累計250万部『久保さんは僕を許さない』の雪森寧々最新作!気持ちに名前がつくまでの甘酸っぱい時間にもだえる『おさななななじみ』【書評】
PR 公開日:2026/8/19

小さい頃は親しい間柄だった――でも今はそうでもない。あの子と自分の関係は幼馴染みなのだろうか。
TVアニメ化もされた累計250万部突破(※電子版含む)の“スイートコメディ”『久保さんは僕を許さない』(集英社)を描いた雪森寧々の最新作が『おさななななじみ』(集英社)だ。コミックスには重版がかかり「次にくるマンガ大賞2026」にもノミネートされた話題作で、読んでいて頬がゆるむスイートさも健在である。
本作には“幼馴染み”ピュアラブコメ”というキャッチコピーが付けられている。高校生・百瀬優一のクラスには、小学校、中学校が同じだった藤野澄(ふじの すみ)がいた。小さい頃は「ゆうくん」「すみ」と呼び合うような親しい間柄であったが、二人は成長するにつれて同じ学校にいても絡むことは少なくなり、今や同じクラスでもほとんど話さないでいた。

優一は距離ができている彼女との関係を、単なる幼馴染みと呼ぶのにしっくりきていなかった。家族でもなく、友達以上ではあるが恋人でもない。まだ名前のない関係なのだ。
そんなある日、優一の母が澄と偶然出会ったことから“すみ”が久しぶりに百瀬家へ遊びにくることになった。物語はここから動き出す。
■「昔みたいにゆうくんって呼んでいい?」幼馴染み関係の再構築、そして――
優一がどう思おうと、彼と澄はまごうかたなき幼馴染みではある。ただ、いわゆる幼馴染みキャラは必要以上に距離が近かったり、周囲にも冷やかされるような仲だったりするが、彼らはそうではない。昔は、二人はいつも一緒にいた。子どもの頃のアルバムは彼らの写真だらけだ。しかし今は「百瀬くん」「藤野さん」と苗字呼びでたまに声を交わす程度である。
二人は、関係をどうしたいのだろうか。
百瀬家へ久しぶりに来た澄はこう言う「昔みたいにゆうくんって呼んでいい?」。

結局、翌日以降は苗字呼びに戻るのだが、その日から彼女は数年間なかった距離で絡んでくるようになる。優一は澄とメッセージアプリでつながろうと言われ、二人で一緒に帰ったり、風邪を引いた彼女のお見舞いに行ったり、一人暮らしをしている澄の家で“お泊まり会”もするのだ(優一の妹と一緒ではあるが)。
一方で優一は澄が家に来る前から彼女のことを目で追うようになっていた。彼女は目立っているわけでもクラスで人気の女子でもない。幼馴染みだから、という意識で見ていたわけでもない。ただ気になっていた。
家に来た時、自分もあだ名呼びをすると澄に言う優一だが、その時は結局呼べなかった。それからも頑張らないと呼ぶことはできない。なお、澄はことあるごとに「ゆうくん」と口にする(気が抜けた時と彼女は言う)。
二人は小さい頃のノリ、つまり幼馴染みに戻ったようだ。主に澄の努力によって。マイナスになっていた関係値はリセットされ、ゼロになった。ではそこからプラスになった時、二人の関係はどうなるのか。その予感が見える4話までぜひ一気に読んでみてほしい。

■幼馴染みチーム“なななな”再結集!二人の気持ちに名前は付くのか?
小学生の時の優と澄には他に二人幼馴染みがおり、4人は“おさななじみ”をもじり「なななな」というチーム名でつるんでいた。その「なななな」だった白鳥絵梨花、寿一途(ことぶき いちず)もまた、優たちと同じクラスであった。すっかり陽キャなギャルになっていた絵梨花は、最近は優一には絡んできていなかった。ただ彼女は一途と、そして澄とも付き合いは続いていたようだ。そんな絵梨花と澄の家の前で鉢合わせる優一。その日から“なななな”が復活する。こうして4人もまた幼馴染みの関係に戻るのだ。

高校生になって関係が復活した彼らのエピソードは、ただただ楽しい。澄も楽しそうだ。そのなかで優一はさまざまなことを思い出していく。4人での遊び、そして最近目で追うようになった彼女との記憶を。澄は、何もかも覚えていたようだが。
小さい頃の思い出と今の楽しさがつながったうえで、そこには以前存在しなかった気持ちが芽生えていた。関係と同じく、まだ名前がない気持ちだ。絵梨花や一途は気づいているようである。もちろん読んでいる私たちも。
さて最新3巻では、澄の“状況”がはっきりする。この描かれ方は美しく、切ない。きっと1話を読み返したくなるはずだ。「もう関係の進展まったなし!」と盛り上がった読者の感情を大きくゆさぶってくる展開が待っているのだ。
小さい頃は家族のようだった。思春期を迎えて距離が遠くなった。そして、気持ちに正直になってお互いに近づいてきた。少しずつ変わっていく幼馴染みたちの関係と気持ちに名前が付くのはいつなのか。ぜひその瞬間を見届けてほしい。
文=古林恭
