アラサーはもう若くない!? 青年誌で描かれる「結婚できない“婚渇”女」の生々しさ

マンガ

公開日:2016/2/13


『婚渇女子』(1巻)(小林拓巳/少年画報社)

 アラサー女子の皆様は「20代前半は余裕でこなせたことが、20代後半になって、徐々に苦しくなっていくぞ……」と、悲しい思いをしたことはないだろうか? この記事を執筆している筆者はアラサー女子なのだが、20代前半と後半の、心と身体と境遇の恐るべき変貌ぶりに、日々呆然としている。

 ゆるやかに下降していく気力と体力。おまけに、肌質が変化していくため、お肌のトラブルだって絶えない。露出の多い服装は、残念ながら似合わなくなる。疲れがたまりやすく、休日は死んだように寝ないと身体がもたない……! この残念な変化に中々ついていけず苦しいのだが、さらにもう一つ、追い討ちをかけてくる大きな壁がある。そう、それは言わずもがな「結婚」である。未婚のアラサー女子に、世間はそう甘くはないのだ。

 小林拓巳の『婚渇女子』(少年画報社)は、未婚のアラサー女子がぶつかる「結婚」という名の壁を、見事に描ききっているマンガである。

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 このマンガの主人公は、エロマンガ家の小夏と、ヤリ手ファッションエディターの芽衣子。共に29歳で、二人とも結婚にはまだ興味がない。売れないマンガ家を生業としている小夏は、家賃が払えず芽衣子の家に居候しているのだが、まず、何としてでも連載を取ることを目標としているため、結婚は二の次状態。また、美人でスタイルも良く、仕事も順調で、自信に満ちあふれているエディターの芽衣子も、今を謳歌するのに忙しく、結婚なんて考えられない日々を送っている。

 しかし、そんな二人の前にも、ある日突然「結婚」という壁は立ちはだかるのだ……!

 マンガ家の小夏は、長年の努力の甲斐もあり、編集者に「連載が決まるかもしれない」と言われて期待していた。だが、「オシャレも恋愛もしたい」とのたまう可愛らしい女子大生の新人マンガ家に、その枠をあっさり奪われてしまう。新人マンガ家に、完全に敗北してしまった小夏……。連載がダメになり、芽衣子にも「出てけ」と言われた彼女は、結婚しかないと思い込み、母の勧めでお見合いをすることになる。

 また、本命の彼氏がいるにもかかわらず、取材先で出会ったイケメンともすんなり寝てしまう芽衣子。彼女は、突然彼氏にフラれてしまう。プロポーズを何度もはぐらかした上、浮気がばれてしまったのが原因だった。

「正直ブスの気持ちが解らない」「結婚なんていつでもできるし」と豪語していた芽衣子だが、その後、仕事で潜入した婚活パーティでも、狙っていた男性を、年下の編集者にあっさりとられてしまうのだ。おまけに、誰からも指名されず、公の場で屈辱的な思いをするハメになる……。

 三十路を前にしてようやく、自分たちはそれほど若くはないことに気づき始めた二人が、人生の別れ道に遭遇し、ジタバタともがく様子が描かれている。

 ちなみに本書、掲載されているのは青年誌である『ヤングキング』。そのため、少女マンガとはまた違った迫力で「婚渇」の世界が表現されている。特に、芽衣子のお色気シーンや、結婚式をする友人をバカにしていた二人の、女のプライドがズタズタにされるシーンは、開いた口がふさがらなくなってしまうほど。

 突然目の前に立ちはだかった「結婚」という名の壁を、彼女たちは一体どうやって壊していくのだろうか。年齢を重ねることにいささかの恐怖を覚える女子たちを、励ましてくれる展開であることを祈りつつ、期待しながら続きを待つことにしよう。

文=さゆ