創刊記念スペシャル対談
!『幽』編集長 東雅夫 ×『Mei(冥)』編集長 岸本亜紀

更新日:2012/10/22

 いかにして『Mei(冥)』は誕生したのか? 兄妹雑誌の編集長同士に、二人の出会いから制作秘話までたっぷりと語ってもらいました!

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東 雅夫
(ひがし・まさお)1958年、神奈川県生まれ。文芸評論家、アンソロジスト、『幽』編集長。『文学の極意は怪談である』ほか著書・編書多数。2011年『遠野物語と怪談の時代』で第64回日本推理作家協会賞を受賞。 写真=冨永智子

東 読者の皆さま、いつも『幽』と〈幽ブックス〉ほか関連出版物を御愛読、御
声援くださいまして、まことにありがとうございます。今日は「『幽』の妹マガジン」として、このほど創刊される運びとなった新
雑誌『Mei(冥)』について、編集長に着任した『幽』編集部の岸本亜紀と、
『幽』編集長の私とで、お披露目を兼ねて対談したいと思います。

岸本  はじめまして、こんにちは(笑)。

東 思えば岸本とは長いこと仕事してますよねー(遠い目)。最初は何の仕事
を御一緒したのでしたっけ?


岸本  最初は『新耳袋』(一九九八年、弊社より単行本刊行)を『ダ・ヴィン
チ』で紹介して欲しいと、当時の担当編集Tが私に売り込みにきたんです。二人
で相談して、まずは綺羅星のごとくデビューして三年ほどの京極夏彦さんにゲラ
を送りました。あわよくば感想を伺ったり、お会いしてお話ししたり、一緒に仕
事もしてみたいという下心丸出しのお手紙をつけて(笑)。そしたら京極さんか
ら編集部に電話がかかってきて、「この本はメディアファクトリーから出るんで
すか! 僕は扶桑社版も持ってます。中山さんとも牛祭りで会ったばっかりです
よ」と電話がかかってきたんです。そこで著者二人と京極さんで『ダ・ヴィンチ』
誌上で座談をしていただこうと思ったのですが、もう一人、作家でない立場から
文学的なアプローチで作品の魅力を紹介いただけないかと思って、学生時代から
の憧れの雑誌『幻想文学』の編集長であった東さんにお声をかけさせていただい
たのが始まりです。


東 憧れねえ……ま、いいや(笑)。かくして京極さんや『新耳袋』コンビと私
で怪談之怪が結成され、『ダ・ヴィンチ』で怪談コーナーの連載が始まって……。

岸本  最初は、『新耳袋』の二人の怪談を披露してもらい、京極さんが解説し、
お呼びしたゲストもお話ししてもらうというサロン的活動が中心でしたが、山岸
凉子先生、伊藤潤二さんと豪華ゲストが登場され、そのうち恩田陸さんや綾辻行
人さんや小野不由美さんなど、聞きにこられるだけの作家さんも増えてきて(笑)
、夏の読者感謝イベントと称して公開イベントに発展していったんです。忙しい
京極さんが「〝妖怪会議〟と一緒にやったらどう?」と御提案くださって、角川
書店と合同開催になりました。結局、同じグループ会社になってしまいましたが
(笑)。あのころは楽しかったな~(遠い目)。


東 そうした怪談之怪の活動を踏まえて、二〇〇四年に『幽』が創刊できたの
も、岸本の精力的な社内的根回しあればこそでしたな。

岸本  充実した根回し期間でした!(笑)

東 そして今回の『Mei(冥)』では、まったく新しいコンセプトの女性向
け怪談専門誌ということで、編集の「顔」も女性で行こう! ということから、
『Mei(冥)』編集長を務めてもらうことになったわけですが、まずは創刊に
いたる経緯を説明してください。


岸本 亜紀
(きしもと・あき)『Mei(冥)』編集長。   イラスト=伊藤三巳華

岸本  巻末の編集後記にも書いたんですが、小さいころからあの世とか、悪と
か、世界の裏側とか、噓とか、コックリさんとか、そういうものにばかり興味が
行く子どもだったんです。暗いというか(笑)。大学時代の友人に久々にあって、
「怪談雑誌やってる」というと、「昔から合宿といえば、岸本の怪談だったよね」
と言われるくらい。人の興味を引きたかったんですかね(笑)。時代も時代で周
りはそういう心霊女子みたいの、結構いました。女性って、一度はそういうオカ
ルト的な部分を通るのではないかと思っています。小野不由美さんの『ゴースト
ハント』にも書いてありましたよね、ポルターガイストの発生と、思春期の女の
子には関係があると。だから意図的に、女性向けの作品を数年前から刊行してみ
ました。それが大当たり。『視えるんです。』の伊藤三巳華さんが筆頭です。女
子向け怪談、行ける、と!

 
東 私も『幽』をつくりながら、漠然と「ガールズ怪談」というコンセプトを
考えていて、それが加門七海さん立原透耶さん伊藤三巳華さんの「怪談三姉妹」
とか『女たちの怪談百物語』の企画に結実して、予想した以上の成果を上げて、
手応えを感じていました。



岸本  『幽』怪談文学賞からも女性の作家がどんどんデビューしました。みな
さん、作風が様々で面白いです。女性ならではの視点って、細やかだし、女って
産み落とす性であるから、命に関するうらみつらみや執着は生半可でない(笑)。


東 ひいい。女性と怪談との関係性について、岸本はどんなふうに考えている
の?


岸本  根本的にはみな、深い部分で怪談的な業(ごう)のようなものは持ってい
るものだと思うんですが、表向きにそれを言われると引く(笑)。だから、女性
に向けて伝えるときはパッケージが非常に重要だと思っています。佇まいが美し
いこと、おしゃれなことは必要だと思います。内容はグロくてもエグくてもいい
んです(笑)。


東 雑誌名を何にするかが、なかなか決まりませんでしたね。

岸本  雑悩みました。なかなか雑誌のコンセプトが言葉にならなくて困りました。
多くの人に読んでもらいたくて、表向きは怪談といわなくて、でもちょっと怖く
て……みたいな、自分で何を言っているのか分からなくなりました(苦笑)。東さ
んと京極さんにまたもや助けていただき、ありがとうございました。とくに京極
さん。『幽』に引き続き、名付けは二度目のお願いで……。すみませんでした。


 
……さてさてWebではここまで。気になる続きは、『怪談実話系 妖』(MF文庫ダ・ヴィンチ、10月25日発売予定)
でお楽しみください!

紙 『Mei(冥)』 Ghostly Magazine for girls (幽BOOKS)

東雅夫 / メディアファクトリー / 998円

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