アイドルマスター 15周年の「今までとこれから」⑥(双海亜美・真美編):下田麻美インタビュー

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公開日:2020/11/11

『アイドルマスター』のアーケードゲームがスタートしたのが、2005年7月26日。以来、765プロダクション(以下765プロ)の物語から始まった『アイドルマスター』は、『アイドルマスター シンデレラガールズ』『アイドルマスター ミリオンライブ!』など複数のブランドに広がりながら、数多くの「プロデューサー」(=ファン)と出会い、彼らのさまざまな想いを乗せて成長を続け、今年で15周年を迎えた。今回は、765プロのアイドルたちをタイトルに掲げた『MASTER ARTIST 4』シリーズの発売を機に、『アイドルマスター』の15年の歩みを振り返り、未来への期待がさらに高まるような特集をお届けしたいと考え、765プロのアイドルを演じるキャスト12人全員に、ロング・インタビューをさせてもらった。彼女たちの言葉から、『アイドルマスター』の「今までとこれから」を感じてほしい。

 第6弾は、いたずら好きな双子のアイドル・双海亜美&双海真美役の、下田麻美に話を聞いた。10代でオーディンションに臨んで『アイドルマスター』への出演を勝ち取った彼女は、ふたりのアイドルをステージの上で体現するという稀有な経験を通して、何を感じてきたのか。冒頭から、熱く語ってもらった。

双海亜美
(C)窪岡俊之 (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

みんなが想像している「亜美と真美が目の前にいる」をさらに超えて、感動を届けたい

――今年の7月に、『アイドルマスター』のゲームが稼働してまる15年になりました。この15周年について、まずはお話聞かせてもらえますか。

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下田:亜美と真美の収録を開始したのが、わたしが17歳のときでした。なので、実質わたしにとっては18年目なんですよ。ついに、彼女たちと過ごす時間が、人生の半分を超えてしまいました。こうして作品が進行して、15周年という大きな節目を迎えられることって、役者としてもなかなか体験できないすごいことなので、素直に嬉しいです。10年目までは、ゴールに向かって走ってるような感覚がありました。ドームという一大イベントが10周年の節目としてあって――やっぱり、ドームは『アイドルマスター』にとって特別な大舞台。アイドルとキャストが一体化していくような、リアルと現実がひとつになっていく感覚をあらゆるシーンで感じてきたけど、ドームのときは特にそれが大きくて。「これが、彼女たちが見た景色なのかな。それに近いものが今、自分たちの目に映ってるのかな」って感動していました。

『アイドルマスター』はトップアイドルを目指していくコンセプトのゲームなので、10周年のドームは外せない大きな目標でした。みんなも、目をキラキラさせて、一生懸命頑張ってたし。でも、それと同時に、絶対に成功させたい気持ちと、これが終わったら自分たちはどこに向かったらいいのかわからない感覚もあって。10周年に向けて、何がなんでもこの作品をつないでいかなきゃいけないっていうモチベーションと、同時にプレッシャーでもあったので、ドームという大きい目標に到達したらどうなるのかなって。変な話、そこで終わるのが美しいと思えてしまうくらい、ドラマティックな10年間でした。

 なので、10年目までは夢見てた未来に向かっていたけど、そこを過ぎたらどこに行くのかわからない不安もあった中で、今はこうして15周年迎えられていて。その間の5年は、決して派手な活動ではなかったかもしれないけど、プロデューサーミーティングとか『初星演舞(THE IDOLM@STER ニューイヤーライブ!! 初星宴舞)』をやったり、CDも出させていただけていて。10年目は期待、プレッシャー、不安、いろいろあったけど、そこから5年が過ぎた今、「まだまだ必要としてもらえてるんだ」って感じられるシーンがいっぱいあったな、と感じてます。自分たちを必要としてくれてる人がこんなにいて、まだ会ってない人もまだまだいっぱいいるんだなって、この5年間でほんとに感じました。この5年間は、小さなことのひとつひとつに感謝できるようになった時間だったなって思います。

 こういう気持ちを大切にして、今度は20周年に向かいたいと思うし、15周年をあまりお祝いできていないのはすごくもったいないと思うので、15周年であることをちゃんと日々実感して、この幸せを噛み締めながら、駆け抜けていきたいなって思います。あと、この15年間で見てきた景色って、もはや765プロだけでは絶対見られなかったなって思ってるんです。だから、まだお会いしてないキャストさんもたくさんいるんですけど、『アイドルマスター』の他のタイトルに関わっていらっしゃる皆さんにすごく感謝しているし、今後それを伝えられる機会があったらいいなって思います。

――なるほど……冒頭から、一気に5分くらいしゃべっていただきましたが(笑)。

下田:あっ、すみません(笑)

――10周年のメットライフドーム、当時は西武ドームですかね。最初にゴールとして位置づけていた場所に立ってみて、ステージを降りたときにはどんな気持ちになったんですか。

下田:たぶん開催の2,3年前の時点で教えてもらってたはずなんですよ。それを聞いたときは「ついにかあ」っていう気持ちが大きくて、どんなイベントになるのかは想像してなかったので、ふたを開けてみたら5時間半以上でビックリしたんですけれども(笑)。正直に言ってしまうと、わたし自身は悔いが残っている部分もあって「もっとやれたのにな」って思っています。「今だったらもっとこうしたいな」という気持ちがあるのはいいことだと思うんですけど、当時は不完全燃焼の感じもありました。

――それは、楽しむとか楽しませる以前にで、無事やり遂げることに意識が行き過ぎた、という感じだったんですかね。

下田:たぶん、そこだと思います。2デイズあって、『アイマス』全体としての10周年でもあったので、出演者も多かったし――みんな、すごく個性的なわけですよ。めちゃくちゃキラキラしていて。もしかしたら、どこかで他のメンバーと自分のパフォーマンスを比べてしまっていたのかもしれないですね。今は、やっと表現したいことが100パーセントに近い形で表現できるようになったと、自分では思っていて。この3年くらい、ですかね。さっきは10周年に向けてゴールに向かってる感覚があると言ったけど、逆に10周年をすぎてからのほうが、進化できている感じがします。だからこそ、10周年のときに悔しかったからもっとここはこうしたいな、と考えるようになれたし、そういう意味ではステップアップにつながるライブだったのかもしれないです。

――10年でゴールテープを切ると思っていて、切ったあとにパフォーマンス面の成長が待っていた。

下田:ほんとにそんな感じです。もちろん、10年目までも成長はあったんですけど、わたしにとって亜美/真美はすごい存在で。芸達者で、ザ・エンターテイナーだなって思ってるんです。自分も、ステージに『アイドルマスター』の亜美と真美として立たせてもらってる以上は、同等でいなければいけないって思っていて。ふたりを表現しながら、みんなが想像している「亜美と真美が目の前にいる」をさらに超えて、感動を届けたいっていう、わりと高めなハードルが自分の中にあるので。だからこそ、思いはあるのに、自分の身体や表現がなかなかついていかないと感じる年月が、ものすごく長かったんですね。それが、『初星宴舞』のときに、やっと自分が表現したいものにたどり着けた感覚がありました。

――キャストの皆さんは声優なわけで、歌って踊るために表現の世界に入ったわけではないですよね。でも、演じるアイドルに近づくための努力をしてきた。その過程で、間違えない・やり遂げることにまずは集中して、「楽しむ」まではいけなかった、という話は、わりと皆さん共通してますよね。

下田:もう、ほんと同じですね。もちろん楽しかったんだけど、練習してきたものを見せることでいっぱいいっぱいだったと思います。今はもう、練習でも毎回同じものにしたくない気持ちがあって。練習の時でも、必ず笑いに持っていきたくなりますね。「何やってんだ、こいつ」「またやってる」ではなく、「また見たことないことやってるよ」って思わせたい。それは、レッスンでもイベント本編でも、常にそういう気持ちが強くあります。それこそ、最初の頃は全然考えられなかったことで。

――遊びがなかった?

下田:そう。7年目くらいまでは、「演じなきゃ!」っていう概念が強すぎました。みんなを楽しませるのが亜美/真美だと思うんだけど、どうしてもわたしの地声と亜美/真美の声にはギャップがあるので、自分の声をなるべく近づけることばっかり考えてました。そのマインドは、基本的には変わってはないんですけど、なんですかね、7周年くらいから、なんか歌えるようになりました(笑)。これは長年やってきた積み重ねなのかな、と思うんですけど。亜美/真美の声でしっかり最後まで歌い切れるようになったら、今度はやってみたいことがどんどん生まれてきて、欲が出てきて、ライブでもカメラマンさんを無駄に使いたくなってきちゃって(笑)。今では、ライブの前のゲネプロの日になるとカメラマンさんがわたしのところに来て、「カメラどうしましょう?」って訊いてくれるようになりました(笑)。

――(笑)話はさかのぼるんですけど、2005年に『アイドルマスター』が始まったときは、まだ下田さんは10代だったんですよね。

下田:そうですね。もう、めっちゃ覚えてますよ。16歳の秋くらいにオーディションでした。最初、伊織を受けたんですよ。セリフがもらえるのかなと思ってたら、セリフがなくて、「自分で考えてください」って言われて。そういうパターンのオーディション、その後1回もないんですけど、そのとき考えたのがヤバい文章で(笑)。「わたしは、マライア・キャリーみたいになるんだよぉ」とか。(笑)。そうしたら、「今度は双海亜美ちゃんでやってください」ってお話をいただいて、年をまたいで1月上旬頃に、マネージャーから「サクラサク」ってメールが来ました(笑)。

――(笑)そのメールを受け取って、どう思ったんですか。

下田:めちゃくちゃ嬉しかったですね。だって、最初に受けたオーディションで受かるなんて、すっごくラッキーじゃないですか。嬉しかったし、当時はまだ養成所の1年生だったので、担当の講師の先生も「下田、よかったじゃ~ん」って喜んでくれて。「ここから夢のような日々が広がっていくんだ」って、幻覚に包まれてました(笑)。

――(笑)急に前途が広がったわけですね。

下田:そうですね。当時、時代的に「萌え」っていう言葉が世間を騒がせてたんですよ。いわゆる、もともとの新芽が芽吹く様子、みたいな意味じゃなくて、思わずキュンッときてしまうというか、ニヤ~ッとしてしまうというか、そういう表現が流行っていて、「萌えってなんだろう?」って思ってたんですよ。でも、オーディションを受けて決まったときに、「これはもしかしたら、わたしは萌えってやつをやれるんじゃないか?」って思って。萌えをやって、「萌え~」って言われたいと思ってました(笑)。当時は自分を過大評価してたし、「わたし、これから世間を萌えさせるんだろうな」みたいな、謎の自信があって――自分のイメージとしては、結果思っていた方向にはなってないですけど(笑)。

双海亜美
(C)窪岡俊之 (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

『アイドルマスター』は、宝物であり、家族であり、かけがえのない存在

――演じ手である下田さんが考える亜美と真美のいいところって、どういうところですか。

下田:わたしだけが知っていることってあまりない気がしていて。もうみんなが知ってることがすべてのような気もするんです。わたしが一番尊敬しているところは、人を楽しませようとする気持ちの強さ。これは、わたしも常にそれを見習いたいと思っているし、特に近年はそれを目標としてるくらい、大好きな部分です。いたずら好きって、悪く言うとトラブルメーカーでもあるし、なんでいたずらしちゃうかというと、根源はみんなが驚いて笑う顔が見たいからなんですよね。わたし自身は、ザ・真面目タイプの人間なので、よほど仲良くないと人にいたずらなんてできないんですけど、それをどんどんやってまわりを笑わせて、誰かの心を解きほぐしたりできるのは、もう才能だと思っていて。

 亜美と真美は、人を喜ばせるのが大好きで、もう誰よりも人の気持ちがわかるというか、誰よりも笑顔の力を潜在的にわかっているんだと思うし、一番いいところはそこだと思います。わたしもそういうところをたくさん見習いたいし、ライブとかイベントとか、CD収録もそうですけど、常にそれは頭に置いてますね。隙があれば常にみんなを驚かせてやるぞって思いながら、演じています。

――さっき亜美と真美はザ・エンターテイナーであるという話が出てましたけど、自身が演じる役柄をザ・エンターテイナーと定義できるって、素晴らしいことですよね。同時に、それってかなりハードルが高いことでもあるのかな、と。

下田:そうですね。でも、もともとはそこを目指してたところもあるし、年月とともに「下田、ほんとエンターテイナーだね」って言っていただけるようになりました。最初はただ、ひとりでそれを目指していたけど、765プロの中では後輩で、場数も踏んでないから失敗しちゃったこともいっぱいあって。でも、いろんなことを乗り越えたり、皆さんの技を盗ませていただいたりして、ようやく自分のポジションを見つけることができたときに、まわりから認めてもらえるようになって。堂々と、「自分はエンターテイナーだな」って思えるようになりました。

 わたしは歌って踊ってしゃべることしかできないけど、その中でいかに革新的なことができるのかは、常に毎回のライブでテーマにしています。カメラとかも、カメラ芸って皆さんには言っていただくんですけど、カメラを見て何かをやるのがすっごい好きで。「こんな使い方するのか」って思われるところまで行きたいと思うし、カメラマンさんの「だったらこうしてみようかな」って意欲をかき立てられるような表現をしたいです。そういうことを考えてるときに「エンターテイナーだな」って思います。

――まさに、亜美と真美を演じるべくして演じている感じがしますね。

下田:そうですね。だからこそ、嬉しいですよね、亜美と真美は、わたしから生まれたという部分も大きいわけじゃないですか。もし他の人が亜美と真美に合格していたら、たぶん違う亜美と真美になってたんだと思うし。そう考えるとすごく光栄だし、彼女たちを見て笑ってる人がいると、少なくともそこにはわたしの成分も入っているわけで、わたしが人を幸せにすることができたんだなって感じられるので、嬉しいです。

――長い時間を一緒に過ごしてきた765プロの他のキャストさんとのお話も伺いたいです。

下田:わたしは、ほんとに765プロを全員尊敬していて、全員が大好きです。その中でも、『7th(THE IDOLM@STER 7th ANNIVERSARY 765PRO ALLSTARS)』のときに、たかはし智秋さんに言われた、「ドヤ顔でいけばなんとかなるわよ」という一言が、すごく印象に残っていて。言われてみたら、ほんとにそうだなって思うことが多いんですよ。たとえ失敗しても、「ドヤ」ってしてたら、それが正解になるんだなって思いました。もちろん失敗はしたくないですし、失敗しないようにやらないといけないとは思ってるんですけど、智秋さんの一言で、プレッシャーがスーッと取れた感じもあったし、智秋さんらしいですよね。

 あと、ライブのときに一番背中を押されるのは、若林直美さんです。若林さんって、いつでも全力なんですよ。抜かりなく全力でやっていて。技術はもちろん、もう情熱が動きに出てる感じなんですよね。あれはもう、たぶん一生真似できないなって思うし、『アイマス』にはたくさんキャストがいるけど、あれだけエネルギッシュなパフォーマンスができるのは若林さんしかいないなって。「やろうよ!」ってチームをひとつにまとめてくれる若林さんがいるからこそ、765プロはこんなに熱いんだろうなって思います。

――『アイドルマスター』と長年向き合ってきて、下田さん自身にとって大事な曲、あるいは音楽的に好きな曲について教えてください。

下田:“M@STERPIECE”かなあ。“M@STERPIECE”と“虹色ミラクル”はほんとに好きですね。ドームもそうだけど、劇場版も大きな目標のひとつだったので、やっぱり記憶の中で色濃く残ってますね。歌詞も、自分たちの活動とすごくリンクするんですよ。《夢を初めて願って/今日までどの位経っただろう》っていうサビの歌詞を歌うたびに、今まで起きてきたすべてのこと、プロデューサーのみんなが知ってることも知らないことも頭に浮かんできます。この歌を歌うと、全部はキラッキラに感じるんですよ。悔しかったことも、上手くいかなかったこともたくさんあるけど、そのひとつひとつが尊くて、輝いてるものに感じさせてくれる曲です。

――今回の『MATER ARTIST 4』の亜美のCDに収録されている新曲の“ポジティブシンカー!”、これがまた非常に亜美感がある曲ですよね。とにかく、弾けてる。

下田:そうですね。「亜美味の強い曲」というか(笑)。実際にこの曲が来たときに、わたし的にはかなりストレートで来たなあ、と思いました。みんなが思い描いている双海亜美を、今のデジタルサウンドで形にしてくださったんだなあって。王道だからこそすごく悩んだんですけど、とにかく「もういい、かわいくしちゃおう」と思って歌いました(笑)。いろいろ複雑なことも考えたけど、亜美のかわいさを全力でこのCDで伝えようじゃないか、と。亜美に関しては「ぷりちーに」なので(笑)。どっちの面も持ち合わせてるんですけど、亜美が「ぷりちー」で真美が「せくちー」っていうイメージは、わりかしあると思うんですよ。そこを裏切ってもよかったんですけど、やっぱりわたしの中で亜美は、妹だし、ちょっと子供っぽいところが多いほうがいいのかなあって思ったので、かわいくしました。

――『MASTER ARTIST』のカバーは常に選曲のセンスが素晴らしいですけど、“MONSTER DANCE”には驚きました。

下田:いやあ、皆さんおっしゃってますね。わたしはこの曲を今回のリクエストをきっかけに知ったんですけど、こういうチャレンジができてよかったなって、反響をいただいたときに思いました。今の若い子たちに、特にすごい人気なんですよね。ビックリ箱みたいな曲だし、ちょっと表現の遊びがいがありすぎて、「どうしよう、どうしよう」って言いながら収録をしました。“MONSTER DANCE”のミュージックビデオを観たとき、度肝を抜かれたんですよ。同時に、パフォーマンス感が亜美/真美と重なって。「こんな楽しいライブがやれたら超ハッピーじゃ~ん」って言ってる亜美が、即浮かびました。もう1曲の“DIVE TO WORLD”は、めちゃくちゃ難しかったんですけど、かわいくて明るい正統派な女の子である亜美を表現したかったので、“MONSTER DANCE”との違いも楽しんでもらえたらいいなあ、と思いましたし、楽しんで聴いていただけると思います。

――“New Me,Continued”には《変わりゆく景色/変わらない願い》という歌詞がありますが、下田さんにとって「変わらない願い」という言葉は、どんな意味を持ちますか。

下田:最初の頃は漠然と「売れたいぜえ~」しか思ってなかったですけど、常々思っているのは、『アイマス』を好きになってくれた人が、「『アイマス』を好きになってよかった」って思っていてほしいな、ということです。どのタイミングでもいいから、一度でも「『アイマス』が好きだな」って思ってくれた人が、『アイマス』を好きになったことによって、輝ける日常がその人にあったらいいなって、いつも思ってます。それはキャストもスタッフさんもそうで、関わってる人たちみんなが、『アイマス』を通して、何か自分なりに羽ばたけることがあるといいなって思います。あとは、『アイマス』を通してできた仲間と、変わらずに仲よくいてほしいですね。『アイマス』が好き、ただそれだけでつながれた人たちが、わたしたちの知らないところでも絆を育んでいったり、一緒に何かを楽しんだり、悲しみを分け合ったり、そういう一生の宝物であり続けていってくれたらいいなって思います。

――声優としてのキャリアのすべてをともに歩んできた『アイドルマスター』とは、下田さんにとってどういう存在ですか。

下田:神様がくれたもうひとつの人生、みたいな感じですかね。作り上げていく段階から、一緒に成長していけて、同じ景色を見ていける。これって、ものすごいことですよね。わたし自身は、平凡に生きてる普通のひとりの女性だと思ってるんですけど。亜美と真美の人生はそうじゃなくて。目に映るもの全部が可能性に満ちているし、頼もしいPが目の前にいて、仲間がいて、ずっと若さを持っていて(笑)。その中で、成長したり、仲間が増えていくわけじゃないですか。そういう人生って、下田麻美としてはたぶん――まあ、近いものはありますよ。わたしも765プロのみんなと出会えてたわけですけど、わたしひとりの頑張りだけではたどり着けないというか、『アイマス』があったからこそ手に入れられたものが多すぎて、人生を2個歩んでるくらいの気持ちですね。だから、うん、わたしにとっても宝物だと思います。今のわたしのパーソナリティは、『アイドルマスター』なしには絶対語れないと思っているので、宝物であり、家族であり、かけがえのない存在です。

――そして、亜美と真美へのメッセージもお願いします。

下田:ふたりは、わたしは年齢を重ねていくのとは裏腹に、どんどんパワフルになっていってるような感じさえあって。でも、できれば死ぬまで演じ切りたいと思っているので――収録では、いつも苦しい思いをしてるんですけど(笑)。大変なんですよ、ふたりの収録。常にエネルギー100パーセントだから。いつもヒーヒー言わされるけど、ふたりを演じてるときはほんとに楽しいです。だから、これからも全力で楽しませてくださいって言いたいです。あと、かわいいよって(笑)。仲良くいてねって伝えたいです。


取材・文=清水大輔