推しのラーメン屋のように、好きな芸術を語れないのはナゼ?『『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』山口周インタビュー
公開日:2018/6/10
これからのビジネスは、サイエンスだけでは戦えません
複雑性が増していく現代のビジネスにおいて、論理や理性といった「サイエンス」に軸足を置いての意思決定だけでは、もはや舵取りしきれない。そこで重要になっているのが「アート」 ―美意識である。これが本書の要旨です。
この主張に対して、読者の方々からは大きく3種類の反応をいただきました。まず「よくわかりませんでした」という意見(笑)。大企業に勤めているビジネスマンや、私と同じようにコンサルタントの方に多くて、彼らの世界では、まだ実感できない変化なのかもしれません。2つ目は「なんとなく風向きの変化は感じていたが、明確にはわかっていなかった。新たな方向性を得られた」という意見。これはベンチャー企業の経営者の方に多かった。そして3つ目としてビジネスマンのなかでもプロデューサー的な仕事をしている方々は既に気づいていたのでしょう、「考えていたことがよりクリアになった」と強く共感していただけました。
美意識は自分だけのモノサシですから、それに準拠して判断を下すのは勇気が必要かもしれません。論理的に説明がつく基準でもありませんからね。でも―極端な例ですが、好きなラーメン屋ということなら、自分の味覚を信じ、自信をもって「これがいい」と言えるはず。ところが美術作品ではそれができない。芸術作品の価値を考えるとき、どうしても権威を求めてしまうのは、日本人の悪い癖といえるかもしれません。
本書はタイトルで「美意識を鍛える」という言い方をしていますが、美意識や美的センスは「磨く」ものではないのかな、と。ある著名なデザイナーさんも仰っていて、私も深く共感したのですが、センスに良し悪しはない。確実に存在するのは、自分自身のセンス。それに気づき、自分なりの判断基準を胸に置くことこそが、美意識を鍛えることなのだと思います。(山口さん談)
|| お話を訊いた人 ||
山口 周さん1970年東京都生まれ。経営コンサルタント。コーン・フェリー・ヘイグループのシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーションと組織開発。5/18に新刊『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』が刊行。
取材・文/田中 裕 写真/首藤幹夫
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