「“最強の主人公が追われながら目的地を目指す話”を描きたい」『怪獣8号』松本直也インタビュー《「次マン」Webマンガ部門1位》

マンガ

更新日:2021/9/24

(雑誌『ダ・ヴィンチ』10月号より一部を転載しております)

『怪獣8号』
(c)松本直也/集英社

 怪獣大国・日本に、32歳の救世主が現れた──!? 『少年ジャンプ+』史上最速で累計400万部を突破した『怪獣8号』。創作の裏側が著者インタビューで明らかに。

(取材・文=野本由起)

「少し下積みが長かったこともあり、自分がこのような賞をいただく日が来るとは思っていませんでした。驚きましたし、すごく嬉しかったです。投票してくれた読者の皆さんには本当に感謝です」

 実直な言葉で、1位獲得の喜びを語る松本さん。デビューは約15年前、マンガ家を目指したきっかけは『DRAGON BALL』との出会いだった。

「“『DRAGON BALL』のようなマンガが描きたい!”という気持ちは、今でも変わっていません。他に、子供の頃に影響を受けた自覚があるのは『南国少年パプワくん』や『魔法陣グルグル』。アクションシーンでは、冨樫義博先生の作品や『はじめの一歩』からいろんなことを学びました。アニメでは『新世紀エヴァンゲリオン』。放送時に主人公たちと世代が同じだったこともあり、多大な影響を受けました。デザイン面では弐瓶勉先生の影響が大きいです。師である岩代俊明先生の『PSYREN―サイレン―』、澤井啓夫先生の『ボボボーボ・ボーボボ』から得たものも大きいと思います」

advertisement

 このたび1位に輝いた『怪獣8号』は、怪獣と人類の熾烈な戦いを描いたバトルマンガ。

 怪獣討伐を担う日本防衛隊隊員を再び目指すことを決意した日比野カフカは、ある日謎の生物によって身体が怪獣化。追われる立場になりつつも、変身能力を隠して防衛隊入りを志願する。

「映画ではよくありますが、“追われながら目的地を目指す”構造がエンタメとして面白いなと思っていたんです。“最強の主人公が追われながら目的地を目指す話”が描きたいというところから、『怪獣8号』が出来上がっていったように思います。カフカを怪獣にしたのも、防衛隊に追われながら目的地を目指すなら、カフカ自身を最強の怪獣にしてしまうのが一番面白そうだったから。相棒の市川との関係性も、秘密を共有することで魅力的になりそうだなと思いました」

『怪獣8号』
市川の危機にかけつけた“怪獣8号”こと日比野カフカ。彼の変身能力を知る者は、ごく一部に限られている。

 もともと怪獣も好きだったという。

「子供の頃は『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』が好きで、母が買ってくれた怪獣図鑑が愛読書でした。『シン・ゴジラ』の存在も大きいです。このところ怪獣を題材にした作品が多く生み出されているのは、『シン・ゴジラ』に感銘を受けた人たちが作り始めたものがちょうど形になる時期だからではないかと思っています」

 怪獣を、台風や地震といった災害のようなものとして描いているのもユニークだ。

「正義とか悪とかそういうものは、視点を変えるだけで簡単に移ろってしまいますし、お話が説教臭くなりがちです。怪獣は“悪”ではなく、あくまで人間が生き残るうえで乗り越えないといけない災害と位置づけて描いています」(つづきは雑誌『ダ・ヴィンチ』10月号でお楽しみください)

まつもと・なおや●2005年、「ネコロマンサー」で「ジャンプ十二傑新人漫画賞」で十二傑賞を受賞。06年、『赤マルジャンプ』に同作が掲載されデビュー。他の作品に『ねこわっぱ!』『ポチクロ』など。20年より『少年ジャンプ+』で『怪獣8号』を連載中。

『怪獣8号』
『怪獣8号』最新4巻発売中!

あわせて読みたい