「石谷春貴」 声優インタビュー&ミニグラビア【声優図鑑】

アニメ

更新日:2017/1/22

石谷春貴

編集部が注目する声優に、声優を目指したきっかけや、初めてのお仕事、そしてプライベートなことまで、気になるあれこれについてインタビューを行い、さらに撮り下ろしのグラビアも交えて紹介する人気企画「声優図鑑」。

第149回となる今回は、「AKIBA’S TRIP -THE ANIMATION-」の伝木凱タモツ役、「響け! ユーフォニアム」の塚本秀一役などを演じる石谷春貴さんです。

――まずは撮影の感想をお願いします。

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石谷:いや〜緊張しました。撮影自体が初めてなので。インタビューも2回目か3回目だと思います。

――石谷さんのことを知りたいファンはたくさんいると思います! 2013年頃からテレビアニメを中心に出演していますが、声優を目指したきっかけとは。

石谷:中学生の時、友だちに誘われて児童劇団の裏方のお手伝いをして、演技をする人たちってカッコいいんだな〜と思ったのが、演技に興味を持ったきっかけです。声優になりたいと思ったのは高校2年の時です。中学から陸上をしていたんですが、高校2年生の最後の大会でリレーのアンカーを任されて。地元が宮崎なので、優勝したら九州大会に行けるかもしれなかったんですけど、ゴール直前で胸を突き出した時にバランスを崩して、左手を地面にバーンとついちゃったんです。起き上がれなくて、左手が動かないぞ! と思ったら肘から上が大変なことに…。

――まさか、複雑骨折とか…。

石谷:そういう感じです。救急車で病院に運ばれて、高校生活中に陸上を続けることは絶望的だよと。リハビリも大変だよと言われました。大学の推薦入学も考えていたのに、入院している1週間くらいは日にちの感覚がなくなるほど落ち込んじゃって。その時に、「クレヨンしんちゃん」の、藤原家の家が燃えちゃう回を観たんです。ひろしが焼け焦げた跡地で「ここで何があって、何があって…」ってしんちゃんとの思い出を語ってるんですよ。そこで近所のおばちゃんから「またこれからいいことあるわよ」って言われた時に「お前に何がわかるんだよ!」って言い返すんですけど、そのシーンでボロボロ泣いちゃって…。

――そのセリフが自分に重なったんですね。

石谷:こんなに人を感動させられるんだって。それと、高校の時の友だちの存在も大きいです。身体的な理由でラグビーをあきらめたっていう同じ境遇で。その子が教室で読んでいたのがライトノベルで、俺の「声優になろうと思ってるんだ」っていう夢をその頃から応援してくれてるんです。それから、陸上しかしていなかった分、死ぬ気で勉強をして、一般受験で大学に進みました。

――もし陸上を続けていたら、今頃は別の職業に…。

石谷:選手をケアする方向に進みたくて、スポーツインストラクターを目指していました。

――演技をしたのは、プロ・フィットの養成所に入ってからが初めて?

石谷:ほぼ初めてです。児童劇団で1週間くらいお遊戯をしたくらいなので。

――養成所に入るのも狭き門だと聞きます。

石谷:僕が入ったのは、演技が未経験でも入れる基礎科なんですけど、「まったくの素人です。イチから学びたいです」と書いたところに目を留めていただいたみたいで。

――ありのままに書いたのが逆に良かったと。

石谷:ほぼ演技経験がないから、取り残したものを全部拾いたい、と書いて。入所が決まってからは、群馬から東京に1年間、お金を貯めながら通いました。生活費も全部自分でまかなって。

――全部自分で…?

石谷:そうですね。多い時はバイトを3つ掛け持ちして。

――すごいですね。どんなアルバイトを?

石谷:料亭のボーイ、ファミレスのホールやキッチン、あとは総菜屋さんとか。

――食べ物屋さんばかりですね。

石谷:そうです。食事が出ることが多いじゃないですか。食費にかけるお金があまりなかったので。年明けなんかは本当にお金がなくて、河原に野ネギとかを探しに行ってましたね。

――野ネギ…ってなんですか?

石谷:自然の中に生えてるんです。つくしとか、たんぽぽとか。

――ああ、たしかに生えてます。

石谷:あれ、食べられるんです。もともと宮崎でワラビとか三つ葉のクローバーを食べられることを知っていたので、河原で何かないかな…と探したら意外とあって(笑)。

――調理も自分で?

石谷:つくりはちゃんとアクを抜いて。たんぽぽは根っこまで食べられるんですよ。味噌和えとか、味噌汁に入れたりとか。

――平成のお話ですよね… すごい生命力を感じます(笑)。それでは、お仕事の話に入りますが、声優としてアニメの初レギュラー出演は「selector infected WIXOSS」の小湊歩役ですね。

石谷:主人公のお兄ちゃん役です。最初は演技の方向性がフラフラしていたので、出番がない時もアフレコ現場を見学させてもらったのを覚えてます。その結果、柔らかくてあったかい感じを追求したいなと思うようになって。現場も本当にあったかい作品でした。佐藤卓哉監督は、今でも別の現場で一緒になると「久しぶり!」って声を掛けてくださるんですよ。

――最近だと「響け! ユーフォニアム」の塚本秀一役が印象に残っています。2015年に1期、2016年に2期と劇場版がありました。

石谷:劇場版(2016年)って、じつは全部録り直したんですよ。演技のアプローチが変わってくるから、ということで。それまで、同じ芝居を2度する機会ってほぼなかったので、自分の成長を見せることにプレッシャーがありました。1期から2期にかけては、自分の芝居の質が変わっていく実感はありましたけど…。

――変われた実感はあったんですね。

石谷:1期はかたい芝居だったと思うんですけど、やっぱり長く続けているキャラクターなので、馴染んできたという感覚はあって。レギュラーじゃないとできない経験なので、この作品では1役を演じきるということを学びました。

――そして、現在放送中の「AKIBA’S TRIP -THE ANIMATION-」では、伝木凱タモツ役を。

石谷:僕の声ってそこまでの特徴はないと思っていて、その代わりいろんなところに溶けこめると思うんです。でも、タモツは、馴染むだけじゃなくて前に出ないといけない。今までは、自然で、観てくださる方の耳に違和感がないお芝居にこだわっていたけど、この役では一番前に立って目立っていかないと。それとは別に、傍にいても主役をしっかり立てられるようになりたいんですけどね。

――傍にいて、個性を出しつつ主役を立てられる先輩方は多いですよね。

石谷:そんな先輩方とも張り合えるように、いずれはなりたいです。そうならないと生き残っていけないとも思いますし。自分にこういった機会を与えてくれた方々にそんなところを見せたいし、そのために、今は自分の全力をぶつけることしかできないなと思っています。まだまだですけど、少しずつやっていこうと。

――真面目さがひしひしとが伝わってきます…!

石谷:(笑)。真面目かもしれませんね。

――お芝居の現場ではもちろん、自宅でもいろいろ勉強されているんじゃないですか?

石谷:外画(外国の映画)を観たり、他の方のお芝居を観たりします。同世代の知り合いが多いので、みんなと集まって意見をぶつけ合うのもけっこう好きなんですよ。

――どんな方々と?

石谷:仲村宗悟くんとか、中島ヨシキくんとか、神尾晋一郎さんとか、古川慎さんとか。

――ほんとに熱い方々が集まっていますね(笑)。

石谷:僕が嘘がつけないというか、本音でしか語れないほうなので、みなさんバンと胸を開いて話せる方々ですね(笑)。お酒は飲まないんですけど、飲み会で意見をぶつけ合うのは好きです。

――ところで、“特徴のない声”ということでしたが、こうしてお話を伺っていると十分特徴があるように思えるんですよね。声優としてトレーニングをすると、声自体が変わると聞いたことがあります。

石谷:自分の場合は変わったというか、1年半くらい前は、今より10kgくらい太ってたんですよ。でも、顔出しのお仕事も含めてがんばっていきたいという想いで、食事の糖質制限をしながら水泳に通い始めたんです。半年くらいで10kg痩せて、一時期は体脂肪が1桁までいったので、みんなから「アスリートか!」と突っ込まれてました(笑)。今でも週に1度くらいは、1時間かけて2kmくらい泳ぎます。

――半年で10kg減はすごいですよ。

石谷:本当は室伏広治さんみたいな体格になりたいんですよ、理想的には(笑)。でも、声優として活動していくには今くらいがちょうどいいみたいです(笑)。

――では、普段リラックスしたい時にすることはありますか?

石谷:やっぱり運動することがストレス解消になります。あとはお香を焚いたり散歩をしたり。それと、お風呂に入浴剤を入れて浸かったりとか。冬は1時間くらい、水を片手に、音楽をかけたり本を読んだりしながら。

――本は何を読むんですか。

石谷:ミステリーとかライトノベルとか、ジャンルは選ばないですね。ケータイ小説も読むし、かと思えば心理学の本も読むし…。トークで構えちゃうほうなので、どうしたら自分らしくできるのか、そのヒントがあれば探したいと思って。

――音楽はどんなものを?

石谷:ゲーム音楽とかクラシックとか。バイオリンやピアノが好きなので。最近トロンボーンをやってるんですけど…。

――「秀一が週一トロンボーンを練習してみた」ですね。

石谷:そうです! 「響け!ユーフォニアム」の企画動画です。

――では最後に、これから声優として挑戦したいことを教えてもらえますか?

石谷:僕が小さい時にテレビで声を聴いていた方々と、肩を並べてお芝居するようになりたいです。メインキャストとしてしっかりと掛け合えるくらいの力量を持てるようになりたいです。それから、応援してくださる方、期待してくださる方からいただいた元気をそのまま返せるように、精進していきたいなと思っています。

【声優図鑑】石谷春貴さんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

――ありがとうございました!

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

石谷春貴

石谷春貴(プロ・フィット)http://www.pro-fit.co.jp/talent_ishiya.html

石谷春貴 Twitter https://twitter.com/haruki_yokkora

◆撮影協力
BC WORLD STUDIO

取材・文=麻布たぬ、撮影=山本哲也、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト