絵本のプロが選んだ「クリスマスに贈りたい絵本」おすすめ19選! 出版社編Part②

文芸・カルチャー

更新日:2021/12/13

 子どもの頃に繰り返し読んだ絵本、読み聞かせしてもらったお気に入りの絵本はありますか? 大人になって改めて読んでみると、意外な発見や自分の感情に出会えるのが絵本の魅力でもあります。ダ・ヴィンチニュースでは、上白石萌音さん、ryuchellさん、絵本専門書店・出版社の絵本のプロのみなさんに「クリスマスに贈りたい絵本」を選書して頂きました! 大切な人への贈り物に、まだお子さんのクリスマスプレゼントが決まっていないという親御さんの参考になれば幸いです。第2弾は、数多の絵本を手掛ける出版社の担当者が選ぶ、絵本10冊を紹介します!

 絵本のプロのみなさんには、A~Cの3つのポイントから絵本を選書して頂きました。

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊
B.読んで衝撃的だった1冊
C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

10 こぐま社

【選者】こぐま社 編集部 大西麻依子さん

【贈る対象のひと】

お友だちとの関係を意識しはじめた子どもたちへ

【選んだ理由】

 ねこちゃんが見つけた風船を、すーちゃんが横取りして自分のものにしてしまいます。ねこちゃんに見せつけるように、風船に洋服を着せたり、一緒にお茶を飲んだりするすーちゃん。ねこちゃんは、家の外でずっと待っていますが……。前半のすーちゃんの行動には悲しい気持ちになりますが、それを補って余りある、爽やかな読後感の残る絵本。子どもにしかできない仲直りの仕方を、言葉もなく後ろ姿だけで描いたラストが印象的。いつかきっと、心が弱った時に寄り添ってくれる、そんな特別な一冊だと思います。

【お知らせ】
「こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界」@北九州市立美術館分館
https://www.instagram.com/kogumakita/

11 子どもの未来社

【選者】子どもの未来社 編集長 堀切リエさん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1 冊

【贈る対象のひと】

サンタさんは絶対にいる! と信じている全ての子どもたちへ

【選んだ理由】

 みんなが大好きなクリスマスソング「赤鼻のトナカイ」の元になったお話です。今から80年以上前のアメリカで、病気の母親をもつ娘に、「人とちがっていても神様のつくった命はいつかみんな幸せになれるよ」というメッセージを伝えたくて父親のロバートが書きました。赤い鼻のせいで仲間はずれのルドルフが、クリスマスの夜、サンタさんの手伝いをして大活躍! おなじみの歌とリンクして、子どもたちに夢と勇気と感動をあたえる、世界中で愛されつづけてきたお話。きらきら光る表紙をなでたり、1ページずつじっと見入り、絵本を抱っこして眠るほど子どもたちは夢中になります! 巻頭に「〇〇より 〇〇へ」とお名前を入れるページ付。

12 主婦の友社

【選者】主婦の友社 育児教育編集部 育児教育ユニット 編集長 黒部幹子さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

見えているものにとらわれているあなたへ

【選んだ理由】

「おねがい……ヒツジの えを かいて」さばくに不時着した飛行士のまえにとつぜんあらわれた小さな王子さまを主人公に繰り広げられる、ふしぎなお話。1943年に出版された名作『星の王子さま』をモチーフに、イギリスの詩人と画家のコンビが生みだした新しい絵本にも「かくれているものはうつくしいんだよ」というメッセージが込められています。めまぐるしく変化する時代だからこそ、大人も子どもも、見えているものだけにとらわれずに、本質を見る力が大切だと感じます。金箔の星を散りばめた心踊る装丁で贈り物にもぴったりな1冊。

13 徳間書店

【選者】徳間書店 広報宣伝部 斎藤信恵さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

好奇心いっぱいの子どもたち、そして絵と旅行の好きな大人たちへ

【選んだ理由】

 まずは、その大きさに圧倒されます。タテ38㎝、ヨコ28㎝、重さ約1.65㎏。少し時代を経たような色合いのページをめくれば、世界62か国の地図とその国を紹介する数えきれないほどたくさんのイラストがぎっしり! 食べ物、歴史的な建物、有名な人物、動物、植物……。行ったことはないけれど、へぇ~こういう生き物がいるのね、衣装も珍しい、世界って面白い! と見飽きません。

「これはなんだ?」とお父さんの方が夢中になってネット検索しているという話も。
4000以上あるイラストは全部違っていて、各ページの枠も全部異なる柄で、国名表記もそれぞれの出版国の文字を著者自ら描くというこだわりっぷり。外には広い世界があるのだなぁ、と夢が広がります。クリスマスには家族みんなで世界旅行を楽しんでは?

【お知らせ】
同じ著者の最新刊『国立公園へ行こう! イエローストーンからコモドまで』は、世界8つの国立公園をとりあげ、自然環境や生物多様性について考えるきっかけともなる絵本です。日本のアニメやマンガが大好きな著者が、マンガ形式も取り入れて描いたこちらもおすすめです!

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14 白泉社

【選者】白泉社 MOE編集部プロデューサー 位頭久美子さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

猫を愛するおしゃれ好きな大人へ

【選んだ理由】

 大人の女性を中心に、絵本や雑貨が大人気の画家、ヒグチユウコさん。『ファッションマジック』は、個性豊かな猫たちのファッションが楽しめる、ヒグチさんの初めてのしかけ絵本です。上・中・下3分割のカード用紙をぱたぱたとめくって、何通りものおしゃれを楽しめるのが魅力。ちょっぴりおめかしした衣装に身を包んでいるのは、ボリス、こはるをはじめ、モデルのいる猫たち。確かな筆致で描かれた絵の中から、愛猫に似た子を見つけるのも嬉しいサプライズです。洋書のようなクラシカルでかわいい装幀で、猫を好きな人への贈り物にもぴったりの1冊です。

15 PHP研究所

【選者】PHP研究所 児童書出版部 鈴木由季さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1 冊

【贈る対象のひと】

あの頃のトキメキをもう一度味わいたい親御さんと、おひめさまに憧れる子ども達へ

【選んだ理由】

 絵本を選書する親自身も、童心に帰ってドキドキわくわくしたいもの。子ども達には、1回読んだら終わりではなく、心に残る1冊に出合ってほしいもの。本書は、そんな親子の願いを叶える絵本です。各頁には、ドレスや靴、バッグなど、心ときめくアイテムが広がり、どれにしようかと選びながら、おひめさまになるために、お城の10階を目指していきます。我が家の姉妹は、絵本の主人公になりきって、各頁のアイテムを競い合って選んでいます。そして「このドレスにはどんな髪型がいいかなぁ」などと相談され、いつのまにか私までもが夢中になって、家族の楽しい時間が生まれています。親子共々、ずーっと家に置いておきたい、手放したくない1冊です!

【お知らせ】
 今なら『10かいだてのおひめさまのおしろ』『10かいだてのまほうつかいのおしろ』に、着せ替えができるクリスマスカバーが付いています!

16 福音館書店

【選者】福音館書店  飛永美紀さん

C.装丁が美しい・豪華・手放したくない1冊

【贈る対象のひと】

もうすぐ母親になる友人に

【選んだ理由】

 どこか懐かしい色彩で描かれた美しい絵に、思わず惹き込まれてしまう『よるはおやすみ』。色とりどりの寝間着を着た子どもたちが、街を抜け、橋を渡り、海に潜り、あらゆるものに「おやすみ」を言いに行きます。

「おやすみ」は、眠りにつくときにそばにいる特別な人に対する言葉。まるで「愛してる」と同じような親密さを持っている気がする、と作者のはっとりさん。子どものころは気恥ずかしく思っていた「おやすみ」という言葉を、母となった今、幼い息子さんに向けて毎晩伝えているそうです。もうすぐ母親になる友人にも、赤ちゃんに「大好きだよ、おやすみ」を伝えるあたたかいひとときを過ごしてほしいな、という気持ちを込めて、贈りたい一冊です。

【お知らせ】
福音館書店公式Webマガジン「ふくふく本棚」
おすすめの絵本や読み物、著者のエッセイやインタビューなどをお読みいただけます。
『よるはおやすみ』のはっとりさんによる刊行記念エッセイも。
最新情報は各種SNSでお知らせ中!
https://www.fukuinkan.co.jp/detail_contents/?id=82

17 ブロンズ新社

【選者】ブロンズ新社編集部 副編集長佐川祥子さん

【贈る対象のひと】

人に相談できない、したくない子どもたち大人たちへ

【選んだ理由】

「何か困ったことがあったら、親や先生に相談する」は、問題解決へのひとつの王道ですが、それだけはしたくない、という悩みだってたくさんあります。ヨシタケシンスケさんは「僕は、困ったことがあったときに、人に相談できるタイプではなかったから、かつての自分のような子どもたちが読みたくなるような本をつくりたかった」といいます。相談しないということは、自分の頭でいろいろ考えてみるということ。これはヨシタケさんからの発想の贈り物です。

 コロナ禍の2度目のクリスマスをむかえます。この2年、わたしたちは、生きることの本質を考えることが多くなったように思います。そんなときに、「自分の頭で考えれば、世界は果てしなくおもしろい!」発想絵本シリーズは、物の見方について、大きなギフトになることでしょう。りんごはりんごに見えるけどりんごじゃないのかもしれない、自分てなんだろう、死について、きらいな人っているよねえ…。「かもしれないボックス」には『りんごかもしれない』『ぼくのニセモノをつくるには』が、「どうしちゃおうボックス」には『このあとどうしちゃおう』『ころべばいいのに』がそれぞれ入っています。箱に入った贈り物は特別。わくわくするうれしさがあります。たのしい箱の中にはヨシタケさんからのメッセージと、特製クリアファイルのギフトもありますよ。

18 ポプラ社

【選者】ポプラ社 コンテンツプロデュースグループ 絵本ユニット 小堺加奈子さん

A.自分を変えた・新しい価値観を得た1冊

【贈る対象のひと】

小さいころの自分へ

【選んだ理由】

 作者のせなけいこさんは、小さなテーブルの上ではさみをチョキチョキ動かし、たくさんの絵本を作ってきました。ご自身の子どものためや、近所の子どもたちのために。「私は、このテーブルの前に子どもさんたちが座っていると思って、その子たちのために絵本をつくるんです」せなけいこさんが常日頃おっしゃっている言葉です。絵本『クリスマスのおばけ』は、楽しいクリスマスを過ごす女の子が、「おばけの子どもはどうだろう? プレゼントはもらえているかな? 寒くて震えていないかな?」と思いを寄せるお話です。自分が小さいころ、この絵本を読んでいたらどんなことを感じただろう。そんなことを思いながら、今年も、絵本とともにやさしさの贈り物がたくさんの人に届きますように、と願わずにはいられません。

19 みらいパブリッシング

【選者】みらいパブリッシング 笠原名々子さん

B.読んで衝撃的だった1冊

【贈る対象のひと】

命や人生をあらためて見つめたい人へ

【選んだ理由】

 主人公は、スキニーとガリーという名前のがいこつです。雪の降る夜、家の前で子猫を見つけ、人間に変装して飼い主のもとに返しにいきます。この絵本では、生と死が、今までにない角度から描かれています。まるでわたしたちが生きている世界をさかさまにして見たようです。大人でも価値観がゆるがされてしまう、衝撃的な絵本です。とくにディズニー映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』が好きな人だったら、きっとハマってしまうと思います。

【お知らせ】
冬の4大プレゼントキャンペーン「みらいGIFTえほん」
内容:対象の絵本をご注文いただいた方に、もれなく4つのプレゼント
期間:2021/10/1~2022/1/31
詳細URL:https://miraipub.jp/info/news/15193/

イラスト:野瀬奈緒美