太った社員は強制ダイエット!「タニタ」Twitter中の人の企業アカウント運用ノウハウ

ビジネス

2018/2/9

 数ある企業のTwitter公式アカウントの中でも、そのユルさと自由度の高さとユニークなネタでフォロワー数が急増しているタニタ(@TANITAofficial)の中の人。いったい彼は何者なの? タニタっていったいどんな会社なの? フォロワー数が跳ねるのはどんなとき? 気になることを聞きつつ、中の人が読んでビジネスに役立ったオススメ本も3冊紹介してもらった。

■「ポケモンGO好きの社長から仕事中に駆り出されます(笑)」

――ツイッターを担当することになったきっかけは?

中の人 最初は、社長から名指しで命令されて、企業宣伝用のニコニコ動画をはじめたんです。その後、ツイッターもやりますと自分から手を挙げました。営業で入社して、営業で生きていくはずだったんですけど(笑)。

――意識しているターゲット層は?

中の人 タニタの健康計測機器は、30代以降の方に多く購入していただいているのですが、もっと若い方に弊社の商品やブランドを認知させたいという目的でツイッターをはじめました。社長もサブカル好き、IT好きで感覚が若いんです。「働き方を変えていこう!」と改革を進めているのはいいんですが、ポケモンGOが好きな社長から、敵が出てくるたびに社員が駆り出されたりしますから(笑)。

 そういうことを公式アカウントのツイッターでつぶやいたりもしているので、外から見ると、「タニタの社長って、仕事中にゲームしてるんだ!」と意外に思ってイメージが和らぎますよね。一般的には、体重計と食堂の会社というイメージが強いと思いますが、「なんか面白そうだから入りたい」と入社を希望してくれる学生も増えているように感じます。

――面白い社長ですね。

中の人 社長はいつも、「ひとつで3つぐらい楽しめたほうがいい」と口癖のように言っています。自分なりのひとひねりした考えを持っている人ですね。ポケモンGOも、それが社員とのコミュニケーションツールになっている部分もありますし、「この社員はこういう風にゲームをやるのか」という発見もあるでしょうし。そういう風に、社長はどんな物事も深掘りしながら考えるタイプだと私は見ています。

――話しかけやすいですか?

中の人 そうですね。社長からもどんどん話しかけてきます。社長のデスクは4階にあるんですけど、席にいると、いろんな部署から人が集まってきます。社長の席のすぐ横にスタンディングで話ができるカウンターがあるんです。常に先を考えて次のステップに進もうとしている人で、社員が何か新しいことをやりたいと言っても、基本的に止められることはありません。とりあえず試してみて、ダメだったらダメなりに、その理由を分析して次に活かせばいいという考え方なので、私たちも仕事がしやすいですね。

 会社のアカウントでSNSをはじめ、新しい取り組みを積極的にするようになったのも、9年前に今の社長に代わってからです。私がやっているツイッターには、「炎上しないように」「嫌われないようにしなさい」とか、意外と慎重な声をかけられますけど、最低限、守るべきところを守ればいいのかなと思ってやってますね。意識しているのは、人と直接対面して話している感覚でつぶやくことです。普通、目の前の人に失礼なことは言いませんので、そういう当たり前の自然な発言を心がけています。

■パロディ『君の社は。』でフォロワー数が急増

――他社とのコラボなどユニークな展開も多く、コミュニケーションの輪が広がってきていますね。

中の人 ツイッターの世界って、夜は見てくれる人がいっぱいいるんですけど、昼間はみなさん仕事しているのであまり人がいないんですよね。主婦の方とか学生さんはいますけど。それでどうしようかなと考えたとき、他企業の公式アカウントの中の人も自分と同じ状況だと思うので、コミュニケーションできたらいいなと思ったのがはじまりです。それからシャープさんやセガさん、キングジムさんに声をかけてやりとりをはじめたら、フォロワーの方たちが面白がってくれたんですね。ツイッターをはじめた2011年当時はまだフォロワーも数千人程度で、企業同士がやりとりしているケースも少なかったので、めずらしがられたのもあると思います。

――現在のフォロワー数は23万6000人ほどですが、一気に数が跳ねあがったきっかけや嬉しかったエピソードは?

中の人 フォロワー数が大きく跳ねたのは、2017年の4月1日のエイプリルフールの日に、シャープの“中の人”とお互いのツイッターの中身だけ入れ替えて『君の社は。』というパロディをやったときです。何の打ち合わせもなく画像だけ渡したんですが、それまでお互いやりとりしていたので、即興でもうまくいったんでしょうね。いつ終わるのかなこれ? と思っていましたけど(笑)。でもそういうのが生っぽくて、見ている人にライブ感が伝わるから面白がってもらえたんだと思います。

 嬉しかったのは、「タニタに入社したい」っていうフォロワーの方がいたり、「ずっと友だちができなかったんだけど、中の人のツイッターの話で盛り上がって友だちができました」みたいなメッセージが来たりしたことですね。

――ブランディングの担当もされていたそうですが、タニタという会社のブランドイメージはかなり高まったのでは?

中の人 それまでタニタと接点がないと思っていた人たちが、家庭や会社のどこかにタニタの製品があることに気づき、意識してもらう機会は増えたような気がします。今は新事業担当で主に商品企画をやっています。たとえば既存の体組成計に音声で読み上げてくれる機能がついた商品の企画や食品関係もいろいろやっていて最近はタニタの珈琲も出しました。ツイッターの仕事は全体の2割ぐらいですね。

――今後、ツイッターでやってみたいことは?

中の人 あります。今年はワールドワイドに海外での展開も考えています。タニタはアメリカ、ヨーロッパ、アジアに支社もありますので、海外の話題も提供していきたいですね。

――企業アカウントのツイッターをはじめてよかったと思うことは?

中の人 出会えるはずがない方と出会えたりするのは、やっぱり嬉しいですね。たとえば、『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラクターを使用した商品をつくって、ジョジョ展にも協賛させていただいたとき、ずっとファンだった荒木飛呂彦先生に会えてお話もできたんです。メーカーに入って、まさかそんな夢みたいなことが実現するとは思わなかったので、モチベーションもあがりますし、また新しいことにチャレンジしたくなりますね。

   

■一番好きな漫画は、『ジョジョの奇妙な冒険』

――では最後に、読んで役に立った本をご紹介ください。

中の人 恐らく、ビジネスマンであればみんな読んでいる本だと思いますけど、『7つの習慣』と『アイデアのつくり方』が今の仕事のベースにあります。そのほかに『ツイッターで会社をPRする本 Twitter企業の活用例100』というのがあって、これははじめて買ったTwitterに関する本ですね。

 まず『7つの習慣』は7年ほど前、営業を担当していた頃に読みました。当時も兼任で会社のTwitterを担当していてフォロワー数も順調に増えていましたし、会社の業績も伸びていたんですが、個人的にいろいろ悩んでいた時期でもありまして。そういうなかでこの本を読んでみて、何でも主体的に自分から発信していかないとダメだといった根本的なことは、やっぱり間違ってなかったんだなと再確認することができました。自信を取り戻す気づきがいろいろありましたね。

――実践している習慣はありますか?

中の人 ぜんぶ実践していますね。特に、第4の習慣「Win-Winを考える」以降は、自分よりも他人に対してどうあるべきか? という話が多くて、僕は今、そこに行き着いているように思うんです。自分のことよりも、自分が発信したことで周りの人がどう反応して変化するか。ツイッターをやっていると、そういうことを体験することが多いので、まさに習慣になりつつありますね。自分から行動を起こすことによって相手も変わるのは、本当に面白いです。

『アイデアのつくり方』は、部署を異動して「ツイッターやりながら新商品開発をしろ」と言われた1年半前ぐらいに、「自分に本当にアイデアがつくれるのか?」と思って読みました(笑)。それまでは営業として現場でお客様と会うなかでアイデアを考えてツイートしていたんですけど、「商品開発の仕事になっても本当に大丈夫なのか?」という不安があったんですね。当時はまだ我流でやっていたこともあり、アイデアのつくりかたとかマーケティングの基本を確認したくて読んでみました。物事を組み合わせるとか、新しいことをやってみるとか、ツイッターでやっていたことと共通する話も多くて、これも間違ってないんだなと、確認して納得しながら読みました。

『ツイッターで会社をPRする本 Twitter企業の活用例100』には、ソフトバンクさんや東急ハンズさんの事例が出ているんですが、今とあまり変わってないなと思いながら読みました。僕はもともとビジネス書の熱心な読者ではなくて、途中でだいたい読んだ気になって次に行っちゃうんですね。でもこの3冊は繰り返し読んでいます。

 ちなみに一番好きな漫画は、『ジョジョの奇妙な冒険』です(笑)。

■太った社員は強制的に食堂とスポーツジム通い。タニタの社員の健康管理

――タニタの「ここがすごい!」と思うところがあればぜひ教えてください。

中の人 一部、社員に肥満気味の人がいるんですが、そういう人はタニタ食堂で強制的に食べさせられますし、スポーツクラブに通わされます。社員の健康管理はすごく厳しくチェックされますね。たばこも吸えませんしね。社員は全員、会社にある体組成計ではかったデータをすべて管理されてます。はかってないとすぐメールでプッシュが来ます。活動量も全社員つけてまして、順位が張り出されます。やってない人も張り出されるので、みんなやってますね。

――タニタで働き続けたら長生きしそうですね。

中の人 いろいろ頑張るとポイントがもらえるんですよ。貯まるとアマゾンギフト券とかもらえたりします。常にトップを走り続けている社員もいて、僕の上司のブランド統合本部の本部長がまさにそうですね。とにかく歩くのが趣味なので。一日4、5万歩歩いてます。お昼休みも、30分で食事をすませて残り30分は歩きに行きますからね。健康オタクとまでは言わないですけど、もともと健康志向が高い社員は多いですね。

 あと、昔から野球やテニスのクラブ活動があって、最近はゲーム、ミニ四駆、軽音部とかも活発に活動しています。私は軽音部でギターとボーカルを担当しています(笑)。日本酒の会もあるんですよ。社員食堂の冷蔵庫にあるビールも、2人以上で飲むときは2本まで無料なんです。お酒は健康にいいの?っていう話もありますけど、意外とそういうところは寛容な会社ですね。

――中の人として、今後の目標があれば教えてください。

中の人 多角的な展開にもっと力を入れていきたいですね。たとえば、弊社はエンターテインメントに積極的に関与してこなかったんですけど、漫画も音楽も好きな人にとっては健康的なことなので、どういう切り口でタニタが関与していけるか考えているところです。人間にとって楽しいことはすべて健康にいいと思うので、体重計や食堂といった本業以外の事業を、若い人たちにもアピールしながらリードしていきたいと思っています。

取材・文=樺山美夏