ダ・ヴィンチ×BIBLIOPHILIC BOOK POUCH

こんなふうにつくりました

  • その1 「女性がもったら」というところから入った
  • その2 つくり手としてはヒヤヒヤの連続でした
  • その3 ほんの数ミリの差だけれど
  • その4 廃番につぐ廃番
  • その5 生地のあつかいに四苦八苦
  • その6 バッグメーカーでブックカバーをつくるということ

その1 「女性がもったら」というところから入った

──今回、ダ・ヴィンチとBIBLIOPHILICで読書用品を開発するにあたってまず最初にしたことは、本好きなダ・ヴィンチの読者にアンケートを取ることでした。
その回答者の84%は女性。そして満足度の低い読書用品の1位が「ブックカバー」だったことや、本が折れたり汚れたりして困るという意見が多かったことなどから、それを解決してくれるような女性むけのブックカバーをつくろうという流れになりました(アンケート結果は、2013年8月号に掲載しています)。
編集 最初のアイデア出しのときは、私物のポーチ(生成りのリネン素材にワンポイント刺繍入り)を見せながら、「こんな感じのリネン素材がいい」という話をしたんですよね。アンケートで「ベタベタして嫌」とか、けっこう手ざわりを気にする声があったので。
今泉 そうですね。(メンバー全員が男性の)BIBLIOPHILICのミーティングではあんまり出てこない素材でしたね。
編集 このときから、刺繍の話も。
今泉 ありましたね。
編集 あと、「中綿を入れる」っていうのもたしかこの時点で出てましたね。これは、BIBLIOPHILICさんにご提案いただいて。
今泉 中綿を入れて、ちょっとフワフワした感じがあったほうがイイと。本当に肌ざわり、手ざわり。そういうのが第一で、女性が持ったらっていうところから入っていったので。名前も、いちばん最初の提案で「ブックポーチ」っていうのが出てきて。
編集 そうでした。みんなで「それイイね!」って盛り上がって。
今泉 これは「ブックサック」(BIBLIOPHILICの人気商品で、リュックサックをそのまま小型にしたようなデザインのブックカバー)からきているところがあるかもしれません。
編集 なるほど。確かに、ざっくりとブックサックの女性版ってイメージは、みんなの中にあったかも。
今泉 カタチも、それに近いものがありましたしね。
編集 ラウンドジップ仕様で、本が汚れたりするのをふせぐ、という。そして、2回めのミーティングで鏡面仕様のしおりの話が出ました。
今泉 それは、うちの社長が「手鏡とかあったほうがいいんじゃないの? 女性は」って言い出して。
編集 そうですね。それで「だったらしおり型にしちゃえば」という話になって、これもみんなが同意して。これで「手ざわりのよいポーチ型のブックカバーで、鏡面仕様のしおり付き」っていう、おおよそ全体のプランがかたまった感じになりましたね。

その2 つくり手としてはヒヤヒヤの連続でした

──2度のミーティングの内容を反映させ最初にできあがってきたサンプルは、基本的な構造は同じでも、現在のブックポーチの姿とは似ても似つかぬものでした。
伊藤 つくり手としては、けっこうヒヤヒヤしながらだったかな、と。
編集 それは例えばどのあたりですか?
伊藤 まず、本をおさめるブックポーチの内側の部分ですが、普通はヘリをとってまとめる(縁にぐるっとパイピングを施す)んです。でも、これだと邪魔だからなんとかならないかってBIBLIOPHILICさんから相談されて。そうすると、やっぱり本来のやり方のほうが断然つくりやすいので、どうコストをおさえつつ、使い勝手をよくするかっていうのがあって。
編集 なるべく余計な手間をかけずに?
伊藤 そうですね。結局ここ(本の背があたる部分)をあけておいて、袋縫いをしてひっくりかえして最後ここで閉じるっていうやり方になったんですけど。あんまりそういうことって職人さん達はやらないんですよ。でもこれしか縫い方がないんで。
今泉 このカタチで要望をすべて入れようとすると、このやり方しかないってことですよね。
編集 このつくりのおかげで、むしろ本の背もおさまりやすくフィット感があるような気もしますけどね。
今泉 「本がそこに着地する」という感じがしなくもないですけど、でも職人さんからみたら「なんで?」みたいな。
伊藤 そうです。「なんでこんなことしてるの?」って。職人さん達は、あくまで“理にかなったつくり方”を優先して考えるんですよ。これだったら普通「パーツを作っておいて、最後ぐるっと縫って終わりでしょ」って。
編集 私は最初のサンプルから比べて、パイピングがなくなって、スッキリしてよかったなとしか思わなかったんですけど、職人さんに言わせてみると……。
伊藤 違和感があるんですね(笑)。でもその折り合いをつけるのが、我々メーカーの仕事じゃないですか。なので「いや、これはこうやって使われるものだからこうしたほうがいいんですよ」と説得しつつ、つくってもらうわけですね。
編集 そもそも、この設計はどなたがお考えになったんですか?
伊藤 それは、サンプルを専門につくる職人がいるんです。「どうしてもヘリをなくしたい」って話をして「じゃあどういうふうにまとめよう?」と。で「結局これしかないよね」ってことで、それに合わせてパターンをつくって各職人さんにお願いするんですけど。そのときに「え、なんでこんなことしてるの?」となるわけなんです。
編集 なるほど……。
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