【魔王学院の不適合者】最強キャラ・アノス様はどう生まれたのか――鈴木達央インタビュー

アニメ

公開日:2020/9/13

鈴木達央

 あの『愛の不時着』を抑えて、Netflixのデイリーランキング1位を獲得(8月22日、9月6日)――現在放送中のTVアニメ『魔王学院の不適合者 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜』が成し遂げた快挙である。だが、驚きはしたけれど、作品のいち視聴者として、「そうだろうな」とも思った。だって、『魔王学院の不適合者』は、実際めちゃくちゃ面白くて、観ているうちにどんどん好きになってしまうアニメーションだから。その楽しさが正しく伝わって、多くの人が放送を心待ちにして、大きなリアクションがある。とても健全なエンタメの楽しまれ方だし、こんなに痛快なことはない。「アニメは総合芸術」だとよく言われる。演出、作画、キャストの芝居を含む音響、どれが欠けても、いいフィルムは完成しない。『魔王学院の不適合者』は、作品に関わるすべてのメンバーの力が結集することで、高い熱量が生まれ、それが作品へと映し出されている。その制作過程を探るべく、キャスト・スタッフにしっかり話を聞いてみたい、と思った。

 なお、いきなり上のテキストと矛盾するのだが、『魔王学院の不適合者』は、「もうまんま鈴木達央」なアニメであると思う。さまざまな力が集まって面白い作品ができていることは大前提として、強く、優しく、懐が深い魔王、アノス・ヴォルディゴードこそが本作の要であり、「結果的に」鈴木達央のパーソナルがアノスへと滲んでいることで、「アノス様」は観る者を惹きつける魅力的なキャラクターとなった。先達をリスペクトし、同世代と共闘し、後輩に慕われる声優・鈴木達央が積み上げてきたもの、現在持てる力が注ぎ込まれた、会心の作品であると思う。

魔王学院の不適合者
TVアニメ『魔王学院の不適合者 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜』 毎週土曜23時30分より、TOKYO MXほかにて放送中 (C)2019 秋/KADOKAWA/Demon King Academy

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ミーシャの「ありがとう」って言葉を聞けたときに、「これが、自分が望んでた世界なんだな」って

――『魔王学院の不適合者』、一言で言うとほんとに最高です。アニメを観ていて、こんなに楽しいと思ったのは久しぶりだな、と思いまして。

鈴木:嬉しいです。無事に放送されてるのを見ると、ホッとしています。SILVER LINK.の皆さんの頑張りや、関連する皆さんの踏ん張りをすごく見えてるから。監督の田村(正文)さんがこのフィルムのファンだから、どこに力を入れたいのかが明確だし、そこにスタッフみんながついていってくれてるなあ、と感じました。さらに、大沼(心・総監督)さんが指揮棒を振って、しっかりまとめ上げてくれるところが見えるフィルムだから。俺も制作側のひとりとして、毎回のオンエアを観ながら、援護射撃できたら、と思っています。みんなで一緒にフィルムを作れて楽しいのが一番で、それをみんなが楽しんでくれてたり、毎週のように話題に上ったりするのは、ほんとにありがたいなって思いますね。

――Netflixでいっとき『愛の不時着』を超えたって聞いたけど、それって作品の熱量が伝わってるからだし、作品が純粋に面白いから起きる現象ですよね。

鈴木:そうですね。(原作の)秋さんも、今回脚本の監修もしていただいて、普通だったら「ここ削っても大丈夫?」みたいなところも、秋さんが納得の上で、頑張って削ったりして、まとめ上げてくださっていて。実際、アフレコしてるときにも、セリフの添削はけっこうやっていて。細かくやり取りをさせてもらってるから、一語一句の間違いがないというか、「削ったから何かがなくなっちゃう」ってことが少ないんですよね。削ったからこそのスピード感が出るし、それを観た上で小説を読むと、より緻密さがわかったりするから。観ていて、「ちょっとここで、気持ち的にはんなりしたいなあ」みたいなところでも、まる無視して次に行く、みたいな(笑)。その感じが、だんだん中毒性を帯びてくるというか。

――確かに、細かいところが気にならない感はありますね。設定的にもうちょっと説明欲しいなって一瞬思うんだけど、途中からどうでもよくなってきて、気づいたらこのキャラ好き、みたいな(笑)。

鈴木:(笑)そうそう。あれはほんとに、絵コンテの妙ですね。画面の見せ方や視線誘導がすごく上手いから。田村さんに思い切りのよさがあって、すごくいい方向に振り切ってくださっているので、俺らも「このワードだけに注力して、意味のある言葉にしよう、際立たせよう」とできました。音響監督の納谷(僚介)さんも、丁寧に考えてくれていて。新しいキャラが出てくるたびに、セリフに関して細かく見てくれて、ニュアンスのフックが抜けないようにディレクションされてるから、細かいことが気にならないんだと思います。

――「アノス・ファンユニオン」とかも、いきなり出てくるじゃないですか。「いつからそんなの組織してたんだよ?」って一瞬思うけど、楽しいからどうでもよくなる(笑)。

鈴木:(笑)あれは面白いですね。ミサが出てきた瞬間に、ファンユニオンができ上がるから。そこでミサのキャラクター自身もバーンと出てくるし、そっちにも目が行く。その視線誘導が、ほんとに絶妙なんですよ。でも、その後にちゃんとファンユニオンの個人個人にもフォーカスを当ててあげている。そういう、推理小説の解決編みたいなものが、どのキャラクターにもありますね。そこが、このフィルムの面白さのひとつだと思います。

――そういう意味では、鈴木達央演じるアノス様は、出てきて5秒で「最高だ!」ってなったわけですが。

鈴木:田村さんと大沼さんはずっと「スマートな上司でいてほしい」と言っていて、そこがけっこうキモになっていて。俺の中では、二千年前から現在と呼ばれる世界に転生してきてるから、ちょっと時代劇っぽい感じでもいいのかなって。もう、『水戸黄門』のように印籠を出すことがアノスの強い力で、シャキっとやるのが『暴れん坊将軍』みたいな。それを、「もっとスマートにしたい」って言われたときに、自分の中で固めちゃってた部分がほぐれて。それは何かというと、アノスの人となりを作っていくときに、確かに二千年前の人なんだけど、新たな世界でまた自分を新しく楽しもうとするのであれば、確かに人って変わるよねって。「スマートな上司」って言葉で、人が劇的に変わる様に対しての受け入れが、すごくできた気がします。二千年前から転生して、あの両親と出会ったことをきっかけにしてあげれば、もっといろんなものを柔軟に見ることができるなって思ったんですよ。魔王然としているけど、結局裏側でも何かを働く人間でないといけない、逆に学園にいるときは平和をちゃんと謳歌しよう、新しい自分を楽しもうっていう気持ちが生まれるようになったから。「新しい自分を楽しむ」が、今回の作品を通してすごく大きくなっていった感じがするかな。

――なるほど。アノスが二千年後を楽しもうって思うスイッチは、どこで入ったんでしょうか。

鈴木:俺は、サーシャ、ミーシャのくだり(第4話)が一旦終わった瞬間に、すごくピンときた感じがありました。「あっ、なるほどね」みたいな。ミーシャの「ありがとう」って言葉を聞けたときに、「これが、自分が望んでた世界なんだな」って。「この世界を、よりちゃんと見なくてはいけないな」って思うようになったというか、この世界で何が起こるのかを楽しもうじゃないかっていう感覚になって。なんかね、5話くらいから「もういっかな」みたいな感じで(笑)、楽しみ方のベクトルも、ちょっと目線を下げた感じ。そこまでは、「この世界はどうなってるんだろう」っていう観察眼で世界を見てたけど、そうじゃなくて、同じ目線に立って物事を楽しむ、自分から下に降りてコミュニケーションするアノスにできたかなと思います。

――大沼さんもおっしゃってたけど、「アノス様」と呼ばれる存在が作れたら勝ちだと。で。実際「アノス様」になってる。だからこの作品は面白いし、勝ってると思うし。

鈴木:もう絶対的に、俺がどうこうじゃなくて、パッと見たときに「アノス様だ」ってなったら勝ちですよ。ひとつ大きく変わっちゃったのは、6話まではみんなでアフレコできてたんだけど、7話以降、実はバラバラで収録していて。いろんな制約がある状態で録っていて、それがすごく不安ではあったし、6話までの間に俺は何がこの座組の中で作れたのか、後半戦をどうしていかなきゃいけないのかは、座長としてはすごく考えたところではありました。アノス像がしっかりあって、その声が頭の中で鳴るようにしたかったし、初めて観る人にとっても、観た瞬間に「こういう感じの作品なんだ」って一瞬でも伝われば勝てるなって思ってたので。だからそこは「伝われ、伝われ」と思いながらやってました。で、ありがたいことに、キャストも歳が近い連中がたくさん来てくれたし、普段よくしてもらってる先輩たちも参加していて、「ああ、達がやってるからね」みたいなところで、全部納得しながらやってくれたことに、すごく感謝してます。ほんとにまわりの人の支えがあって、ちゃんと俺を座長として扱ってくれて、「達が大事にしているものを大事にしよう」って作品に向かっていってくれる人たちがいたから、それを感じられたのはとても大きかったですね。

――特定の話数で見せ場がある人や、初めて現場に入ってきた人もすごくやりやすいというか、自分の力を発揮しやすい土台を、作品全体として6話までに作れてたんでしょうね。

鈴木:ありましたね。そこは、田村さんがすごく大事にしてたと思います。田村さんは、作品の中でなんか新しい出来事があると、必ずファイリングした設定資料集をバーッて持ってきて、「次、こうなるんですよぉ~」って言って、全部ネタばらしでイメージボードから全部見せてくれるから(笑)。田村さんは、このフィルムをなんとしても楽しいものにしたいし、時間があれば全部こだわりたいって思ってやってくれていて。たぶん、そこに自分が一番影響されたと思います。田村さんが考えることを叶えてあげたいなあ、と思いました。で、大沼さんが「また暴走してる」って言いながら(笑)。

――(笑)総監督・大沼さんと監督・田村さんのコンビも、すごくいいですよね。

鈴木:うん。大沼さんも大沼さんで、昔は暴走タイプだったから(笑)。それもあって、すごく面白い。俺は、暴走してる田村さんを見て、「ああ、この人喜ばせたいなあ」って思いますし(笑)。

――『魔王学院』のように、ちゃんとみんなで愛情を持って熱く作ってる作品が受け入れられてることって、ほんとに痛快だなあ、と思いますよ。

鈴木:嬉しいですね。スタッフも時間ギリギリの中でやってるし、その中で「もっともっと」って思うところはあると思うけど、それでもここまで作り上げてきて、それがみんなの「楽しい」にちゃんと直結してるのは嬉しいし、楽しいですよ。

魔王学院の不適合者

魔王学院の不適合者

魔王学院の不適合者

観てくれる人にとってのイマジナリーフレンドになれるのが、一番の理想

――TVアニメは、キャスト、スタッフ、絵を作る人、演出する人、すべての力を結集した総合芸術であるって、よく言うじゃないですか。

鈴木:そうですね。

――まさに『魔王学院』は、そういう作品ですよね。で、さっき言った「みんな愛情を持って熱く作ってる作品」と矛盾することを言うと、こういう見方をされるのは不本意かもしれないけれども、『魔王学院の不適合者』という作品は、もう完全に鈴木達央なんですよ。

鈴木:なんでだよ(笑)。

――つまり、鈴木達央以上に、アノス・ヴォルディゴードを魅力的に表現できる演技者は絶対にいない、と断言できるってことで。

鈴木:それは嬉しいです。

――もう、鈴木達央に演じられるために生まれたキャラクターなんじゃないか?と。

鈴木:それはありがたいですね。俺、そう言ってもらえるキャラが多くて、それをいつも目標値にもしてるんですよ。だから、実際にアフレコ入ったときに、拓篤(寺島拓篤、レイ・グランズドリィ役)にも言われたし、他にアノスを受けてた役者からも、それを言われてて。「ほんと、達っぽいよね」って。俺の中身を知ってると、すげえわかると言われました。もう、ほんとまんまだから(笑)。でも逆に、「これ意外かもね」って話もずっとしていて。「みんなが知らない達央が、今まで絶対見せてこなかったところ、あまり出してこなかったところが、この作品を通して見える」って言われたときに、「それはそうかもね」と。自分自身を役に透けさせることを好んでもいないし、キャラクターや作品を楽しんでもらうのが一番で、その付属物として、たまたま俺たちにもフォーカスが当たるくらいでいい、と思ってるので。

 その考えはずっと変わらないけど、俺のことを知ってくれてる人が「アノスは達っぽい」と言ってくれるのは、俺の中ではありがたいなあ、と思ってます。ちょっと話はズレるけど、4月からSNSを始めて、自分のパーソナルな部分を皆さんに見ていただくことで、、ある意味すごくいい効果として出たのかなと思います。

――それは絶対にあるでしょうね。SNSを通して、パーソナリティとか実際に思っていることが伝わったりしてる状況と、『魔王学院』でアノスが魅力的に見えることは、確実につながってるでしょう。

鈴木:そうですね。そこは、自分では想像してなかった思わぬ副産物って感じではありました。いろいろ仕事をしてきた中で、そうじゃない面もいい形で出していけるようになってきたかなと思います。自分の中での落ち着きプラス、環境も変わったりして、変えるんだったら今かなって思ったし、どうせ見える雰囲気も変わるんだったら、思いっ切り変えてやろうっていう。10年くらい前のラジオとかのイメージを持ってる人は今でもいるかもしれないけど、その中で、俺は一緒にやってきた拓篤が言ってくれたことが嬉しくて。「達の、外から見えるイメージって絶対そっちじゃん。達自身がそれを否定しないから。でもお前、中身違うじゃん。たぶん、このアニメ観た人ビックリすると思うんだよね」みたいな。

――アノス様がイメージを180度覆すっていう。スマートで、優しくて、カッコよくて、熱いヤツでもあるアノスをこれだけ表現できる役者、それが鈴木達央であるって見せられた人のイメージは、一気に変わるんじゃないかな、と感じます。

鈴木:そうそう。だから、混乱だよね。俺的にはそれは嬉しいんですよ。

――でも、実際には元からそういう人なわけで。

鈴木:本来はね。だから俺からすると「いや、別にいつもどおりですけど」みたいな感じだし、「別に言われてできないことはないよ」っていう気持ちでマイク前に立たせてもらってるから。実際、「アノスの理解度がすごいですよね」ってみんなは言ってくれてるんだけど、俺からすると理解できないことはひとつもなくて。

――もはや、理解とかのレベルじゃない感じはしますよ。

鈴木:そうかな? なんか、わかるんだよね。お母さん役をやってる 豊崎(愛生)くんも、「ほんと、達さんは訊いたら全部答えてくれる」って言ってるし(笑)。

――自分が言いたいのは、理解する・しないじゃなくて、もう全部鈴木達央が入ってますよっていう。

鈴木:そうですね(笑)。

――注目されるべきはあくまでキャラクターだという考えがある前提で、アノスに関しては人間・鈴木達央が滲み出てると言わざるを得ないんですよ。

鈴木:それこそ、スタッフとかみんなが、俺を見て「アノス様」って言ってくれるのは、一番手応えがありますよね。俺からすると、それこそが「キャラクターがちゃんと先に行ってる状態」を体現できてることになるので、それだけで俺は満足なんですよ。その先に、俺が滲もうが何しようが、アノスが先に行ってくれてるから。

――そう。で、アノスがその場所にいるのは、鈴木達央が滲んでるからなんだと思う。アノスだけがひとりで立ってるわけではなくて、みんなが「アノス様が好き」ってなるのは、そこに鈴木達央が入ってるから。他の人がやってたら、同じことにはならない。

鈴木:(笑)それはもう、最上級の褒め言葉ですね。オーディションをするときも、自分がその役をやれること自体が、俺からするとスペシャルなことだから、そのときだけは俺のものだって気持ちでいるんですよ。アノスもそうで、「こいつはもう俺のもんだ」って思うし、オーディションがあるわけだから、競ってきた人たちに「無理だ、この人にはかなわねえ」って思うものになってないといけないとも思うし、やっぱりそうあるべきだって思います。

――実際、あえて自分を滲ませようとはしてないでしょう?

鈴木:そうですね。その上で、最終的にはそれが見えるって、俺をよく知ってる人たちに言われるから、そこは不思議だなって思います。しっかりお芝居として構築してるはずなのに、さらにそういうものが出るのか、と思っていて。でも、それが気持ちいいなあ、と思う部分もあるし、自分の中でのハードルだと思っていた部分を越えられたなって感じがしますね。

――お芝居は人がやるものであって、技術的に構築したもの、完成されたものはもちろん素晴らしいんだけど、さらにそこに演じ手の人柄とかが加わることで、より魅力的になることがある。それが、おそらくフィクションのキャラクターを作る上で一番の理想形なんじゃないかな、と。

鈴木:そうですね。存在してないものも、ほんとに存在させることができる、しかも声だけでそれができるのは、ほんとに理想。観てくれる人にとってのイマジナリーフレンドになれるのが、一番の理想ですね。だから、アノスが独り歩きして、アニメが終わった後も、観ていた人の中で「アノスがずっといるんだ」って思ってもらえたり、原作の続きを読み始めたときに、いつまでも俺の声が鳴っていてくれたら嬉しいし、そこを目指したいよね。血の通ったものにしたいし、「フィクションだけどフィクションじゃねえんだよ」って、なんか矛盾してるけどずっと言い続けたい人だから。結局、フィクションに救われたり、裏切られたりを繰り返して、ここまで来てるし。

――作品に触れて感動する経験自体は、フィクションではないし。

鈴木:それ自体は、真実の体験として残るので。でも、どうせ残るんだったら、簡単にできるものじゃなくて、観てる人たちの思い入れが強すぎるんだけど(笑)、みたいな感じまで育てたいし、少なくとも俺が出会った役たちは、全部そうなるように務められたらなあって、いつも思ってますね。

鈴木達央

俺にとって『魔王学院の不適合者』は、10年ぶりにできた「全員アニメ」

――先に、ミーシャ役の楠木さん、サーシャ役の夏吉さんに話を聞かせてもらったんですよ。座長・鈴木達央へのメッセージとしては。「すごく尊敬してます」「こんなに向き合ってくれる人はなかなかいないです、これからも一緒に現場に立てるように頑張ります」という言葉をもらったんだけど、彼女たちにメッセージを伝えてほしいんです。

鈴木:ふたりには厳しいことを言ったりもしたけど、それを言いたくなるくらい、彼女たちは成長していて。人が1クールでこれだけ成長するところを、初めて見た気がします。だから、本当にすごいと思ってる。彼女たちのいいところを挙げようと思えば、いくらでも出てくるし。ともりくん(楠木)は、自分の中で作っちゃってた役の枠組みを壊すようになったと思うし、そこから一歩踏み出すお芝居をやるようになったと思います。「ミーシャってこうかもしれないけど、違う側面もあるかもしれない」って、しっかり考えながらお芝居するようになったことで、発想の自由度が広がって、彼女自身が想定している以上のものがいっぱい出てきてる感じがする。ゆうゆ(夏吉)は、サーシャがすごく難しいテンプレート的な役なんだけど――彼女がすごいところは、何の気なしにふっと言うセリフが、ものすごく上手いんですよね。ほんとに自然に出る言葉を自然にしゃべるから。「それ、考えてやってる?」みたいな。それは、彼女が持ってる感性、技術で補えないような部分だし、その上でサーシャの個性をどうつけるかをすごく考えて、自分のフィルターを持つようになったから、サーシャ自体がテンプレートじゃなくなって。彼女たちの成長については、語ろうと思えばもっといっぱいありますよ。

――なるほど。では最後に、『魔王学院の不適合者』という作品が、鈴木達央にとってどんな存在であるか、を聞かせてください。

鈴木:大沼さんとガッツリ組むのは、実は『バカテス』(『バカとテストと召喚獣』)以来なんですよね。

――10年越しくらい?

鈴木:そうですね。だからそれもあって、俺の中では、当時自分の中で考えていた、「全員でアニメ作る」ってことをやりたくて。あのときは俺も全然若かったし、大暴走するのが一番正しいと思ってました。馬鹿なことをみんなでやろう、それをフィルムに閉じ込めてやろうって思いながら、みんなで馬鹿なことをやってたし、監督も一緒になって馬鹿騒ぎしていて。そういう、全員で作るアニメがやりたかったし、今回はそれを目標にしていて。だから俺にとって『魔王学院の不適合者』は、10年ぶりにできた全員アニメなんだよね。もちろん状況は変わったし、コロナみたいに自分たちにとっては見えない敵みたいなものもできたかもしれないけど、それもものともしないくらいの、全員アニメができたと思います。

取材・文=清水大輔  写真=北島明(SPUTNIK)
スタイリング=久芳俊夫(BEAMS) ヘアメイク=加藤ゆい(fringe)

鈴木達央

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