父親を殺したのは、愛する婚約者だった……読み進めるたび浮かび上がる新たな謎に読む手が止まらない王宮復讐ロマンス・サスペンス【書評】

マンガ

PR 公開日:2026/2/27

この執愛は血より濃く
『この執愛は血より濃く』(MUGEN FACTORY:制作,NKW:原作・脚本/LINEマンガ)

 読めば読むほど、味わいが変わる。タイトルを見たときは、よくあるラブロマンスだと思っていたが、読み始めれば王宮を舞台にした復讐譚だと気づかされ、さらに読み進めるほど、ゾクゾクさせられるサスペンス要素と、神秘的なファンタジー要素にすっかり心を奪われてしまった。

 そんなコミックが『この執愛は血より濃く』(MUGEN FACTORY:制作,NKW:原作・脚本/LINEマンガ)。謎が謎を呼ぶミステリアスな世界観に引き込まれ、続きが気になってたまらなくなる王宮復讐ロマンス・サスペンスだ。

物語は究極の選択から始まる。処刑されるか、父親の首を落とした男の妻となるか——

 舞台は、小国・ベラウ王国。病弱な王女・ジュノーは、国王である父親に大切に育てられてきた箱入り娘だ。婚約者である隣国の第二王子・レイフとの結婚式も目前、幸せの絶頂である。だが、そんな彼女の幸せな暮らしは瞬く間に終わりを告げた。ある時、レイフは突然、自国の軍とともにジュノーの国を攻め落とし、ジュノーの前で彼女の父親を殺害したのだ。

「俺は今この瞬間、お前との婚約を破棄する」「お前自身で選べ、この場で処刑されるか、父親の首を落とした男の妻となるか」——選択を迫られたジュノーは、国民のため、そして、復讐のため、憎き男の妻となることを決意する。

 悲劇的な冒頭を読めば、ジュノーの運命から目が離せなくなる。ジュノーと婚約していたレイフは、ほどなく彼女の国の王となることが約束された身だ。それにもかかわらず、どうしてわざわざ彼女の父親を殺す必要があったのか。ジュノーは「最初から騙されていたのだ」と理解するが、読み進めれば読み進めるほど、疑問を感じずにはいられない。たとえば、レイフとジュノーが、新王と王妃として民衆の前に顔を出せば、彼らは「ベラウの新王万歳!」とレイフを名君のように讃える。前王を殺した男をどうして民衆は認めるのだろう。だが、箱入り娘として育てられた彼女は、外の世界のことをまるで知らない。いや、自室以外の、城の中のことさえ分からない。城の外へ逃げようと、城内を彷徨い、ある部屋に迷い込んだ彼女が目にしたものは……。いまこの国で何が起きているのか。私たちは、何も知らないジュノーと同じ視点で、胸騒ぎを抱えたまま真相を追うことになる。

どうして優しかったはずの婚約者は変貌してしまったのか。

「王妃となった今 ベラウの命運はお前の肩にかかっていることを忘れるな」

 どうして優しかったはずの婚約者は変貌してしまったのだろう。レイフのジュノーに対する言動は極めて露悪的で、目にするたびに胸が苦しい。かつての優しさなど、どこにもないように見える。だが、違和感はつきない。レイフはジュノーに対して傲慢な態度をとりながらも、幾度となく彼女のことを救う。そして、彼の瞳の奥には、ジュノーへの愛情があるように感じられる場面さえもある。

 苦難続きのジュノーの姿を目にすれば、「どうか彼女に幸せが訪れてほしい」と祈らずにはいられない。先の展開はまったく読めず、胸の奥がざわつくような緊張が途切れない。どんな真実が隠されているのかと鼓動はどんどん速くなる。

 そして、ふたりの関係が変わる瞬間を、私たちは待たずにはいられない。そんな緊迫感をぜひあなたも体験してみてほしい。連載を追えば、この不思議な王宮から抜け出せなくなってしまうに違いない。

文=アサトーミナミ

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