いとこのお姉さんが入れるカルピス、僕のだけ甘い…。年上のいとこと中学生の少年のちょっと危ない関係を描いた『僕のいとこのおねえさん』【書評】
PR 公開日:2026/4/8

遠い昔の思い出は、どうしても美化されがちだ。あの頃はすごく広大で刺激的だと思った場所が、キラキラと輝いていて魅力的だった人が、少し大きくなってから行ったり会ったりしてみると、途端に「あれ、こんなもんだったっけ?」と拍子抜けしてしまったりする。少しの寂しさとともに、気持ちが萎えていく。あるあるだ。でも、例えばその当時の思い出が美しいままで目の前に現れたら、自分はどんな気持ちになるんだろう。
春野ユキトが描く漫画『僕のいとこのおねえさん』(講談社)は、主人公の少年朝陽といとこの小夜子の曖昧で危うい関係を描いた作品だ。

朝陽は中学生を卒業するまでの1年間、田舎にある母の実家の離れで暮らすことになる。都会から田舎へと引っ越して1週間経った頃、実家でおじさんとおばさんと談笑していると、突然いとこの小夜子が実家に帰ってきた。東京の役所で働いていた小夜子は、退職して地元の役所に転職したのだという。

そこから、実家に小夜子の家族、離れに朝陽の家族が暮らす生活が始まった。
朝陽が小夜子に会うのは4年ぶりである。美しい小夜子に対して、幼い頃から朝陽は特別な感情を抱いていた。小夜子が作るカルピスは、いつも他のカルピスよりも甘く感じるのだ。でも、それを親に話すと「家で作るのと同じだよ」と言われてしまう。気のせいだったのか、もしかしたら魔法を使っていたのか。朝陽にとって特別な思い出だった。

4年ぶりに会う小夜子は、相変わらず美しく、朝陽の目を奪った。マイペースで、どこかミステリアスな彼女は、久しぶりに朝陽にカルピスを作ってくれるという。果たして彼女の作るカルピスは他のやつより甘いのか、それとも単なる気のせいだったのか、意を決して作ってもらったカルピスに口をつける朝陽に、小夜子は驚くようなことを教えてくれたのだった。


小夜子が作ったカルピスは、4年経った今も甘かった。気のせいでも、魔法でもない。彼女は朝陽のために特別に甘くしてあげていたのだ。そして、今も変わらず、甘く作ってくれた。それは何を意味するんだろう。小夜子の意味深な言動は、常に朝陽の心を惑わす。
昔と変わらない笑顔で接してくれる小夜子に嬉しくなる一方で、ふとした瞬間に小夜子が立派な大人であることを実感して朝陽は激しく動揺する。

大きな胸とその谷間を見た瞬間の朝陽の表情はひどく生々しい。そこには、それまでの天真爛漫な小夜子に頬を染める幼き朝陽はいない。明らかに何か異質なものに触れたような、なんだか居心地の悪い感じがある。小夜子の胸を見た瞬間の気持ちを言語化できないまま、朝陽は彼女に対して穏やかな気持ちではいられない日々が続く。思春期真っ只中の朝陽にとって、小夜子はあまりにも刺激が強すぎる存在だろう。

朝陽の気持ちは手に取るようにわかる一方で、小夜子の気持ちは読者である私たちにもつかみきれないところがある。思わせぶりな発言で朝陽を惑わす小夜子の本心は一体どこにあるのだろう。いとこ同士の恋愛は法的には禁止されていないものの、あまり一般的ではない。やはり親族である以上、どこかで恋愛関係はタブーに感じる人も多いだろう。この作品の中に漂う雰囲気も、どこか「いけない恋愛」に足を踏み入れてしまいそうな、そんな危うさがずっとある。一線を越えそうで越えない、そんな二人のじりじりとしたやり取りが不思議とクセになってくる作品だ。
文=園田もなか
