伊藤 |
つくり手としては、けっこうヒヤヒヤしながらだったかな、と。 |
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それは例えばどのあたりですか? |
伊藤 |
まず、本をおさめるブックポーチの内側の部分ですが、普通はヘリをとってまとめる(縁にぐるっとパイピングを施す)んです。でも、これだと邪魔だからなんとかならないかってBIBLIOPHILICさんから相談されて。そうすると、やっぱり本来のやり方のほうが断然つくりやすいので、どうコストをおさえつつ、使い勝手をよくするかっていうのがあって。 |
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なるべく余計な手間をかけずに? |
伊藤 |
そうですね。結局ここ(本の背があたる部分)をあけておいて、袋縫いをしてひっくりかえして最後ここで閉じるっていうやり方になったんですけど。あんまりそういうことって職人さん達はやらないんですよ。でもこれしか縫い方がないんで。 |
今泉 |
このカタチで要望をすべて入れようとすると、このやり方しかないってことですよね。 |
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このつくりのおかげで、むしろ本の背もおさまりやすくフィット感があるような気もしますけどね。 |
今泉 |
「本がそこに着地する」という感じがしなくもないですけど、でも職人さんからみたら「なんで?」みたいな。 |
伊藤 |
そうです。「なんでこんなことしてるの?」って。職人さん達は、あくまで“理にかなったつくり方”を優先して考えるんですよ。これだったら普通「パーツを作っておいて、最後ぐるっと縫って終わりでしょ」って。 |
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私は最初のサンプルから比べて、パイピングがなくなって、スッキリしてよかったなとしか思わなかったんですけど、職人さんに言わせてみると……。 |
伊藤 |
違和感があるんですね(笑)。でもその折り合いをつけるのが、我々メーカーの仕事じゃないですか。なので「いや、これはこうやって使われるものだからこうしたほうがいいんですよ」と説得しつつ、つくってもらうわけですね。 |
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そもそも、この設計はどなたがお考えになったんですか? |
伊藤 |
それは、サンプルを専門につくる職人がいるんです。「どうしてもヘリをなくしたい」って話をして「じゃあどういうふうにまとめよう?」と。で「結局これしかないよね」ってことで、それに合わせてパターンをつくって各職人さんにお願いするんですけど。そのときに「え、なんでこんなことしてるの?」となるわけなんです。 |
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なるほど……。 |