第3回 twitter怪談短歌コンテスト 受賞作発表!

更新日:2014/2/22

 第3回twitter短歌コンテストの受賞作がこのたび決定! 2月22日(土)に紀伊國屋書店新宿本店にて、選考委員の東直子さん、道尾秀介さん、川野里子さんそれぞれより、各大賞作品と佳作、次点が発表されました。講評の詳細は、『Mei(冥)』4号に掲載予定。お楽しみに!

※募集期間:2013年12月1日~12月25日 ご応募ありがとうございました。

  • 東直子さん
    (写真=小松勇二)
  • 道尾秀介さん
    (写真=首藤幹夫)
  • 川野里子さん

大賞 各1作

東直子賞・大賞

悲しいよ痛い辛いよパパごめん殴るの止めてあたし死んでる

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間氷期さん

選評
「短歌」は、生きている人の揺れ動く心を言葉で表現するものですが、「怪談短歌」は、この世ならざる者の声を形にすることではないかと、この歌を読んで思いました。選歌している間にも、このような状況に陥っている子のことが報道されました。この一首は、彼らが書かせた短歌なのではないでしょうか。結句の「あたし死んでる」が胸に突き刺さります。肉体は消えてなくなっても、心の痛みは永遠にこの世をさまよい続けるのでしょう。

道尾秀介賞・大賞

ハンカチが等間隔に落ちていて、めくる 目、耳、鼻、口「やめろ」

はだしさん

選評
「等間隔」と断ることで、視点人物の淡々とした歩みが俄然強い現実感を帯び、その感覚にとらわれつつ彼あるいは彼女と一体となって見知らぬ場所を歩いていくと、だしぬけに目の前で「口」が声を発する。その声が、ラストの字足らずに必然性を持たせると共に、得体の知れないもののそばに読者を置き去りにする。「怪談」の拘束衣にもなってしまう「短歌」を見事に着こなしていると感じた作品です。

川野里子賞・大賞

コンセントへ刺そうとしたら向こうからすでに刺されていたのでやめた

伊舎堂 仁さん

選評
まずコンセントという素材が面白い。現代はコンセントを差し込んでネットに、電話に、いろんな世界につながっている。ある日、「向こう」からすでに何かが差し込まれていた、ということはありそうだから怖い。「向こう」側があってそこにはこちらと同じ世界が広がっている。薄っぺらな壁の向こうの異次元の世界の 気配。私たちの生活にひっそり何かがとり憑いている。ありそうでなさそうなリアリティーの加減が絶妙だ。

佳作 各2作

東直子賞・佳作

静かさに静けさ被せ腐葉土の中の花嫁目を閉じてくれ

砂山ふらりさん

選評
韻律の美しさ、心地よさとともに繊細に描写された腐葉土の隙間から現れる、目を見開いた花嫁。見事な構成に、戦慄が走りました。

猫を追い帰れなくなり電話する。電話がぬるく、やわらかく。嗟(にゃあ)。

御前田あなたさん

選評
萩原朔太郎の「猫町」のように、迷宮に入り込む悪夢感がリアルに迫ります。結語の「嗟(にゃあ)」! 意表をついていて、とてもお洒落です。

道尾秀介賞・佳作

たとへれば仔山羊のやうな鳴き声でわかめのやうな増えかたでした

桔梗さん

選評
ここで読者が対峙する恐怖は、たとえば顔を隠した人物が持つ恐怖と同種のもので、想像力ひとつでどこまでも大きくなる。大好物です。

紙芝居 おじさんあの子 連れてったの? ボウズこいこい ダレカラキイタ

巽鏡一郎さん

選評
ラストの一言で、少年が“とてもまずいことをやってしまった”とわかるが、当の少年はたぶんそれに気づいていない。そこが何より怖い。

川野里子賞・佳作

六年も 教室のすみ 片すみにここにいたのに だれも知らない

春乃かげんさん

選評
気づいて、気づいて、という叫びが届かない静けさが怖い。心理的な恐怖としては最大のものかもしれない。

おひるねはおしまいさてと園児らにこどものかおをかえしましょうか

小瀬朧さん

選評
ずらりと並んだお昼寝中の園児には顔がないのか。子供らしい無邪気な「かお」がお面だとしたらいっそう怖い。

多数のご応募をいただいたため、受賞には至らなかったものの
優秀な作品を次点としてご選出いただきました。

次点 各10作

東直子賞・次点

  • 栗の木の国の土産に弟がくれた「人間むいちゃいました」 カー・イーブンさん
  • 隣人が置き去りにした鉢植えが生きると決めて私に伸びる コトハさん
  • 「ごめんね」と泣いて私に火を放つそれで供養ができたと思う? へくなさん
  • 今朝描いたらくがき通りむらさきになって全然動かないパパ 加子さん
  • 鉄骨に吊るされたゴム手袋の先端はまだ少女の匂い 藤本玲未さん
  • 憎いから君が油田になるまでの三万年を愛し続けた 小塚ゆちこさん
  • おそろいが欲しいよバッグ、靴、帽子、優しい彼女と彼女の胎児 ナイルさん
  • くちづけで私以外が刻まれた不要な脳を吸い取っている 高島津諦さん
  • 便箋に書いては丸めた恋文を部屋の生首がぐっと飲み干す 青山藍明さん
  • コンビニの明かりの届く公園で砂場遊びをやめない母子 原田彩加さん

道尾秀介賞・次点

  • 座学しか受けてないのね化け狸パンツの中はすべてモザイク おおしまゆきこさん
  • 「もしもし、あ、赤ちゃん元気そうだなあ」「妻も子供も去年死んだよ」 木下龍也さん
  • 文具店試し書き用白い紙我の名前がまた書かれてる れんさん
  • 立体視できぬひとつ目小僧らにビルの並びを教える夕べ とねみささん
  • うちにいるオバケはママとパパがいうユクエフメイにさらわれたんだ ナイルさん
  • 「母子と蟹、健康です」と病院の廊下で聞いて横に跳ぶ父 告成美幸さん
  • ぷっくりと腹ふくれたる這うものが巻き込まれゆくエスカレーター 鮫漫坊さん
  • おひるねはおしまいさてと園児らにこどものかおをかえしましょうか 小瀬朧さん
  • 何故泣くの問われしわたし年七つ誘拐された烏の群れに 梁川梨里さん
  • 父母の手を握りたがえし人ごみの言えぬ秘密を今に忘れず 萬暮雨さん

川野里子賞・次点

  • 鏡とのじゃんけん勝負にまた負ける わたしは嬉しそうにしている 飯田彩乃さん
  • 首と首 入れ替えるのが 愛でしょう あなたはわたし わたしはあなた 価格未定さん
  • くるぶしが寒いといって震えてる 冷蔵庫から取り出しに行く 横山伊吹さん
  • かあさんが来るまでいいこにしていてね白い人形、黒い人形 砂花ことはさん
  • どのような声も悲鳴も漏れません最新型の火葬炉なので 土屋智弘さん
  • 心臓のいろの朝焼け ほら 東経140度はぜんぶ燃えるね 小塚ゆちこさん
  • パソコンに怪談短歌を書き出すと必ず一度は電源おちる 白檞桔梗さん
  • 柔らかいあなたの白い腹の上に産卵されたようなかなしみ 横山伊吹さん
  • 雪道にポツンとひとつ雪だるま瞬きをするとまたひとつ増え 間氷期さん
  • いつ見ても美しい家だったのは母に指紋がなかったからだ 田中ましろさん

沢山のご応募ありがとうございました。