あらためて実感することができた『RWBY』に参加する楽しさと喜び――『RWBY 氷雪帝国』ルビー・ローズ役・早見沙織インタビュー

アニメ

公開日:2022/8/12

RWBY 氷雪帝国
『RWBY 氷雪帝国』
©2022 Rooster Teeth Productions, LLC/Team RWBY Project

 伝説のアニメ『RWBY』を知っているだろうか。

 2012年、日本のアニメ作品に影響を受けたアメリカのクリエイターたちが3DCGアニメを作り、インターネット上で配信した。かわいらしい少女たちが巨大な武器を振り回し、キレのいいアクションを決める。日本の手描きアニメの気持ちよさとけれん味を見事に3DCGで描いていたのだ。この『RWBY』という作品はインターネット上で話題になると、日本のアニメ関係者からも注目を集める。そして、日本の声優による日本語吹き替え版が制作されると、日本語版DVD/Blu-ray Discの発売、そして劇場でのイベント上映、編集版のTV放送が行われたのだ。

 人類を脅かすグリムと、ダストやセンブランスと呼ばれる力を駆使して戦う者たちがいた。15歳の少女、ルビー・ローズは、そんなグリムを退治するハンターを目指して、養成所であるビーコン・アカデミーに入学する――。制作開始から約10年が経った現在でもアメリカのRooster Teeth Productionsでは新作が制作されており、壮大な世界観とドラマが描かれるシリーズとなっている。

『RWBY』シリーズの吹き替え版でルビー・ローズ役を演じているのは早見沙織。彼女は本作のシリーズの最初期から参加しており、日本のスタッフが手がける『RWBY 氷雪帝国』ではルビー役だけでなく、エンディング主題歌『Awake』も自らが作詞を担当し、歌唱も行っている。

 はたして彼女は、新しい『RWBY』シリーズである『RWBY 氷雪帝国』にどんな思いで臨んでいるのだろうか。ルビーというキャラクターへの思いと新作にかける思い、そして新曲『Awake』について伺った。

©2022 Rooster Teeth Productions, LLC/Team RWBY Project

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ルビー・ローズという役が自分の中に染み込んでいる

――『RWBY』シリーズに早見さんが参加されて7年目となります。長くお付き合いされている作品になっていますが、早見さんにとって『RWBY』シリーズの魅力とはどんなところにあるのでしょうか。

早見沙織(以下、早見):楽しいところ、魅力的なところで言うと、やっぱりアクションシーンが本当に華やかで素早くて、動きがかっこいいことですね。『RWBY Volume 1』のときからずっと変わらない魅力だと思います。あと、ストーリーの展開も『RWBY』の魅力だと思います。吹き替え版は現在、『RWBY Volume 8』まで制作されているんですけど、回数を重ねるごとに世界観が広がっていて、設定がどんどん肉付けされているんです。現在は『RWBY Volume 1』のころからは想像もつかないくらい濃厚な物語になっているので、収録していて胸が苦しくなるようなシーンもたくさん増えました。それでもやっぱり目が離せない展開がたくさんあります。難しいところは『RWBY』シリーズ特有の早いテンポですね。吹き替えの収録を始めたばかりのころは、会話もアクションもテンポが割と早くて。台本に目を落としていると、もう次のセリフに進んでいたりすることがよくあって、“チームRWBY”の4人の間でもそのことはよく話題になっていましたね。最近は自分がテンポ感に慣れてきたのか、音響制作のスタッフのみなさんが対応してくださるようになったのかわからないですけど、テンポの早さは気にならなくなりました。

――『RWBY』は3DCGアニメ作品ではありますが、シリーズを重ねるごとに3DCGがどんどん進化しているのも特徴です。日本の手描きアニメーションとの違いを感じるところはどんなところでしょうか。

早見:やっぱり3DCGならではの立体感やキャラクターが立っている空間の奥行き感を感じられることですね。『RWBY』はアメリカで作られた作品ですけど、日本のアニメーションやキャラクターデザインの要素をたくさん取り入れられているものなので、海外ならではのオリジナル要素を感じつつも、親しみやすさといいますか、親和性みたいなものは序盤からあって、入り込みやすいなと感じていました。

――ルビー・ローズというキャラクターを演じるうえで、楽しんでいるところや、演じ甲斐があるところなどがあればお聞かせください。

早見:ルビーは演じていて、楽しいですね。最初に吹き替えで関わらせていただいたときは、ルビー役の原音を担当されている声優さん(Lindsay Jones)の声が可愛らしくて。そのイメージがありました。アクションシーンの掛け声も、日本のアニメーションで一般的に使われているアクションの声とまた違っていて、かわいらしさもあるけど、勢いのあるアドリブがあったり、ちょっとした笑い声とかも特徴的だったりするんです。テンポが早くてセリフが長いので、最初はついていくのに必死でした。ボリュームがあるセリフでテンポを維持し続けなくてはならないので、本当に緊張する現場でもあったんです。『RWBY』は私自身にとっても、いろんな扉を開けることができた作品でしたね。だんだん、ルビーのテンポが自分の体に染みついてきて、いまは反射的に出せるようになってきてからは、自分としても楽しめるようになってきました。今回の『RWBY 氷雪帝国』の収録では、あらためてルビーというキャラクターを演じることを楽しめていると思います。

――今回、『RWBY氷雪帝国』が日本のスタジオ(シャフト)で制作されることになりました。こうやって展開していくシリーズを、早見さんはどのように受け止めていらっしゃいますか。

早見:日本の制作スタッフの皆さんのお話を伺って、すごく胸が熱くなりましたね。アメリカのRooster Teethさんが日本のアニメーションをリスペクトして作られたのが『RWBY』という作品で、今度はそのリスペクトをお返しするようなかたちで、日本の制作チームによって『RWBY 氷雪帝国』が作られる。すばらしいことだと思いました。国境を越えて、垣根を外して、クリエイター同士がしっかりとコミュニケーションをとって、新たなものが作られるということに、かけがえのないものを感じます。たくさんの方々の愛情がこもっている作品だと思いますので、私が今回参加できるのも嬉しかったです。この『RWBY 氷雪帝国』も海外で受け入れてもらえると嬉しいです。

――今回の『RWBY 氷雪帝国』の第1話から第3話は『RWBY Volume 1』の内容を新たに手描きアニメとしてまとめたものでもありました。あらためて初期のルビーを演じるうえで、意識したことはどんなことでしたか。

早見:収録の前にあらためて『RWBY Volume 1』や『RWBY Volume 2』を観返しました。当時の雰囲気を意識しつつも、掛け合いで生まれるものも大事にしていく意識で望みましたが、寮のお部屋で「チームRWBY!」って言いながら、みんな集まってわちゃわちゃとお部屋を模様替えするシーンは懐かしいなと思いましたね。

――初期のワイスやブレイク、ヤンとご一緒した感想はいかがでしたか。

早見:3人に対して愛情を感じるところがあって、思い出のアルバムを見ているような感じがありました。やっぱり3人の個性がみんなバラバラなので、それぞれに強みがあって、それがチームとして力を発揮していくところが”チームRWBY”のカッコ良さだと思います。

――いろいろなキャラクターたちと触れ合うシーンも多かったと思いますが、『RWBY 氷雪帝国』で印象に残っているキャラクターはいますか?

早見:チームRWBY以外の面々と掛け合えるところは楽しい要素ですよね。学校の先生が出てきたり、お父さんであったり、みんなと会話するシーンはとても印象的でした。あと、ピュラ(・ニコス)が登場するシーンでは、キャストのみんなで「ピュラ~!」ってなっていました。

――今回、新たなキャラクターとしてシオン・ザイデンが登場します。七海ひろきさんが演じられていらっしゃいますが、印象はいかがでしたか。

早見:本当にかっこいいキャラクターです。七海ひろきさんのお声も、中性的でカッコいいし、謎めいていて、引き込まれます。一度、アフレコでご一緒させていただいたんですけど、マイクの前に立たれる七海さんのお姿も含めて、魅力的なキャラクターだなと思いました。あと、シオンというキャラクターは日本のスタッフとアメリカのチームがかなり綿密にお話をされて作ったそうなんですね。たとえばRWBYのキャラクターにはそれぞれテーマカラーがあるんですけど、その色もみなさんで決められたそうですし、これは作品のスタッフ全体で一丸になって生まれたオリジナルキャラクターということで、日本のファンのみならず、海外のファンの皆さんにも大注目していただきたいキャラクターだなって思います。

――実際にシオンの映像をご覧になって、いかがでしたか。

早見:シオンさんが使っているの砂時計の中にそのお花がいっぱい入っていて、美しいなって思いました。アフレコのときは全然意識してなかったことだったので、これは欲しいなって(笑)。

RWBY 氷雪帝国

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RWBY 氷雪帝国

ワイスの心の中に向き合う『RWBY 氷雪帝国』

――「RWBY 氷雪帝国」では第4話から、ルビーたちがナイトメアに取り憑かれたワイスの夢の中に入っていきます。この世界については、最初にスタッフのみなさんからどのような説明があったのでしょうか。

早見:今回、私はEDテーマの歌詞を作詞させてもらっているんですが、そのときにシナリオを全部読ませていただいたんです。シナリオに結構細かく情景が書かれていたので、そこが最初のイメージになりました。夢の中なので、異質というか、ありえない空間になっていて。かなり不気味というか、怖い部分もあるなと。アフレコのときも、夢の中にいるキャラクターがしゃべるセリフを聴かせてもらいながら収録をしていきました。

 今回はワイスの心象風景というか夢の中なので、何でもありというか。思いが具現化しているところがあるので、それが『RWBY 氷雪帝国』の面白いところだなと思います。原作では外側で起きる事象に対して戦ったり、チームとして壁を乗り越えたりした感じですけど、個人の心の中を掘り下げていく展開はそんなになかったと思うので、今回ワイスの心の中がのぞけるのは『RWBY 氷雪帝国』の特徴だと思います。ほかのメンバーに対して、家族に対して、ワイスがどう思っているのかが見えてくるんですよね。これを見て、原作の『RWBY』シリーズを見ると、より楽しんでいただけるんじゃないかと思っています。

――夢の中でワイスは、ネガワイスとして違った一面を見せます。ネガワイスの印象はいかがでしたか。

早見:ワイスは冷たいことを言っていても、本当の意味では嫌いにはなっていない、ツンデレ感といいますか、そういう部分が愛らしいんです。でも、ネガワイスはそういう一面がまったくないんですよね。ルビーに対しても、 最初は本当に氷雪のような態度で接していますし、心を閉ざしてしまったネガワイスには硬さを感じました。最初にネガワイスをアフレコ現場で日笠さんが作りあげていくときに、私も同じタイミングで収録をしていたんですが、もっとネガな感じで、もっと冷たい感じでというようなディレクションがあったんですね。普段のワイスとの差別化をつける意図は序盤からはっきりとあったと思います。でも、ワイスもネガワイスもどちらもカッコよかったですね。

――夢の中ではルビーたちも新しいコスチューム、武器を持って登場します。

早見:キャラクターデザインもすごいかわいいなと思いました。今回ならではの衣装もあって。ルビーは夢の中だとクレセントローズの形が変わっていることが今後のカギになってくるので、注目ポイントかなと思います。

――もし早見さんに、ナイトメアが宿ったらどんな夢を見ると思いますか。

早見:私はそうだな……割と臆病でビビリなところがあるから、自分の夢の中に入ったら、相当ミステリアスで怖い世界になってしまうと思います。普通の夢の世界に迷い込むのだったら、私の夢の世界はお祭り騒ぎな夢になると思うんですけど(笑)、ナイトメアはきっとネガティブなほうを強調すると思いますから、きっと怖い夢になるんだろうなと思います。

RWBY 氷雪帝国

RWBY 氷雪帝国

『Awake』の歌詞と歌に込めた、ささやかな光

――早見さんは『RWBY 氷雪帝国』でエンディング主題歌「Awake」を歌われています。こちらは早見さんが作詞、凛として時雨のTKさんが作曲、編曲をされている新曲ですね。こちらについては先ほどもお話があったように、シナリオを読んで作詞をされたんですよね。

早見:そうです。シナリオをいただいて、TKさんも私もそれぞれ作品のイメージを掴んで、そのうえで楽曲のお願いをしました。

――TKさんの楽曲を聴いたときの印象をお聞かせください。

早見:『RWBY 氷雪帝国』の世界をしっかりと表現してくださったなと思いました。最初は1番の部分だけのデモをいただいたんですね。その部分だけでも素敵だなと思ったんですが、後半を含めたフルサイズのデモをいただいたら、一番を聴いたときには想像できないくらいの曲の展開があったんです。すごく盛り上がるし、何倍にも広がりが出ていて圧倒されました。

――そこから歌詞をお書きになったわけですね。

早見:この作品のエンディング主題歌ということで、シナリオを読んで、私自身がこの作品に感じたことや、自分自身がアーティストとして感じていたことを歌詞にしようと思っていました。2020年から2021年に、孤独だったり、つらさを感じたたりしたときに、ささやかな光になるような音楽を届けたいという気持ちもあって。

――ご自身の思いも含めて歌詞に込めていらっしゃるんですね。執筆はスムーズに進められたんですか?

早見:今回はけっこう難航したんですよ。曲が良すぎるというのもありましたし、展開も多かったので、そこに上手くはまる言葉が見つからなくて。何度も書いては音楽プロデュースチームのみなさんにアドバイスをいただいて、という繰り返しでした。個人的には後半の「夢から覚めるまでそばにいるよ」という歌詞があって、「その先なんて確かなもの何もないけど、私はここにいるよ」というあたりが固まったときに、この曲の軸が固まったなと思いましたね。「静寂と衝動」や「痛みの共有」みたいなものがシナリオにあって。どんなに目覚めが遠い暗闇でも、暗闇を引き裂くようなエネルギーで、あなたといっしょにいたいという強い心を描こうと。誰かが誰かを救ったり救われたりするのではなくて、私も痛いし、あなたも痛い、その痛みを共有しながら、その先に向かっていくんだという気持ちを込めています。この曲は、自分ひとりの曲ではないんです。この曲の主人公とあなたという中に、音楽を聴いていただく方によっては「楽曲とあなた」という関係かもしれないし、「私から私」なのかもしれないし、いろいろな当てはめ方ができる曲になったのではないかと思っています。

――早見さんは楽曲に関わるときに、作詞家としての自分と、歌い手としての自分は地続きでつながっているのでしょうか。歌うことを意識して歌詞を書くこともありますか。

早見:繋がってくると思いますね。歌詞に込めた自分の思いをしっかりと抱いて、その熱量でレコーディングに臨みました。今回はTKさんのスタジオでレコーディングしたんですが、ご自身の楽曲として、時間をたっぷりととっていただいて、何時間もずっとこの曲を歌い続けました。そういう意味でも思い入れがあります。

――「Awake」は昨年(2021年8月29日)実施された「Animelo Summer Live(アニサマ) 2021 -COLORS-」で披露されました。ライブで新曲を歌われてみて、いかがでしたか。

早見:そのときは『RWBY氷雪帝国』のエンディング主題歌だということはお伝えしていないまま、私の新曲として歌わせていただいたのですが、そのときにこの曲の持つエネルギーの大きさに、自分がびっくりしました。歌ったあとに曲からもらうパワーがすごく大きかったんです。今年に入ってからは、『RWBY氷雪帝国』の発表をするAnimeJapan 2022(2022年03月26日開催)で歌わせていただいたり、自分のバースデーライブHayami Saori BIRTHDAY EVENT 2022 ROOM(2022年5月29日開催)でアコースティックバージョンとして、ギターといっしょに披露させていただきました。歌う場面に合わせて歌の印象が変わっていって、歌えば歌うほど肌なじみが良くなる感じがあります。

――早見さんの歌う『Awake』がこのあとの物語にどんな広がりをもたらすのか楽しみです。最後に、今後展開していく『RWBY 氷雪帝国』の物語をどんなふうに楽しんでほしいとお考えですか。

早見:今回は力のある敵を倒したら終わりという話ではなくて、誰かの思いや心がからんでくる。どう転ぶかがわからない。決まったかたちがない物語なんです。ワイスだけじゃなくて、みんなの心がどのように変わっていくか、絡んでいくかを楽しみに、ぜひ最終回まで注目して観ていただきたいなと思います。

取材・文=志田英邦

プロフィール
早見沙織(はやみ・さおり)
主な出演作品は、TVアニメ『鬼滅の刃』胡蝶しのぶ役、『魔法科高校の劣等生』司波深雪役、『ワンピース』ヤマト役 など。
Twitter:@hayami_official

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