『ダ・ヴィンチ』2018年6月号「今月のプラチナ本」は、篠原健太『彼方のアストラ』(全5巻)

今月のプラチナ本

2018/5/7

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『彼方のアストラ』(全5巻)

●あらすじ●

西暦2063年の近未来。主人公のカナタをはじめとする9人の高校生グループは、近くの惑星への5日間のキャンプに旅立った。楽しいはずのキャンプはしかし、目的地の惑星に突如出現した謎の球体によって一転。カナタたちはその球体に飲み込まれ、次の瞬間、故郷からはるか遠い宇宙空間に放り出されていた―。彼らは危機を乗り越え、無事生還することができるのか。近未来SFサバイバルストーリー。

しのはら・けんた●2007年より『SKET DANCE』(全25巻)を連載。同作品で第55回小学館漫画賞少年向け部門を受賞。完結後、『彼方のアストラ』を『少年ジャンプ+』で連載。

『彼方のアストラ』(全5巻)書影

篠原健太
集英社ジャンプC 438~490円(税別)
写真=首藤幹夫

編集部寸評

 

この9人のことを、きっと忘れない

全5巻、完結。このタイミングで一気読みするのが、本作の最高の楽しみ方だろう。冒頭からラストまで完璧に組み上げられたミステリーであり、未知の世界での生き残りを目指すSFであり、少年少女が人生を切り拓く成長譚であり、そのうえギャグが盛りだくさん。読者は物語のあちこちで笑いながら、2つの謎に引っ張られてページをめくり続けることになる。彼らはなぜ宇宙をさまようことになったのか。そして、彼らの中にいる裏切者は誰か――。それぞれに苦悩と孤独を抱え、それでもなお笑顔を見せて協力し合い、苦しい旅を乗り越えていく彼らの中に裏切者がいるなんて! 彼らが友情を育んでいく姿に胸を熱くしながら、読者はいつの間にか彼ら9人のことが大好きになってしまっているのだ。精巧なパズルの魅力だけではなく、彼らの涙と笑顔こそが、読者の心に刻み込まれるだろう。

関口靖彦 本誌編集長。訪れる星ごとに特徴的な生態系があり、そこに住む奇怪な生物を採集、調理していく点では「食マンガ」の側面も。多様な要素をひとつの無駄もなく組み上げた驚異的な作品です。

 

巻末の4コマも、あとがきも……

前作『SKET DANCE』が大好きで、あの篠原健太さんが宇宙冒険SFを描くとこうなるのかと驚きながら読んだ。緩急があった前作に比べて、全5巻とは思えないほどの密度の濃さ。巻ごとに大きな転換があり、新たな謎が提示されたり、新事実が明らかになったりと、物語として全く飽きさせない。しかもSFビギナーに対しても細やかな配慮があって、幅広い年代層が楽しめる作品となっている。謎解き、人間ドラマ、ドキドキのサスペンス、ギャグ、ラブコメ、名作へのオマージュ、現代社会に対する風刺など、さまざまな要素をよくもここまで盛り込んだ!という意欲作であり、どのキャラクターにも肩入れしてしまいたくなるほどの愛らしさと熱気が充満している……と褒め言葉にも事欠かない。まっさらな気持ちで一気読みしたあとは心ゆくまで再読して味わい尽くしてほしい。

稲子美砂 本誌3回目の登場にして表紙を飾っていただいた吉沢亮さん。ハードルが高いマンガ原作実写化への出演が多いなか、マンガ好きの一人としてどう挑んでいるのか、熱く語ってくださいました。

 

今の子どもたちのためのSFアドベンチャー

子どもの頃読んだ少年少女向けの冒険小説を読んだときのワクワクを思い出した。大人ももちろん楽しめるけど、この作品を存分に楽しめるのは子どもたちなんじゃないかと思う。よく絵本などは、ロングセラーと呼ばれる世代を超えた名作を読むのに精いっぱいで、今の作品まで手を伸ばせないと聞くが、きっと少年少女向けの小説も似たところがあると思う。でもこの作品は、今描かれた今の子どもたちに向けた彼らのためのSFアドベンチャーだ。若き読者へおすすめできるといいなと思う。

鎌野静華 髪が乾燥と紫外線に人より弱いことを美容師さんに指摘され、色がどんどん明るくなるのも梅雨に爆発するのも極度の乾燥のためと42歳にして知る。

 

あと少しで、きっと届くから

「宇宙で独りが/こんなに/怖いなんて」(1話より)。全5巻を半日で一気読みしてから、再び1巻を開いて唸る。なんとお得な作品なのか……。集められた9人のメンバーは、未知の惑星で、艦内の閉鎖空間で、あらゆる危機に直面する。自分たちが信じてきたことが覆されてもなお、旅は続く。「誰と関わって/どういう経験をするかで/アタシは決まるのね」(35話より)。ラブコメ的にも破壊力抜群の女の子キャラクターたち……。個人的には覚醒したユンファちゃんがツボでした。

川戸崇央 アイコンがすっきり。おハガキありがとうございます! 編集部員の反応が冷めているのはどうして!? 元に戻せと言われないようにがんばります。

 

絵の可愛さに侮るなかれ!な、エンタメ大作

一コマ一コマのなかにセリフ量が結構多いなぁ、などと思いながら読み進めていたら、巻を追うごとにその「必要性」に納得した。随所に複数の伏線が盛り込まれていて、完璧に「作りこまれた」エンタメ大作である。本当は何の予備知識もなしに、一気読みしてください!と言いたいが、所謂「ジャンプ」らしい青春や成長、またギャグ要素など、緩急もあってずっと飽きさせないでいてくれるのもよかった。正直、好んでSFを手に取る人間ではないが、本書には圧巻!の一言でした。

村井有紀子 3年ぶりくらいに友人に会う。私の生存確認をココの文章でしていたそうで……いや、連絡して!(同じような人がいたら普通に連絡くださいね)

 

あの素晴らしいワクワクをもう一度

『トム・ソーヤの冒険』『冒険者たち』『十五少年漂流記』……。小学生の頃、図書室で手に汗握りながら読んだ名作冒険小説のあの“ワクワク感”をもう一度味わえるなんて! 仲間と力を合わせて大きな困難を乗り越える、時に笑いあり、涙あり、淡い恋が華を添え……。物語の楽しい要素がふんだんに盛り込まれている、のに、「あー面白かった!」では済まされない“仕掛け”が本作のもうひとつの魅力。引き伸ばしゼロの簡潔さも嬉しい。安心して読んで、楽しんで、驚いてください。

高岡遼 健康診断目前。昼夜のラーメンも「1日の1/3の野菜が採れるサラダ」を毎朝3パックずつ食べて栄養バランスに抜かり無し。オールA必至!

 

王道ラブコメ展開に悶える!

本格SFの魅力もさることながら、私が感動したのは女の子たちのかわいさ!! 天然、ツンデレ、メガネ……といったヒロイン要素満点の少女たちは、物語が進むにつれどんどん魅力的になる。ツンデレ女子が夢を語る好きな男子をまぶしそうに見て「いいなあ男の子は そうやってグングン前に進むんだ」とつぶやき、「女の子の気持ちなんて知らずに」と目を伏せるシーンの破壊力たるや。どんな非常事態下でも、まっすぐ人を好きになる気持ちは、女の子をすてきに成長させるのだ。

西條弓子 年の差恋愛マンガ特集を担当。さまざまな恋愛観が入り乱れ、読む者の心を容赦なく揺さぶるあやうさ満載。ぜひご堪能ください!

 

 

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