「ずっと近くにいられますように」と願うLiSAの、選択と変化とは――LiSAインタビュー(前編)

エンタメ

2019/7/3

 4月30日、平成最後の日。横浜アリーナでの2daysのワンマンライブ「LiVE is Smile Always ~364+JOKER~」の2日目、ステージ上で繰り広げられたLiSAのパフォーマンスは、客観的に見ても「最強のライブ」と感じられる内容だった。LiSAにとって横浜アリーナでのライブは、2016年11月の「LiVE is Smile Always -NEVER ENDiNG GLORY-」以来2年半ぶりだったが、ショウとしての完成度はますます高まっており、表現者としての進化を印象づけた。昨年、ベストアルバム発表後のホールツアーで、不完全燃焼だった部分もあっただけに、「364+JOKER」の充実ぶりは、とても頼もしい。そして、だからこそ、15枚目のシングル『紅蓮華』(7月3日発売)を語る前に、昨年のホールツアーから4月の横浜アリーナに至るまでの道のりの中で、「LiSAは何を想っていたのか」をインタビューのテーマにしたいと考えた。

「364+JOKER」で披露された楽曲群には、彼女のライブを知る者ならばおそらく誰もが気づくであろう、「ある変化」があった。ここでお伝えしたいのは、彼女がなぜそれを選択したのか、そしてその先に何を見据えているのか、である。目の前の聴き手のために、自分自身を削りながら精一杯を届けてきたLiSAは、しなやかに変化を遂げながら、これからも走り続ける。そのことを、LiSAの言葉から感じてもらいたい。

たぶん、身を削って頑張ってる自分が好きだった

――4月末の横浜アリーナ2days、平成最後の日に最高のライブを見せてもらいました。

LiSA:ありがとうございます。

――2日目に関して、観てる側としては「最強だな」って感じられるライブだったので、まずは本人の言葉で横浜アリーナ公演を振り返ってほしいんですけども。

LiSA:はい。去年、ベストアルバムを出して、ツアーを回って――途中で体調を崩してしまい、「やっぱり自分はうまくできないんだ」って思ったのが、ベストアルバムのツアーでした。それが、すごく悔しかったし、そこから横浜アリーナまで、正直不安でした。ベストアルバムのツアーの最初にできていたような最強のライブ、自分が満足できるライブは、もう自分にはできないのかもって思ってしまって。それと、ライブハウスだったらどっちかというと音楽だけでできているから、そんなに気負って挑まなくていいというか、自分のホームな感じがしてるので、そんなに全部を決め込まなくても頑張れるところがあるんですけど、アリーナは作り込むものが多くて、自分の力だけで何かができる場所じゃないんですね。そこへの気合いはありつつ、横浜アリーナ当日までは不安な気持ちのほうが大きい状態でした。

――なるほど。

LiSA:もちろん準備は完璧にやってるんだけど、当日ステージに立ったときの自分への自信がなかったというか……正直、すごく怖かったです。ライブに『~364+JOKER』っていうタイトルをつけて、1年の中に挫折する日やダメな日があって、「それも必要な1日なんだ」って自分自身が体現しなくちゃいけない、と思っていて。それも自分に課した責任でありプレッシャーだったんですけど、当日は「できるだけ自分に自信を持つぞ」っていう魔法をたくさんかけて、ステージに上がって。なんか、「会わない間って不安になるんだな」って思いました(笑)。会ってない間にひとりで勝手に不安になっていたけど、温かく迎えてくれたし、みんなの気合いもすごかったので、楽しかったです。

――不安になることって、今までも経験してきたことじゃないですか。でも今回の場合、「トップフォームが戻らないんじゃないか?」という、質の違う不安ですよね。横浜アリーナで最高のライブを見せてくれて、我々を安心させてもらった後だからこそ、あえて不安と長く向き合った経験について聞いてみたいな、と思うんですけども。

LiSA:ずっとキックボクシングへ行ってるんですけど、もともとチャンピオンだった新田さんという方にやってもらっていて。彼は35歳で引退していて、全盛期に比べて年齢を重ねていくことで戦いづらくなっていく経験をされている方で、「自分の身体が衰えて、最強だった自分を超えられなくなるとき、どうするんですか」って聞いたんです。そのときに、「お客さんも一緒に年を取っているから、本当に応援してくれてる人たちはわかってます」って言われて、もうボロクソに泣いたんです(笑)。「だから、自分自身が今できること、今の自分に嘘をつかずに精一杯やることです」って言われて、また泣いて(笑)。それを聞いて、「今できることを精一杯やるスタンスを変えちゃいけないなあ」って思いました。そして、「今の自分ができることをきちんと把握する能力も必要だな」って思って。自分の無茶な願望だけで、目の前の人のためだけに自分を削って、「もういいんだよ」って思われちゃいけないんだなって。

――だいぶ大きな意識の変革ですね。

LiSA:とにかく自分を削ってやっていくことがすべての誠意だと思っていたし、「精一杯やった。これでも観てくれる人がいなくなるんだったらしょうがない」みたいな表現しかできなかったけど、きっと「今のわたしの精一杯がこれだ」ってわかってもらえるだろうなって思って。横浜アリーナはそうやって作ったライブでした。身を削って削って、限界に挑戦するライブではなくて、これから先をみんなが期待できるライブにしたいと思いました。たとえば、今までだったら、2日間でガラッとセトリを変えてたと思うんですけど、今回はあまり変えなかったんです。それは、けっこうな覚悟をもって挑んだことで。今までだったら無理してでも変えて――たぶん、身を削って頑張ってる自分が好きだったんですよね。

――同時に、自分の中の不安を解消するひとつの手立てでもあったんでしょうね。

LiSA:そうですね。人を引き止めておくため、自分を好きになってもらうための手段というか――そう、思い出したんですけど、昔、友達をお家に呼んでお茶とお菓子を出すことをよくやってました(笑)。「ここに来たら楽しいことがあるよ」っていう、そのときのわたしができる精一杯ですよね。ほんとの友情ってそういうものじゃないのに、わたしにとってはそれがひとつの愛情表現で、自分のためではなく、人に喜んでもらうためにお小遣いを貯めてたんですね。そういう感覚は、ずっと変わらないなって思います。

――もしかすると、求められてる以上のことをやってる可能性もあるし。

LiSA:そうそう(笑)。そういうことをしないと、好きって伝えられてる感じがしないというか。

――でも、セットリストの話は非常に印象的ですね。今までとは違う道を見つけるべきところに来ているという点で、ある種のターニングポイントに立ってる感じがするというか。

LiSA:そうですね。自分が人間だったことに気づいた(笑)。自分が思ってる以上に、わたしは人間だったっていうことかな。

――もっと早い段階で気づく機会はあったと思うんだけど(笑)。

LiSA:あはは。やっぱり、それでもやりたかったんですよね。

自分自身まだまだ変化していくと思うし、今は変化したものを耕してる最中

――それって必然的な変化ですよね。カスカスに燃え尽きるまでやり尽くしちゃうと、未来につながらなくなることがようやくわかったわけだから(笑)。

LiSA:(笑)はい、やっとわかりました。なんだろう、短くきれいに咲く感じに美学を感じてたんですね。そういうものにずっと憧れてきたけど、大事なものができて、大事な人たちがいて、その人たちと長くいたいと今は思っていて。きれいに咲いてるうちはいいけど、散ったあとに誰もいなくなることがずっと不安だったから、形を変えながら何回も広がっていく、それこそタンポポのように――いや、ここは紅蓮華って言うべきでしたね(笑)。蓮の花のように、ずーっとみんなの近くにいられる花のように生きていくほうが、長くみんなと一緒に遊んでいられるし、長くみんなと夢を見ていられるなあって思います。だから、今の自分をしっかり見て、自分のブレーキ、手綱をちゃんと持てるようになりました。

――そのわりに、横浜アリーナのライブはめちゃくちゃ激しい“Thrill, Risk, Heartless”からライブが始まってたけど(笑)。

LiSA:(笑)やっぱり、みんなが求めているLiSAというものは、LiSAでいる以上、不安を持たせちゃいけないし、そこには責任もあるから。みんなが「いつものLiSAだ」って思ってくれるようなLiSAを、ちゃんと最初に見てほしかったんです。

――ここで、読んでくれている人にはっきり伝えておく必要があると思うんですけど、今話してくれた変化というのは、パワーダウンとイコールではないんですよね。実際、今回の横浜アリーナ公演はショウとしての完成度が高くて、2016年の横アリ公演と比べても、全体のクオリティが向上していたと思うし。

LiSA:そうですね。わたしも、今回のほうが好きです。2016年の横浜アリーナは、ちょっとチャイルディッシュな部分、かわいい部分も含めてできたライブで、それはギリギリ20代だったから(笑)。そういう意味では、ガルデモのときには出せなかった力が(2014年の)武道館のときにはあって、武道館では出せなかった力が幕張メッセや横浜アリーナのときにはあって。そのときどきで、自分ができることをひとつずつ増やしてこられた気がしているし、自分がやりたいことが本当の意味で伝わるような年齢になってきた気がします。

――無理をしなくても、最高のライブが届けられるフェイズになってきてる感じがありますね。

LiSA:うん、そうですね。また、ライブが楽しいターンに戻りました。でも、自分自身まだまだ変化していくと思ってますし、今は変化したものを耕してる最中なので、そこにまた花が咲くと思います。感覚的には、自分が過去に持っていたものを、ここまでに全部出し尽くしてきて、それを誰かと掛け合わせたりすることで最強にしてきたと思うんですけど、今は新しく広げられる場所を耕してる感じがします。そこに、また小さな芽が生えてきていて。その子たちが、これから花を咲かせていったら、もっと表現できることが増えていくんだろうなあ、と思います。

――表現の広がりを感じさせてくれる曲というと、やっぱり今回のライブでも“DOCTOR”は強烈だったなあ、と(笑)。

LiSA:やっぱり(笑)。あとから固定カメラのビデオを観たんですけど、カメラの近くにいっぱいお客さんがいて、“DOCTOR”がダーン、バーン!って終わったあとに、「すっげえ!」みたいな感じで、みんなの声がめっちゃ入ってました(笑)。「えっ? 何あれ?」「すごかったね」っていうザワザワが入っていたのを聞いて、「衝撃的だったんだな」って思いました。

――“DOCTOR”によってパフォーマンスの状態が測れるとすると、結論としてはめちゃくちゃいい状態、という感じになると思うんですよね。あとは“TODAY”を聴いていて、ここ数ヶ月の間に不安に感じていたいろんなことが報われる感覚があったんじゃないかな、と想像していて。

LiSA:はい。“1/f”の前までは、なんかちょっと緊張していて。でも“1/f”の前に、センターに行ってしゃべったときに、ちゃんと自分に素になれた感じがしました。目の前のひとりひとりがやっと見えた感じがして。で、“1/f”から、“DOCTOR”とかを歌ったあとにわたし自身も安心して、「今日はいける」って確信を持てるようになって。だから、“TODAY”を歌うときには自分の中の気持ちがすごく統一された感じがあって、あの日横浜アリーナで“TODAY”を歌う意味をすごく感じながら歌えました。

――全体を通して、変に背伸びをしない感じ、いい意味での気合いみたいなものは感じました。

LiSA:そうですね。自分を大きく見せない、等身大の自分でちゃんとステージに立つ――等身大というか、ちゃんと今の自分で立つモードになれたんだと思います。

――今までは?

LiSA:今までは、大きく見せたかった。

――大きく見えるようにするために、いろいろ頑張ってきた。

LiSA:うんうん、そうですね。今は、「そこにいるわたし」みたいな感じだと思います。

インタビュー後編は7月6日配信予定です

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取材・文=清水大輔  撮影=中野敬久
スタイリング=久芳俊夫 ヘアメイク=氏家恵子