【『クレバテス』アニメ第2期開幕!】舞台は神学校へ! 魔獣の王と屍の勇者が挑む、学舎に渦巻く陰謀と魔術の謎【書評】
PR 公開日:2026/8/5

骨太なダークファンタジーの舞台は、戦場から学舎へと移された。いや、学舎こそが新たな戦いの地となったというべきだろうか。「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」のアニメ第2期が幕を開け、大胆な舞台転換にたちまち惹きつけられた人も多いだろう。第1期から追ってきたファンなら、「第2期は学校?」とまさかの展開に胸が高鳴るだろうし、第2期から見始めた人も、緻密に作り込まれた世界観と迫力あふれるバトルシーンに圧倒されたに違いない。

アニメ2期が始まった今こそ読みたいのが、原作コミック『クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-』(岩原裕二/LINEマンガ)だ。絶大な力をもつ魔獣王、彼に育てられることになった赤子、屍としてよみがえった勇者。あまりにも奇妙な一行の、どこかかみ合わないやりとりにはクスッと笑わされる。
だが、ひとたび戦いが始まれば、その空気は一変する。岩原裕二の作画は、ただ美しいだけではない。命がけで戦う人々の躍動が生々しく迫り、攻撃の重さや痛みまでもが伝わってくる。誰が命を落としてもおかしくない緊張感と、次々に局面が変わる怒濤の展開。息を詰めながら戦いの行方を追ううちに、読む手が止まらなくなる。
魔獣王に託された赤子が担う人属の未来
物語の舞台は、五種の人属が暮らす大地・エドセア。人属の領域の外には魔獣がひしめき、さらにその先への進出を四大魔獣王が阻んでいる。鉄鋼の国・ハイデンが送り出した13人の勇者は、魔獣王クレバテスに全滅させられる。攻められた報復として王都を壊滅させ、王を討ち、しまいには人属すべてを滅ぼそうと決意するクレバテス。しかし、瓦礫の下で赤子を守っていた瀕死の小姓から、「この子が人属を生かす価値を証明する」と赤子の命を救うよう懇願され、クレバテスは気まぐれに赤子を育てることに。ただ、クレバテスには人属の赤子について何の知識もない。そこで、一度は殺した女勇者アリシアを自らの血でよみがえらせ、世話係を命じるのだ。
知識のないクレバテスは、生き返らせたアリシアに赤子の腹を満たすため、「赤子のために乳を出せ」と命令し、アリシアは即座に「出てたまるか 私は処女だ」と突っ込む。凄惨な幕開けから一転して繰り出される、魔獣王と屍の勇者のずれた応酬。

この落差に、物語の冒頭から早くも心をつかまれてしまった。やがてクレバテスは、人の世界で行動するため、赤子を守っていた少年の姿を模した人属の姿・クレンとなり、赤子にルナという名を与える。ルナはハイデン王家の血を引く者だった。こうして、魔獣王クレバテスことクレン、赤子のルナ、屍の勇者アリシアという奇妙な一行の旅が始まる。ところが、王都を失ったハイデンへ、魔術を兵器として用いる隣国ボーレートが侵攻。ルナが帰る国を守るため、一行は最強の将軍ドレルとの戦いに身を投じることになる。
第2期は、神学校に潜入調査!隣国が行っていた魔術の研究とは?
そして、第2期では、ルナが母であるハイデン王太后と再会し、ルナを守った褒美として、クレンは自ら望んでルナ専属の魔術教師となる。ただ、ルナの教育が始まる3歳までは、まだ2年近くの猶予がある。一方、ハイデン侵攻の戦争責任や賠償を話し合う三国協議では、ボーレートの将軍ドレルが遺した魔術研究が新たな争点となっていた。人や魔獣の赤子を実験台にしていたというおぞましいその研究の拠点は、近年魔術学科を新設した神学校ソルセインにあるらしい。しかし、その詳細はボーレートの皇帝さえ把握していない。三国は2年間の停戦に合意し、ボーレートは、学校の運営を妨げないことを条件に、各国が秘密裏に内部を調査することを認める。それは、自国の軍事力を支えてきた魔術研究を、他国に探らせるに等しい大胆な譲歩だ。ボーレートの皇帝は、なぜそこまでの条件を受け入れたのか。こうしてクレンとアリシアは、留学生として神学校へ潜入することになるのだが……。
振り回されるアリシアが不憫でかわいい
神学校編でも、アリシアは振り回されっぱなしだ。
クレンはアリシアを生徒として潜入させるため、眠っている彼女の身体を勝手に小さくしてしまう。目を覚まして絶叫するアリシアに告げるのは、「汝(うぬ)の身体は大きすぎた。だから削った」という身勝手な説明だけ。許可も取らずに体格まで変えるとは、なんという横暴だろう。「戦う以外に能がない」とまで言われ、今後も容赦なくこき使われそうなアリシアが、たまらなく不憫でかわいい。

学舎の裏側で動き出す、新たな争い
神学校ソルセインに集うのは、個性豊かなエリートたちだ。では、ここから平穏な学園ものが始まるのかといえば、そう穏やかに進むはずもない。授業外の魔術は禁止されているにもかかわらず、生徒同士の衝突は早くも魔術戦へ発展するし、さらに、この学校に潜り込んでいるのは、クレンとアリシアだけではない。ドレルは魔術によって何を生みだそうとしていたのか。ドレル直属の魔導士で、ただ一人生き残った者の証言によれば、「秘密の部屋」は通常の方法ではたどり着けない異様な空間らしい。謎の鏡、暗く連なる小部屋、どこからともなく聞こえるうめき声――不気味な証言に想像をかき立てられる。クレンたちは、研究成果を狙う他国より先に、その正体へ迫れるのか。各国の思惑が集まるソルセインは、決して平穏な学びの場ではない。魔術は、人属の未来を切り開く希望なのか。それとも、再び戦争や人体実験に利用される凶器なのだろうか。

戦場を学舎へ移しながら、物語は魔術の成り立ちやドレルの研究、そして世界そのものの謎へ深く踏み込んでいく。神学校編という大胆な転換に驚かされるほど、その先の真実を知りたい気持ちは膨らむばかりだ。人属の魔術を学ぶクレンは、何を知り、ルナに何を伝えるのか。緻密に組み上げられた世界と圧倒的なスケールに心をさらわれ、もうアニメの続きを待っているだけではいられない。原作コミックを開けば、きっとこの世界の行く末を追わずにはいられなくなるだろう。
文=アサトーミナミ
