超ロングセラー『仕事は楽しいかね?』に学ぶ、生き方とは?

ビジネス

公開日:2018/9/10

『仕事は楽しいかね?』(デイル・ドーテン:著、野津智子:訳/きこ書房)

 ある一人の男が、吹雪で飛行機が飛ばなくなってしまったアメリカ中西部・シカゴ近郊にあるオヘア空港に26時間閉じ込められる。そこで偶然にも70歳くらいの、恰幅のよい、格子縞のズボンにポロシャツ、ループタイの老人に出会う。そこで「仕事は楽しいかね?」と尋ねられ、ついつい不満などを漏らしてしまう。老人の名は「マックス・エルモア」。大勢の政治家や実業家とコンタクトがあり、企業のトップがアドバイスをもとめるほどの人物だった。

 本書『仕事は楽しいかね?』(デイル・ドーテン:著、野津智子:訳/きこ書房)は男の人生観や愚痴と、それに対するエルモア氏の見解・意見がベースになっている。

 男は、いってみれば「日和見主義」で、未来への確固たる信念も見受けられない。リストラを恐れる「超フツ―」人間。真面目に働こう、出世もしたいとは思っているが、今ひとつ仕事には身が入らず、楽することばかり考えてしまう。かつては独立して会社を興したこともあったが、うまくいかずあきらめてしまっていた。悪くいえば「ヘタレ」人生。「思っていること」も超平凡で、誰でも思い当たるフシがあるのではないか。この主人公のシチュエーションは自分にもあてはまるような気がして耳がいたい。

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 著者のデイル・ドーテン氏は1950年生まれ。スタンフォード大学大学院で経済を学び、1980年に、マーケティング・リサーチ専門会社を起業。マクドナルド、3M、P&G、コダックなどの大企業を顧客にしていた。『仕事は楽しいかね?』は、日本では2001年に出版されて以来、ビジネス書の決定版としてロングセラーに。

「『試すこと』に喜びを見いだそう!」とエルモア氏はいう。きっちり目標を立てて進捗状況に一喜一憂するより、「遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る」という姿勢でいいのではないか、とも。サラリと読めてしまうが、実は深い名言に満ちた本である。

 男はオヘア空港にいた一晩のうちに、陰鬱な気分から、躍動的な気分にガラリと変わってしまい、持続させているという。

 こんな閉塞空間で、いきなり出会った老人に、仕事やこれからの生き方のアドバイスをもらえるなんて、超ラッキー。せめて本書からヒントを受け取ろう!

文=久松有紗子