将棋で人類を救う!? 種族間戦争に将棋をかけ合わせた、前代未聞の異世界転生ファンタジー【書評】
PR 公開日:2026/3/29

『異世界将棋無双~将棋で戦争する世界で王子に転生した僕が弱小人類を救います~
』(おちR/講談社)は、将棋が生きがいの主人公が将棋戦争の勃発する世界の王子に転生する、異色の異世界転生ファンタジーである。
人生に失敗して何もかもを失った主人公は、将棋だけが取り柄だった。絶望と共に自らの命を絶ったはずが、異世界の王子・ユーリとして転生する。その世界は、神の力によって魔法や武力で戦うことが封じられ、すべての勝敗を将棋で決する世界。エルフや龍など多様な種族が共存しているが、人類は将棋において最弱の種族として略奪対象となっていた。転生前の将棋の才能を持つユーリは、王子として人類の命運を懸けた将棋戦争に巻き込まれていく……。
■「将棋×王道ファンタジー」意外な掛け算が生む唯一無二の世界観
ベースとなる世界観は、まさに王道ファンタジーである。現実世界で苦難を強いられていた主人公が異世界という特殊な環境下で力を発揮し、“無双”するという筋書きも珍しいものではない。ただ、そこに将棋をかけ合わせているところが本作の最大の魅力であり、ユニークネスである。
対戦相手はどこでも魔法で将棋盤を召喚することができ、騎士たちは日々将棋のトレーニングをしている。洋風のファンタジックな世界観と将棋盤のギャップがユニークで、冒頭から物語に引き込まれる。対戦相手の将棋力のステータスが可視化される設定も面白い。これからどんどんステータスの高い相手に巡り合っていくことを想像すると、ページをめくる手が止まらない。
対戦中の描写も魅力的だ。ただ盤面の解説をするのではなく、実際にキャラクターが攻防を繰り広げるシチュエーションも重ねて描かれているので、将棋を知らない読者でも手に汗握る展開を楽しめる。

■「好きなことで活躍したい」という想いの救済
異世界転生ジャンルの作品として楽しむのはもちろんのこと、主人公・ユーリにも感情移入できる。転生前の主人公は真面目だった。ただ将棋好きであることを否定され、就職先で要領が悪く、うまくいかなかっただけなのだ。
そんな主人公が、転生先では将棋が好きでたまらないことを全肯定される。今までやってきたことが報われたことに喜ぶシーンは感動した。好きなことを認められる世界なら、誰もが活躍できるというメッセージも受け取れる。
作品内では、将棋の魅力を「年齢も人種も性別も関係なく、純粋な知を競う、思考の殴り合い」という言葉で表している。ルールを知らなくても、この言葉だけで将棋という競技に秘められた熱量が伝わるのではないだろうか。

多様な種族が集うファンタジーの世界に、この競技を組み合わせたところが素晴らしい。それぞれの思考、性格によって将棋の盤面は変わる。ユーリはどんな強敵と今後戦っていくのか、そして人類はユーリの将棋の才によって、再び豊かな暮らしを取り戻せるのか。続きを期待して待ちたい。
文=宿木雪樹
