ももクロの走った国立競技場からの約1000日間 「笑顔の天下を取りたい」

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更新日:2017/2/13


『ももクロ道(みち)』(川上アキラ/日経BP社)

 今年の5月17日で、結成9年目を迎える5人組アイドルグループ・ももいろクローバーZ(以下、ももクロ)。「今会えるアイドル」として、2010年頃に始まった「アイドル戦国時代」から現在までのアイドル界を、全力のパフォーマンスで名実ともにけん引し続けるグループである。

 昨年末に幕張メッセ・国際展示場4~6ホールで行われた「ももいろクリスマス2016~真冬のサンサンサマータイム~」では、会場に2日間でのべ6万6082人を動員。真冬にもかかわらず「最高気温28℃」という“常夏”の設定に多くのモノノフ(ももクロのファンの愛称)たちが白熱したほか、年越しライブ「第二回 ゆく桃くる桃~年またぎ笑顔三昧~」では、来年の10周年へ向けた布石となりうる全国47都道府県ツアー「ももいろクローバーZ ジャパンツアー『青春』」の開催が発表された。

 勢いが衰えるどころか、怪物級の活躍と進化を続けるももクロ。時計の針を巻き戻すと、2014年3月に2日間にわたり開催された「ももクロ春の一大事2014 国立競技場大会~NEVER ENDING ADVENTURE 夢の向こうへ~」を境にして、グループの“舵取り”が大きく切り替わった。その過程を明かしているのが、モノノフたちにも愛されるマネージャー・川上アキラさんの著書『ももクロ道(みち)』(日経BP社)である。

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 旧・国立競技場のライブから、先述の「ももいろクリスマス2016」直前までの約1000日にもわたる道のりを振り返った本書。川上さんは「国立競技場ライブを実現した14年は、新たな挑戦が始まった年」だと振り返る。

 それまでのももクロは、ライブを中心に“有言実行”を貫いてきた。デビュー時からの目標である『NHK紅白歌合戦』への出演はその一つで2012年末に初めて実現。その一方で目立っていたのは「より大きな会場へ羽ばたく」という目標であり、2011年からはさいたまスーパーアリーナ、西武ドーム、日産スタジアム、そして、旧・国立競技場でのライブと着実に歩みを進めていった。

 しかし、川上さんがメンバーそれぞれへの思いを語ったパート「メンバー5人の今」にあるリーダー・百田夏菜子の項目では「13年の『ももクリ』(筆者注:ももいろクリスマスの略称)で国立競技場ライブを発表してから、リーダーである百田とは何度も『この先どうするべきか』を話しました」と明かされている。

 旧・国立競技場が「今はもう跡形もなくなってしまいましたが、国内最大級のライブ会場だったのはいうまでもありません」とする川上さん。会場の規模や動員数はいわば“物理的”なものであり、数字で表せる目標が達成された時点で次に何を目指すべきかに苦慮するのは想像にたやすい。しかし、そこからの布石となったのは旧・国立競技場でのライブ終盤、会場の象徴だった聖火台で百田が掲げた「みんなに笑顔を届けるという部分で天下を取りたい」という目標だった。

 以降、15年に月1回のペースで行われた日本全国各地のライブハウスを巡るツアー「月刊TAKAHASHI」はそれを象徴する一つで、万単位の会場で培ってきた経験をたずさえて“自分たちから足を運ぶ”形での公演を実現。さらに16年5月からは、トークイベント「ロケハン~ももクロおおいにかたる」をスタートさせるなど、ライブとは異なる趣向の展開も織り交ぜながら、百田による「みんなに笑顔を届ける」という目標を胸にグループとして走り続けている。

 目標を公言して、着実に実現していくというももクロのスタイルは現在活躍する数多くのアイドルたちのフォーマットにもなった。いわば一つの“王道”を築き上げた存在であり、その活躍は間違いなく記録にも記憶にも残るものである。そんな彼女たちが、今年4月からの全国47都道府県ツアーを乗り越えた先でどれほどの“笑顔”を生み出していくのか。期待は膨らむばかりだ。

文=カネコシュウヘイ