小倉智昭を「ピカ一」と賞賛…! 水道橋博士の文章芸が冴え渡る『藝人春秋』第2弾!

小説・エッセイ

2017/12/8

『藝人春秋2』(水道橋博士/文藝春秋)

 浅草キッド名義で発表した『お笑い男の星座2』でのブレイク以降、ノンフィクション作家としても高く評価される水道橋博士。近年は芸能界の怪人・奇人を濃厚に描いたノンフィクション『芸人春秋』が好評を呼んでいたが、その第2弾となる『藝人春秋2』(文藝春秋)が発売。今回は上下巻合わせて700ページという大作となった。

 上巻の『藝人春秋2 上 ハカセより愛をこめて』で登場するのは、橋下徹、タモリ、リリー・フランキー、みのもんた、江頭2:50といった芸能人・著名人たち。そこで披露される逸話は、実際に彼らと間近で接してきた水道橋博士にしか描けないものばかりだ。

 たとえばタモリの章では、知らない人から博士の携帯に「タモリさんのものと思われる財布を拾った」という電話が……という“世にも奇妙な物語”を披露。また江頭2:50を取り上げた章では、彼が池袋のファッションヘルス店で起こしたサイテーすぎるトラブルを暴露している。

 ちなみに博士とエガちゃんは“プロのバットマン”として風俗巡りを共にする仲だったそう。本書は「水道橋博士が芸能人だからこそ書けた本」でもあるのだが、博士の披露するエピソードが面白いのは、博士が怪人・奇人を見つけると積極的に近寄り、トラブルの起こりそうな現場にも自ら身を投じてきたからだろう。中学時代から竹中労の著作を読み、彼に憧れていたという水道橋博士は、やはり芸能界の内側を暴くルポ・ライターでもあるのだ。

 下巻の『藝人春秋2 下 死ぬのは奴らだ』には武井壮、寺門ジモン、やしきたかじん、岡村靖幸らが登場。「わざと雨に打たれ、自分の体温で服を乾かす訓練をしていて風邪をひいた」「30年間トレーニングを継続し、人類史でも最強の男の1人と自認しているのに、他人と戦った実戦経験がない」という寺門ジモンのエピソードも爆笑だが、白眉といえるのは武井壮の章で登場する小倉智昭の描写だ。

 小倉智昭の100m走の自己ベストタイムが10秒9……という逸話も驚きだったが、なぜか博士は彼を描写する際に「フジ“生え抜き”のアナウンサーではなく」「実業家として二毛作で稼ぐ」「間髪を容れず、ジョークをカブせて」「そもそも、話の頭から不毛な議論だ」などと、身体の特定部分に関する言葉を多用。暴走ネタ、危険ネタで名を馳せたビートたけしを原理主義者のように崇拝する、博士ならではの文章芸が冴え渡っている。

文=古澤誠一郎