イマドキの新入社員にどう接する? 上司が知るべき、新入社員の心を開く「10の鉄則」と「100の言葉がけ」指導方法

ビジネス

公開日:2016/5/31


『若手育成 10の鉄則 100の言葉がけ』(堀 裕嗣/小学館)

 5月も半ばを過ぎ、新人研修も終わっていよいよ新入社員が部署に配属されてくる頃だと思います。しかし新人を預かった上司の方々はご注意ください。毎年、新入社員の離職率が高いのが5月から6月にかけての今の時期なのです。しかしイマドキの若者にどう接すれば心を開いてもらえるのか? そんな悩みを抱く年長者の方々も多いのではないでしょうか。

若手育成 10の鉄則 100の言葉がけ』(堀 裕嗣/小学館)は、長年、学校教師として若手指導にあってきた著者による、指導者が肝に銘じておくべき「10の鉄則」と、イマドキの若者の成長を促す「100の言葉がけ」を活用した育成ノウハウを紹介しています。教育現場はもちろん、民間企業の指導担当者も使いたい言葉の数々が載っています。

 例えば、「10の鉄則」の1つには、こんなことが書かれています。

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「アラフォー以下は、自律より承認を求めている」

 40代以上の世代は、仕事ぶりを他人から見られると「監視されている」「もしかしたら自分は信用されていないのか」と不安に感じてしまいます。しかし40代以下の多くは見られていることで安心する傾向があるのだそうです。この違いには、教育が関係するといいます。いまの40代が教育を受けていた頃は社会の中で「自律」や「独立」を求められる時代でした。しかし80年代以降の教育改革により「個性」「自分」を尊重する教育を受けた若い世代は、他人によって「自分らしさ」を肯定してほしいと考えるのです。男性には「信頼しているよ」、女性には「一人にしないよ」というメッセージを送り、指導者が常に見守っている安心感を与えることが肝心だとしています。

「10の鉄則」では、こうした世代間のギャップや思い込みを戒め、若手と接する指導者の心構えを説いています。続く「100の言葉がけ」では、具体的な場面に沿った「言葉がけ」を紹介しています。

「世の中のミスは99%%が謝りゃ許されるもんだ」

 新人の仕事にミスはつきもの。本人も失敗を自覚して落ち込んでいる。そんな時に追い打ちをかけて叱りつけるよりも、笑って許すのが年長者の余裕です。著者によれば「怒るというのは麻薬みたいなもの」。怒鳴れば相手は萎縮し、一応言うことは聞くようになります。しかし怒るのは楽な手段だといいます。その新人を責めることよりも、その新人が見えていないものを提示することで本当の成長が促されると述べています。

「きっと5年後のお前はこう考えてるよ」

 入社前はそれなりに自信を持っていたのに、いざ仕事に臨んでみれば悩んだり、躓いたり、うまくいかない。自信喪失に陥って意欲を失ってしまった新人には、この言葉です。成長した数年後の自分を想像させてみましょう。「新人の時の苦労が今の自分を作っているな」「あの顧客のクレームが僕を育ててくれたな」「あれは結局、自分にとって必要な経験だったな」。そうした正確なビジョンを伝えられるのは、実際に同じ体験をした年長者だけです。

「おまえの自己実現なんて二の次なんだ」

 若者は誰でも夢や理想を抱いて就職してくるもの。しかし新人がいきなりやりたいことをやらせてもらえる職場は少ない。現実は厳しくて辛い下積みの連続です。「こんなことをするためにこの仕事についたわけじゃない」。そんな不満を抱いてしまうのもありがちです。そんな時にはこう諭すといいます。「仕事というのは自己実現のためにあるんじゃない。仕事がうまくいったとき、満足できる結果が得られたとき、その仕事の成功を通じて自己実現できる。そういう順番なんだ」。相手が間違いに無自覚な場合には厳しい言葉も使わなくてはなりません。

 一方、年長者の側に当てはまる言葉もあります。

「無駄が生活に潤いをもたらしている」

 若者に休日の予定を聞くと、ゲームをしたり、マンガを読んだり、音楽を聞いたりと、年長者にとっては意味のない無駄なことばかりやっていると思いがち。それよりも業務に関係する学習や資格取得のための勉強をしてほしいと考えるものですが、かくいう年長者の方も休日に一日中寝てしまったり、お酒を飲んだり、家族と旅行に行ったりと、意味のない無駄なことをしていませんか。でもこうした無駄が生活に潤いを与えて、仕事の活力に繋がっているのです。著者は「無駄を愉しめるようになったら一人前の社会人だ」とも言っています。

「ワーク・ライフ・バランス」という言葉もあります。何かと効率化、合理化という言葉を盾に無駄を省きたがる上司は、もしかしたらまだ社会人として半人前なのかも知れませんね。

「最近の若者は」と口にする前に、まず若者の気持ちに寄り添ってお互いの理解を深めてはいかがでしょうか。

文=愛咲優詩