『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎が母と交わした約束、『ガラスの仮面』素直になれなかった母の最期…母と子の絆を描いた漫画5選!

マンガ

更新日:2021/5/11

本記事はネタバレを含みます。ご了承の上、お読みください。

 5月9日は「母の日」。普段は恥ずかしくて何も伝えられない人も、この日ばかりはお母さんにギフトを贈ったり、メッセージを伝えたりできる絶好のチャンスですよね。そこで本記事では、母の深い想いを描いた漫画を5つご紹介します。以下、ネタバレを含むのでご注意ください。

『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎が母と交わした約束

『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)
『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)

『週刊少年ジャンプ』で連載されていた超人気漫画『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)には、キャラクターたちのさまざまな過去が描かれます。昨年10月に劇場公開され大ヒットした『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に登場する鬼殺隊の最上級隊士のひとり、炎柱の煉獄杏寿郎とその母・瑠火が交わした約束が印象に残っている人も多いのでは。

 杏寿郎は正義感が強く、うまい弁当を「うまい! うまい!」といいながらガツガツ食べる豪快な性格。無限列車編では強敵・猗窩座にその強さを買われて「鬼にならないか」と誘われた瞬間、彼は母が病床で残した言葉を思い出します。

「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように」
「はい!!」
「私はもう長く生きられません。強く優しい子の母になれて幸せでした。あとは頼みます」

 そして杏寿郎は「母上、俺の方こそ貴女のような人に生んでもらえて光栄だった」と、母への想いを胸に猗窩座の誘いに乗らず、再び立ち向かいます。後輩の竈門炭治郎や嘴平伊之助を気遣いながら戦い、散った杏寿郎。意識が霞むなか、いまわの際に現れた母の幻覚に「自分は果たすべきことを全うできたか」と尋ねます。すると瑠火は「立派にできましたよ」とにっこり笑いかけ、それにつられて笑う杏寿郎の笑顔に多くの人が涙しました。

advertisement

『進撃の巨人』壮絶な最期を迎えた母の優しさ

『進撃の巨人』(諫山創/講談社)
『進撃の巨人』(諫山創/講談社)

 先日、『別冊少年マガジン』で最終回を迎えた人気漫画『進撃の巨人』(諫山創/講談社)。同作の主人公エレンの母カルラは、第2話で巨人に食われるという壮絶な最期を遂げます。目の前で母を殺されたエレンは涙を流し、巨人に強い憎しみを抱くきっかけに。

 しかしその後、エレンの両親と旧知の仲だったシャーディス教官の回想シーンに、再びカルラが登場。彼女は若い頃、酒場で酒を振る舞う仕事に就き、その後夫になるグリシャに出会います。

 一方、調査兵団の団長だったシャーディスは、何の成果も出せない凡人の自分に絶望していました。自分の隊が壊滅状態で壁の中に戻ってきたその日、幼いエレンを抱くカルラと再会。カルラに「キースさんこのまま…死ぬまで続けるつもりですか?」と問われると、キースは逆上、彼女に激しくまくしたてます。

「偉業とは、並大抵の範疇に収まる者には決して成し遂げられることではないだろう。また理解することすら不可能だろう。そのわずかな切れ端すら、手当たり次第男に愛想を振りまき、酒を注いで回るしか取り柄の無い者なんぞには。決して」

「特別じゃなきゃいけないんですか? 絶対に人から認められなければダメですか? 私はそうは思っていませんよ。少なくともこの子は…偉大になんてならなくてもいい。人より優れていなくたって…だって…見て下さいよ。こんなにかわいい。だからこの子はもう偉いんです。この世界に生まれて来てくれたんだから」

 カルラの優しいまなざしが心に沁みるシーンでした。

『ガラスの仮面』素直になれなかった母の最期「ごめんねマヤ」

『ガラスの仮面』(美内すずえ/白泉社)
『ガラスの仮面』(美内すずえ/白泉社)

 演技の才能を見出された少女・北島マヤの成長を描く名作少女漫画『ガラスの仮面』(美内すずえ/白泉社)にも、母と娘の物語があります。主人公のマヤは、母・春の反対を押し切り、半ば家出に近い形で親元を去り芝居の道を選びます。その後、多忙になったマヤがかつて母と暮らしたラーメン店に連絡すると、春が結核を患っていることや療養先のサナトリウムから脱走、現在行方不明になっていることを知ります。しかし、マヤよりも先に盲目の春を見つけ出した大都芸能社長の速水真澄は、母娘の再会をマヤの新作舞台の宣伝に利用しようと画策。春を山奥の診療所に軟禁して、マヤの活躍を報じるテレビやラジオ、週刊誌から遠ざけます。

 そんな折、春は院長と速水の部下の会話を立ち聞きしてしまい、マヤの主演映画『白いジャングル』が大ヒットしていることを知り、娘に会うために病室を飛び出すのです。

 彼女は、東京に向かう道すがら車に乗せてくれたトラック運転手からマヤの活躍を聞きます。しかしその後体調が悪化し、東京行きは断念したものの彼女は映画館に向かい、娘の主演映画『白いジャングル』を鑑賞します。館内に響くマヤの声を聞き、我が子の姿を思い浮かべました。

「ああこの目がみえたらね! マヤ! おまえがみえたらね……! 考えてみれば母さん…一度もおまえの演技してるとこみたことないんだね……。はじめて学校の劇に出たときも母さんみにいかなかった……ごめんねマヤ」

 その直後、春は映画館で絶命。彼女がその目で娘の晴れ舞台を見ることはありませんでした……。

『こどものおもちゃ』血のつながり母と娘の想いが通じ合う

『こどものおもちゃ』(小花美穂/集英社)
『こどものおもちゃ』(小花美穂/集英社)

 90年代に一世を風靡した少女漫画『こどものおもちゃ』(小花美穂/集英社)は、子役タレントとして活躍する倉田紗南が、学級崩壊や少年犯罪などさまざまな問題にぶつかりながら前に進む物語。元気ハツラツで明るい性格の紗南ですが、彼女には産まれてすぐに公園に捨てられていた過去がありました。そんな彼女を拾ったのが、小説家の倉田実紗子。その後実紗子は紗南を養子に迎え、本当の娘として育てます。

 しかし実紗子は、紗南が12歳になったらふたりの関係を暴露するエッセイ本『娘と私』を発表し、本当の母親を見つけるつもりでした。紗南自身も、幼い頃から実紗子と血のつながりがないことを知っており、エッセイが話題になるように子役活動をしていた経緯も。

 狙い通り、紗南の母親を名乗る女性が現れ、実紗子はビンタを一発かまします。一方の紗南は、母から真実を聞いたときから「大好きなママがいつか自分を手放して本当の母親に返すつもりだったらどうしよう」という不安を抱え続けていました。すべてがいち段落した後、紗南と実紗子が言葉を交わすシーンは忘れられません。

「…紗南……ごめんなさいね…」
「えっ…?」
「…まだ小さいあんたにすべて話すなんて…残酷だとわかってやってた……つらかったでしょう? 私は…ずーっと不安だったのよ…いつか本当の母親が現れて…あんたを連れてっちゃうんじゃないかと思って…だから…早く…こっちから母親に会って…キッパリ示したかったのよ……紗南は『紗南は…私の娘だ』って…」
「…ママ…? 私…ずっとここにいてもいいんでしょ…?」
「…あたりまえでしょ…」

 普段は冷静沈着な実紗子が、言葉に詰まりながら話す姿に胸打たれます。同じ不安を抱えていた紗南と実紗子、母娘の想いが通じ合った瞬間でした。

『あひるの空』母が「ずっと謝りたかったこと」

『あひるの空』(日向武史/講談社)
『あひるの空』(日向武史/講談社)

 累計発行部数2400万部を突破した人気バスケットボール漫画『あひるの空』(日向武史/講談社)。同作の主人公・車谷空は、高校入学時点で身長149cmとかなり小柄なバスケ少年でしたが、スリーポイントシューターとして活躍します。そんな彼の母親・車谷由夏は元全日本バスケットボール選手として名を馳せていましたが、病に倒れて長い入院生活を余儀なくされます。

 病状が進むなか、由夏は激痛に耐えながら車椅子で空の試合を観戦し、その直後に容態が急変。駆けつけた息子に試合を観ていたことは明かさず、空との会話を楽しみます。そして、空の頬に触れ「ずっと謝りたかったことがある」と話しかける由夏。

「大っきく産んであげられなくてゴメンね。ごめん」

 母の言葉を聞いた空は戸惑い、涙を流しながらこう答えます。

「小さいからこそ皆注目してくれるんだと思うし、小さかったからこそここまでがんばってこられたんだ。だから……だからさ。母さんにありがとうって言いたかったんだ…!!」

 自身もプレーヤーだったからこそ、由夏は空が抱えるハンデの大きさが痛いほどわかり、ずっと胸を痛めていたのかもしれません。その分、空の「ありがとう」は彼女に響いたのではないでしょうか。由夏と空の別れは同作屈指の名シーンとして語られています。

 産まれたときから近くにいる母。その身近さゆえ、お互いなかなか本音や感謝が伝えられないんですよね。この機会にお母さんに感謝を伝えてみてはいかがでしょうか。

文=とみたまゆり

あわせて読みたい