菊池勇成「好きになってもらえたら、僕自身も自分をもっと信じられます」【声優図鑑】

アニメ

公開日:2021/9/21

菊池勇成

 キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第269回目に登場するのは、高校生から本格的に声優を目指し、アニメ/アプリ『アイドルマスターSideM』の蒼井悠介役として大きく評価され、人気作品『とある魔術の禁書目録Ⅲ』にも出演した菊池勇成さん。

お芝居以外に、ラジオや生配信などトークがメインのお仕事の幅も着実に広げています。自分のやりたいことはとことん極める、菊池さんの仕事とプライベートについて聞きました。

自分のやりたいことに対して正直です

——今回のために服を新調したそうですね。撮影はどうでしたか?

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菊池:天気がよくて、いい感じに映える写真を撮っていただいたと思います。カメラマンさんがすごいですね。こんなところで撮るんだ!と。写真を見せてもらったんですが、「へ〜、俺かっこいい」と思いました。自分の力じゃないんですけど(笑)。

——(笑)。改めて、声優の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。

菊池:よくあると思いますけど、中学2年生の時に国語の朗読で、先生から「お前、いい声してるな。声優向いてるんじゃないか」って何気なしに言われたのがきっかけです。言われてみれば、小さい頃から、外で遊ぶより、おままごととか、学芸発表会の劇を観るほうが好きだったし、地域でやっているミュージカルに出させてもらったこともあったんです。お芝居といってもいろいろありますけど、声だけで表現する声優はより難易度が高いような気がして、挑戦したいと思いました。

——もともと難易度が高いものに挑戦したいほう?

菊池:どうせやるなら、というか。飽きっぽいところもありますけど、昔から挑戦することは好きでしたね。少林寺拳法も小学校の6年間で黒帯を取りましたし、その他に、野球、サッカー、バレーボール、バドミントン、水泳も。中学では親から「部活だけはやれ」と言われたので卓球部に入りました。けっこうガチな部で、つらかったから辞めようと思ったけど辞める勇気がなく、レギュラーとして残って。高校は放送部と卓球部を兼部して、両方の大会に出させてもらいました。

——部活が充実した学生時代でしたね。

菊池:そうですね。でも高校は、入った段階で声優になることを決めていたので、必須科目しか取ってなかったんです。部活以外はひたすらバイトをしてました。高校2年生の終わりにアミューズメントメディア総合学院の早期入学の合格をもらって、バイトしている期間に車の免許を取り、パソコンと携帯電話を買って、学費までは無理だったけど教材費を集めて。高校の勉強なんか知ったこっちゃねえ!って感じでした(笑)。

——行動に無駄がないですね(笑)。常に前に進んでいるというか。

菊池:頑張ってたなって思います。自分のやりたいことに対して正直なのかもしれません。

——「声優になる」という明確な目標があったからでしょうか。

菊池:影響を受けやすいタイプで、じつは将来の目標がコロコロ変わっていたんです。父親がバーテンをやっていた時は自分もなりたいと思ったし、なんならゲームで『牧場物語』をやっていた時は牧場で働きたいって感じたし(笑)。普通に大学を出てサラリーマンに…と思ったこともありましたけど、声優になりたい気持ちがいちばん強かったです。

——ちなみに、バイトはどんなことを?

菊池:コンビニとか、ファミレスのキッチン担当とか。専門学校に入ってからは居酒屋やカラオケ店などをやっていました。カラオケは働いていると部屋を借りやすいし、空いた時間に声出しができるので、カラオケ店のアルバイトは長かったですね。

自分でも大丈夫だと、踏み込んでみて初めて分かった

——声優になってみて、自分の声の魅力はどんなところだと思いますか?

菊池:世間の方は「天使のダミ声」と言ってくださるんですね。デビュー当初、自分ではそんなつもりではなかったんですが、普段の声が低めなので、少年系の声を出そうとがんばった結果、声質的に裏の声が乗ることがあって。それをきっかけに『アイドルマスターSideM』の蒼井悠介役をいただいたので、魅力のひとつだと言えるかもしれません。低いトーンもマイクに乗りやすいほうなので、少年系から青年系まで幅広く演じていけたらと思います。

——自分の声を客観的に捉えているんですね。

菊池:求められたものを表現するアウトプットが苦手なところがあるので、なおさら自分の声を分析しておかないと…。声のトーンと感情のコントロールも難しいところで。お芝居には正解がなく、感性の問題なので、自分なりの正解を探して武器を確立させていきたいですね。元気系ならすぐに出せるかな?

——では、ご自身で登場するお仕事も多い中、自分の個性はどんなところだと思いますか?

菊池:あえて言えば、ひきこもりかな(笑)。最近はアウトドアに興味を持ち始めて月に一度はドライブに行くんですけど、他はプライベートでまったく外に出ないんですよ。誰かに誘われたら喜んで飛んでいきますけど。自分から喋るきっかけを作るのが苦手で…今後払拭したいなと思いつつ、ある意味でそれも自分のキャラクターなのかなと思います。

——『アイドルマスターSideM』の蒼井悠介は周りの評価も高い役だと。この役を通して得られたことは?

菊池:いろんな“初めて”を僕にくれた作品というか。こうやって自分のことを話しながら思うのは、僕とは正反対のキャラクターなんです。唯一共通するのはポジティブな一面だけど、ずっとポジティブな悠介に対して、僕はネガティブなことを翌日には忘れてポジティブになるタイプ。「ネガティブ翌日持ち越さない」がモットーなので(笑)。

——結果的にはポジティブに(笑)。

菊池:自分が声優を目指すようになってから、声優も映りの仕事が当たり前に増え始めたタイミングで。僕は表に出たがらない性格だし、自分に自信がないから、そんなことができるのか不安だったんです。でも、踏み込んでみて初めて分かることもあるんだなと。ライブも生放送も、最初は緊張していたけど、今はファンのみなさんと対面するのが楽しいと感じていて、その最初のきっかけをくれたのはアイドルマスターだったなと思います。

——『とある魔術の禁書目録Ⅲ』(香焼役)も、とても人気がある作品です。携わってみてどうでしたか?

菊池:最初はびっくりしました。え、出させていただけるんですかって。声優になる前から観ていた作品だし、同世代の中ではアニメ出演の経験が少ないほうでしたから。だからこそ、観てくださる方の印象に少しでも残れたらいいなと思いました。でも現場ではガチガチに緊張しました。目の前に当麻がいる! 美琴がいる!インデックスが…って、もちろん声には出しませんけどね。ファンのような気持ちを抑えながら、役者として作品の一部になれることを意識しながらがんばりました。今だったらもっとできるのに!と思いますけど(笑)。

お会いできる機会を増やしたい。約束ではなく“宣言”です

——プライベートについても伺います。コンビニでよく買うものは何ですか?

菊池:なんだろうな〜。ヨーグルトのR-1かな。500mlの大きいサイズ。最初は風邪予防で飲んでいたんですけど、乳製品だから多少は喉を守ってくれるだろうと。仕事前に飲むことを続けていたら、飲まないと落ち着かないようになりました。効いているかどうかは別として、飲んだら思いっきり声を出しても大丈夫っていう気持ちになれます。あと、パイナップルジュースも定期的に飲みたくなります。

——つい観てしまうYouTubeはありますか?

菊池:最近はキャンプ動画。定期的に見るのは芸人さんの動画ですね。特にNON STYLEさん、タイムマシーン3号さんが多いです。NON STYLEさんはボケとツッコミが最高だし、タイムマシーン3号さんは独特な世界観というか。漫画やアニメがネタになることもあるから、あ〜あるある!って入りやすいですね。

——ちなみに最近アウトドアにはまっているというのは、どんなきっかけが?

菊池:キャブヘイさんっていうゲーム実況者の方が、キャンプの動画を挙げるようになったのがきっかけです。その後、趣味を探すブログの中でドライブをするようになりまして。富士吉田に行った時、富士を観て吉田のうどん食べられたらいいなっていうくらいだったんですけど、『ゆるキャン△』の原画展をやっていて。見たら、ちょうど欲しかったキャンプグッズのコラボ商品が売っていたりして、絵も好きだし、帰ってからすぐに漫画を読みました。アニメも一気見して、見事にはまりましたね。

——どんなところに惹かれましたか?

菊池:女の子たちの掛け合いが純粋に可愛いし、キャンプ地の描き方も感動的というか刺さるものがあって。見開きで景色がバーッと広がって、その中でキャラクターが写真を撮っていたりとか。読めば読むほどキャンプに行きたくなって、道具一式揃えました(笑)。

——あとは行くだけですね(笑)。では、これから声優としてチャレンジしたいことを教えてください。

菊池:正直、こうなりたいっていうビジョンはまだ見えてなくて、ただこの業界から抜けるビジョンも浮かばないんです。まずはコンスタントに代表作を増やしながら、最終的には長くお芝居をしていたいなと思います。

役としても人としても、たくさんの人に好きになってもらえる声優になりたいっていうのはありますね。そうなれば、僕自身も自分のことをもっと信じられるなって。だから今後、お仕事もそうだし、みなさんにお会いできるきっかけも増やしていきたい。これは約束というより“宣言”ですね。

——菊池さん、ありがとうございました!

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

【声優図鑑】菊池勇成さんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

菊池勇成

菊池勇成(きくち・たける) WITH LINE所属

菊池勇成(きくち・たける) Twitter

◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト