに新たな気づきがあることが、魅力の1つだと思います。絵本は、何通りにも解釈できるため、受け取り方は人それぞれです。そして、同じ絵本をいつ読むかによっても、その時々で感じ方が違います。私は、「子どものころ、この絵本と出会っていたんだ!」という記憶が、絵を見た瞬間、一気に蘇ってきたことがありました。

 母が、「あなたが幼いころ、よく読んであげたのよ」というある絵本。読んでもらったことも、内容も覚えていなかったのに、絵が思い出させてくれたのです。もしかすると、子どもたちは自分の中に、絵本から受け取った大切な何かを蓄えているのかもしれませんね。絵本は年齢を問わず、ずっと寄り添い続けてくれる存在だと思っています。

ちえの木の実
「一生の友だちになるような本と出会える場所をつくりたい」をコンセプトにしている、子どものためのセレクト・ブックショップです。お客さまのご所望に合わせて、1冊1冊大切に選書のお手伝いをしています。
住所 東京都渋谷区恵比寿西2-3-14 1・2F
TEL 03-5428-4611
営業時間 平日 11:00~19:00/土日祝 11:00~18:00(定休日:毎週火曜日)

学生時代からの友人とその息子さんへ

【選者】代官山 蔦屋書店 キッズコンシェルジュ 瀬野尾真紀

選んだ理由

 男の子2人の子育て真っ最中で、良くも悪くも迫ってくる現実に追いつくのが精一杯の日々を過ごしている友人。ゆっくりページをめくる時間はなかなか取れないかもしれないけれど、junaidaさんの画は「今ここ」ではないところへすっと連れて行ってくれる、それは大人でも子どもでも。同じ物語を共有しながら、長い余韻を味わう中で、それぞれの「どこか」が心の中にできてしまう、この絵本にはそんな力があると思います。

 それぞれの「どこか」が、賑やかで目まぐるしい日々のお守りになってくれることを願って。そして本棚の中からユーモラスな怪物たちが親子のくらしを見守ってくれますように。

絵本『怪物園』の魅力は?

 書店でのイベント等を通して、絵本の作り手の方のお話を伺う機会に恵まれ、たった16ページの絵本がいかに様々なアイデアを尽くし、手をかけて作られているのかに驚くことがあります。

『怪物園』もまさにそうで、表紙はもちろん、普通は立ち止まることのない見返しの部分から演出が始まっていたり、物語の途中からインクの色を変えてみたり、文字の書体、さらには使用する紙までこの作品のためにデザインされたり選び取られたものです。また言うまでもなく、少ないからこそ言葉一つ一つが吟味されつくされているし、色や構図すべてが物語のためにうみだされています。

 絵本とは、手の平の上の芸術作品。それがなんでもない顔をして、とても手に取りやすい形でたくさん出版されていることは本当に豊かなことだと思います。

◆告知情報
12月4日から代官山 蔦屋書店のキッズフロアにて『怪物園』刊行記念junaidaフェアを開催しています。書籍はもちろん、junaidaオリジナルグッズも各種取り揃えてお待ちしております。
当店の店頭、オンラインショップで『怪物園』をお求めいただきますと、もれなく特製ステッカーをプレゼントいたします。
junaidaフェア商品はオンラインショップからもお求めいただけます。

3歳前後の可愛い世界中の子どもたちへ

【選者】ブックハウスカフェ 店長 茅野由紀

選んだ理由

 愛されるほどに原型を留めなくなっていくのがしかけ絵本の運命。しかけが「完全に」なくなった同じ本が3冊我が家の書棚に並んでいて、いつ見てもよい風景です。壊れたしかけ絵本が懐かしいアルバムのよう。

絵本『メリークリスマス! ペネロペ』の魅力は?

 ペネロペシリーズの中のしかけ絵本。3歳のコアラの主人公ペネロペはうっかりやさんで、そのうっかり加減が子どもにも大人にもなんとも「いい加減」。複雑なギミックで効果的に施されたしかけに、子どもは大喜び、大人はひたすら感心するばかり。

大切な友人へ(年齢問わず)へ

選んだ理由

 小さなころに見た映画の感動を一冊の本として持ち歩ける幸せ!挿画からすべてが愛おしい1冊。こういう本を読んで感動するような人がマジョリティである社会だったら、と願いをこめておすすめします。

絵本『34丁目の奇跡』の魅力は?

 老人ホームに暮らすある老人がニューヨーク34丁目の百貨店にサンタクロースとして雇われるところから始まる物語。サンタクロースとして人々に幸せな気持ちを届ける老人がいればその人気を妬む大人がいて、という物語は進む。老人がサンタクロースであるということを証明する法廷の場面は圧巻。読み終わった後に訪れる大きく静かな感動。サンタクロースはいるのでしょうか?その答えを探しに、本の中へどうぞ。

いろいろな人へ

選んだ理由

 文字の一つ一つに深い意味をもっていて、ていねいに読みたくなる絵本。なかなか自分ではゆっくり時間を作ることが難しくても、なんとか時間を作りたい、この絵本をゆっくり読むために、と思わせる力を秘めた1冊です。

絵本『ちいさなもみのき』の魅力は?

 森の中に育つ小さなもみの木。毎年クリスマスになると、男の人が、根っこごとていねいに掘り起こし、自分の家の鉢に植え、クリスマスツリーに使います。彼には足の悪い子どもがいたのでした。そしてクリスマスが終わるとまたもみのきを森に戻します。ところがある年はいつまで経ってももみのきを掘り起こしにくる男の人は訪れませんでした。

 途中にクリスマスの楽譜がいくつか挟み込まれ、読みながら歌い物語を進めていくのがいい。穏やかで温かな気持ちになる、素敵な1冊です。

ブックハウスカフェ
東京神田神保町の子どもの本専門店&カフェ。赤ちゃんから大人までの居心地のよさを考えられた広々した店内。1万冊の本がつまった書棚の中央にカフェスペースがあり、軽食からお酒まで楽しめるお店。
住所 東京都千代田区神田神保町2-5 北沢ビル1F
TEL 03-6261-6177
営業時間 11:00~18:00(年末年始を除き、年中無休)
ブックハウスカフェいちおしの絵本や貴重なサイン本などが見つかるオンラインショップはこちら

イラスト:野瀬奈緒美