自分が書いた黒歴史小説の悪役に転生、死亡フラグを回避せよ!? 『転生悪女の黒歴史』

アニメ・マンガ

2019/1/4

『転生悪女の黒歴史』(冬夏アキハル/白泉社)

 誰にでも一度はあるでしょう。空飛ぶ魔女に憧れて、こっそりホウキにまたがってみたことが、手を触れずに目の前の物を持ち上げられないか、強く念じてみたことが。さらに読書が好きな人ならば、一度は書き出してみたことがありますね、自分の考えた架空の世界の設定を。学校の休み時間に、隠れてノートに書いているぶんにはいいんですよ。妄想するのは自由だし。でもそれを、大人になってから他人に知られたときの恥ずかしさといったら…!

『転生悪女の黒歴史』(冬夏アキハル/白泉社)の主人公・佐藤コノハも、そんな「黒歴史」を持つ大人のひとり。

 会社帰り、実家からの電話で「押入れに小説を書いたノートが入っていた」と告げられたコノハだって、焦っていたに違いない。電話を受けているまさにそのとき、事故に遭ってしまったコノハは、自分が書いた小説の世界──黒歴史そのものの世界に転生する。

 けれどコノハが転生したのは、美少女ヒロイン、コノハ・マグノリアではなかった。その妹であり、コノハの命を狙う最強の悪女、イアナ・マグノリアだったのだ!

 不本意な転生を遂げた佐藤コノハ、いや、イアナの周囲にいるのは、純真無垢で誰からも愛されるヒロイン・コノハだけではない。「なりたい女の子」を具体化したヒロインの側には、理想の男子が揃っている。佐藤コノハの好みの権化・伯爵家次男のギノフォードと、執事のソルだ。

 実は、ヒロイン至上主義だった佐藤コノハが考えたイアナは、プロローグで死ぬことになっていた。ヒロイン・コノハに恩のある、ソルの手で殺されてしまうのだ。いわば転生時点のイアナは、死亡ルートを爆走中。コノハが傷つくようなことがあれば、ソルはイアナを疑うだろう。死亡フラグを回避するには、コノハを害するつもりはないと、ソルに証明するしかない。コノハに降りかかるさまざまな危険から、彼女を守らなくては!

 考えてみれば、これを読むわたしたちだって、イアナと状況は同じかもしれない。誰もがみんな、主人公のポジションに生まれたわけではないだろうから。それでも、望まないフラグを見つけてはへし折って進むイアナを見るうちに、ふと気づくことがある。人生にどんなフラグが立っていようとも、みずから行動することで、物語は修正できる。そんなふうに運命にあらがう人物こそが、悪役だろうが端役だろうが、物語の主人公たりうるのだと。

 恋と魔法と“自分の黒歴史”が痛気持ちいい、悪役冒険ファンタジー。日ごろ、「自分なんて群衆その1だから」と感じている人にも、ぜひ読んでほしい1冊だ。

文=三田ゆき