「本番前はいつも吐きそうだし、逃げ出したくてたまらない」舞台『カッコーの巣の上で』に対する思いを聞いた【坂東龍汰 インタビュー】

ダ・ヴィンチ 今月号のコンテンツから

公開日:2026/5/28

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年6月号からの転載です。

 映画史にも演劇史にも名を刻む『カッコーの巣の上で』。刑務所での強制労働を逃れるため精神異常を装うマクマーフィーという男が、精神病院に入院する患者たちの心に光を差し込んでいく。坂東さんは患者のひとり、吃音をもつ青年ビリーを演じる。

「はじめて映画を観たのは小学生のころ。やがてビリーが迎えることになる結末の衝撃ばかりが印象に残っていました。でも、今回のお話をいただいて改めて見返してみたら、対立するだけと思っていたマクマーフィーと看護婦長のあいだに恋愛にも似た心の交流があったり、マクマーフィーが患者たちを連れて病院を抜け出すシーンは青春劇のような爽快感があったり、決して絶望を描くだけの物語ではなかった。とある女性に恋をするビリーのまなざしを含めて、愛くるしさにも満ちた物語なんだと気づかされました」

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 年に一度は舞台に立ちたい、と以前から語っていた坂東さん。今年の出演は、『危険なワルツ』に続いてはやくも2作目。

「本番前はいつも吐きそうだし、逃げ出したくてたまらない。でも、得意なことばかりやっていても成長しないし、何より年を重ねても役者として生きていきたいなら、舞台に立ち続けなきゃいけないと思うんです。不安を抱えながら向き合い続ける姿にこそ美しさは宿るし、表現者として豊かにもなっていけるんじゃないかなって。不思議なことに、自信がないときほどお客さんの反応がよかったりもする。その体温の違いを味わうのもおもしろいんですよね」

 その、舞台上でしか味わえない感覚こそが、役を育ててくれるのだという。

「向き合う相手のお芝居によって、僕自身の反応も変わっていく。柔軟性を失わないためにも、頭でっかちに役を作り込まないようにしています。曲げられない性格だからこそ、必要なときに曲がれるようにしておきたい。ただ、吃音のある役ははじめてだから、ビリーのような人が何を見て、聴いて、感じて生きているのかは学んでから臨みたいなと思っています。でもきっと、ビリーってこういう人なんだってわかるのは、本番が始まってからだと思うんです。松尾スズキさんの演出、それから間宮祥太朗さんをはじめとする共演者との化学反応で、どんな芝居が引き出されるのか、僕自身も今から楽しみです」

取材・文:立花もも 写真:booro

ヘアメイク:後藤 泰(OLTA) スタイリング:李 靖華 衣装協力:ジャケット12万1000円(SARTO)、その他スタイリスト私物

ばんどう・りょうた●1997年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。北海道育ち。シュタイナー教育の学校で演劇に触れ、役者の道に。出演作にドラマ『ライオンの隠れ家』、映画『爆弾』など多数。アニメ映画『ふれる。』、今年公開予定のアニメ映画『我々は宇宙人』(第79回カンヌ国際映画祭監督週間部門正式出品)では主演声優をつとめる。5月公開映画『未来』、6月公開映画『黒牢城』に出演予定。

舞台『カッコーの巣の上で
原作:ケン・キージー 脚色:デール・ワッサーマン 翻訳:髙田曜子 演出:松尾スズキ 出演:間宮祥太朗、坂東龍汰、近藤公園/皆川猿時、江口のりこ ほか 上演:6月7日(日)より東京・PARCO劇場ほか、愛媛、大阪、北九州、仙台にて

原作は1962年に発表された同名小説。75年にジャック・ニコルソン主演で映画化され、興行収入1億ドルを突破。舞台版は63年に初上演、2001年の再演でトニー賞リバイバル作品賞を受賞した。主人公は、刑務所の強制労働から逃れるため精神異常を装ったマクマーフィー(間宮祥太朗)。鑑定のためオレゴン州立精神病院に収監された彼は、ラチェッド看護婦長(江口のりこ)のもと徹底的に管理される生活に嫌気がさし、たびたび患者たちを焚きつけ、問題を起こす。その自由奔放な明るさは患者たちの心を少しずつ溶かし、生きることの希望を取り戻させていく。だが、秩序が乱れることを嫌う婦長との対立はますます激しくなっていき……。

ダ・ヴィンチ 2026年6月号 [雑誌]

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