17歳の“ニート”忍者がパーカー姿で高校に潜入!? 花沢健吾による新・忍者ストーリー開幕

マンガ

更新日:2019/2/21

『アンダーニンジャ』(花沢健吾/講談社)

 パーカーが忍装束! 大ヒットした『アイアムアヒーロー』作者の新作が『アンダーニンジャ』(花沢健吾/講談社)だ。

 戦国時代から暗躍し続けてきた忍者が、現代でも存在し続けている物語である。2019年2月に単行本1巻が出たばかりの本作をレビューしていく。

花沢健吾氏の最新作は、忍者が現代でも暗躍する物語

 花沢氏は累計800万部を超える『アイアムアヒーロー』など、インパクトの強い作品を世に送り出してきた。現在は本作と同時に、男性が滅んだ世界を描く『たかが黄昏れ』(小学館)も連載中だ。

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 本作の物語は、現代戦においても忍者が恐れられている、という描写から始まる。

 物語では、常に歴史の陰で暗躍し、栄華を誇った日本の忍者。第二次世界大戦では、ドイツの科学力と共に連合軍を悩ませた。戦後GHQによって組織を解体させられ、忍者は消滅した…はずだったが、実は今でも忍者は存在し続けていた。その数はおよそ20万人。これは自衛隊員、警察官と同様の人数である。

 光学迷彩などの最新技術と、伝統的な体術などを組み合わせ、今も忍者は国家レベルの争いごとの裏で戦い続けていた。だが一方で、末端の忍者の中には職にあぶれている者たちがいた。

 主人公は忍びの名門、雲隠(くもがくれ)家の末裔、九郎。彼も仕事がない忍者のひとりである。くすぶっていた彼のもとに、ある日「仕事」がくるのだった。

2つの意味で「食えない」! 17歳のほぼニート九郎

 九郎は謎の「会社」に所属している。そこではキャリアと呼ばれる中忍(それ以上の階級の者も含む)と、九郎たち下忍に分かれている。そして下忍たちの給料はかなり安いという描写がある。

 彼は無精ひげを生やし、仕事がない限りアパートでごろごろし、まるでニートのような生活を送っていた。

 現在17歳で不登校だったという九郎だが、お金はなくとも暇だけはある、そんな状況をそれなりに楽しんでいるようにもみえる。

 同じアパートに住む女性、川戸愛と昼間から酒を飲み、女子大生に酒をおごってもらったりする。

 とはいえ自分が名門一族であること、暇な下忍の立場に甘んじていることを気にするような描写もある。

 九郎は常に足音を立てずに歩き、体術も鍛えている。そして「戦え」という命令に拳を握りしめて応えるなど、忍者としての意識は高いようだ。

 アパートの住人たちとの会話からは、冗談を言うタイプなのか天然なのか、なかなか性格がつかめない。

 心理描写もまだ少ないため一言でキャラクターを説明することはできないが、「食えない男」であることは間違いないようだ。

現代忍者の戦いがいよいよ始まる…!

 単行本1巻の冒頭では「忍者が存在する」ことだけが説明される。

 登場人物たちのセリフなどから忍者の組織について、また多くの忍者が国内になぜか留まっていることが明らかになり、花沢氏らしい緻密に練り上げられた世界観がみえてきたところだ。

 ストーリーは、九郎が命令を受け高校へ潜入する仕事、海外の暗殺組織から派遣される通り魔の事件、そして川戸の下着が盗まれた話が並行して進んでいく。

 物語は静かな序盤が終わり、どうやら2巻以降で戦闘フェーズに移行する。

 最新装備である、特殊静電潜像迷彩パーカーを身にまとい、九郎はどのように戦うのか。現代日本で戦う忍者、その活躍、いや暗躍をぜひ楽しんでみてもらいたい。

文=古林恭