ADHDやアスペルガーじゃない? 5人に1人はHSC(ひといちばい敏感な子)。その特徴とは?

出産・子育て

公開日:2016/3/29

 いきなりだが、次の項目にいくつ、わが子が当てはまるだろうか。

□ すぐにびっくりする
□ 服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
□ いつもと違う臭いにすぐ気づく
□ 痛みに敏感である
□ 辛い食べ物が極端に苦手
□ うるさい場所を嫌がる

 当てはまる項目が多かったり、少なくても度合いが強かったりすれば、その子は「HSC(Highly Sensitive Child=ひといちばい敏感な子)」かもしれないと提唱するのは、『ひといちばい敏感な子』(エレイン・N・アーロン:著、明橋大二:翻訳/1万年堂出版)。日本では昨年2月に発売されたHSCについての翻訳本で、発売から1年以上が経った今でも売れ続け、Amazonの「売れ筋ランキング(生徒指導)」でトップ(2016年3月23日時点)となっている。

「敏感な子」の存在は、日本ではあまり知られていない。本書によると、冒頭のような項目に当てはまる子どもがいた場合、たいていは「臆病」「感覚的な刺激を受けやすい」「神経質」「内向的」「恥ずかしがり屋」などと表現される。ときにはADD/ADHD(注意欠陥・多動性障害)やアスペルガー症候群と誤解されることすらある。

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 臨床深層心理学博士で、1991年からHSCを研究してきた著者によると、「敏感な子」は「臆病」なわけでも「感覚的な刺激を受けやすい」わけでもない。「情報を徹底的に処理してから行動する」という神経システムが生まれつき備わっているため、感覚器から入ってくる刺激が増幅され、身体的にすぐ圧倒されてしまう。特に「初めて体験するもの」や「大きな変化」に弱い。このため、細かいことをじっくりと観察し、大きな刺激を避けようとする。また、精神的にも圧倒されやすく、他の子が傷ついているのを見ると、自分もそれ以上に傷ついてしまう傾向がある。子どもの15~20%に見られ、男女で割合は同じ。人種による差はないという。世界のじつに5人に1人がHSCであることから、少数派だが「異常な子どもたち」ではないと本書は考える。

 ちなみに、発達障がいと誤解されることがあると前述したが、たとえばHSCとADHDを比べると表面上は非常によく似ており、多くのHSCがADHDと誤診されているという専門家もいるらしい。例を挙げると、「気が散ってしまいやすい」という共通した気質。ADHDは意思決定をしたり、集中したり、結果を考えたりするのに適切な機能が全般的に欠如しているので、気が散りやすい。一方で、HSCはさまざまな情報に刺激を受けてエネルギーをすぐに消耗するため、気が散りやすい。しかし、必要な場合は多大な精神的エネルギーを消費しつつも集中できるし、穏やかで慣れた環境にいるときはむしろ集中を得意とする。

 HSCの多くにとって、学校は地獄だという。自分がすぐに理解できても、わからない子どものために先生は繰り返し同じ説明をする。休み時間は、大きな声が飛び交う。自分やクラス全体に指示やときには罰が与えられ、そのメッセージの強さに押しつぶされそうになる。80%の非HSCの中で存在が浮き、孤立することがある。

 繊細なHSCを支えられるのは家族だ。まず子どもに、「敏感さ」自体はよいことでも悪いことでもなく、人がさまざまに持っている気質の一つであることを伝える。そして、家族の気質について話し合う。こうした「家族療法」がHSCの自己肯定感を養う。

 本書によると、昔から「敏感なタイプ」の人は、科学者やカウンセラー、医師、看護師、教師、芸術家などの職に就き、才能を発揮してきた。著者は、HSCの特性に人の進化上、何らかの意義があると考えると同時に、HSCの子どもを持つ保護者に「『他の子と違う』ことには複雑な気持ちになるかもしれないが、気質を理解してよい面を知り、わが子を育てることに喜びを感じてほしい」とエールを送っている。

文=ルートつつみ