『ONE PIECE 92』ルフィが一撃で敗戦する“龍の化け物”カイドウが強すぎる…混沌する展開、強者の潰し合いが始まった!

マンガ

公開日:2019/3/4

『ONE PIECE』92巻(尾田栄一郎/集英社)

 強い。強すぎる。『ONE PIECE 92』(尾田栄一郎/集英社)で描かれたカイドウの強さは、計り知れないものだった。

 暗雲をまといながら「おこぼれ町」の上空に現れたカイドウ。やつは龍の化け物だ。その巨大さは、遠く離れた九里にある「おでん城」からもはっきり見える。ルフィはおこぼれ町のみんなを心配して、慌てておでん城を飛び出した。

 すると、とんでもない事態が起きる。最悪の世代の1人で“真打ち”のバジル・ホーキンスがカイドウに「麦わらとローはおでん城に隠れています」とそそのかす。これに乗せられたカイドウはおでん城を見つめ、「熱息(ボロブレス)」を放った。

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 あっという間に吹き飛ぶおでん城。「城が崩壊」というより「土地がえぐられる」ほどの威力に、誰もが絶句した。たしかに龍は火を噴く伝説の生き物だが…まさかこれほどの破壊力とは…言葉がない。海軍本部最高戦力・黄猿のビームと同程度の威力だろうか?  漫画を握りしめる手にじんわりと汗がにじむ。

 仲間のいるおでん城が吹き飛ばされたことに怒り狂ったルフィは、なんとカイドウに“エレファント・ガン”や“エレファント・ガトリング”を放つ。突然のルフィの攻撃に、カイドウは龍の化け物から人型に変身。その隙を逃さずルフィは“ギア4”で“コングオルガン”をぶっ放し、カイドウは倒れこんだ。

 しかし…まったくダメージを受けた様子がない。たしかこれらの技は、ビッグ・マム編で最高幹部“将星”たちと闘ったときに多用したルフィの必殺技だ。それをまともに食らって吐血すらしないなんて…。

「あァ~~~」と唸りながら起き上がったカイドウは、ルフィに一撃“雷鳴八卦”を浴びせた。ルフィは頭から血を流し…気を失った。敗戦したのだ。

 強い。カイドウが強すぎる。四皇の中でも“最強生物”とウワサされるだけに、恐ろしく強いイメージはできていた。しかし10億超えのカタクリを破ったルフィが、まさか子ども扱いされるとは…。

 ルフィはこれまで何度も敗戦してきた。アラバスタでクロコダイルに挑んだとき、ウォーターセブンでロブ・ルッチに挑んだとき、シャボンディ諸島で黄猿や戦桃丸に挑んだとき。どれも敗戦したが、最後は打ち勝ったり、修業するきっかけになったり、今後に希望が持てるものだった。けれど今回は違う。青雉に敗戦したときのような実力差がある上に、希望がまるで見えない。「どうやったらあの化け物を倒せるんだ?」。92巻を読み終えた後、その疑問が頭の中をぐるぐると回った。

 さらに問題はこれだけじゃない。ルフィとカイドウの対決に目が奪われがちだが、物語の展開は読者の予想を超えて混迷しそうだ。伏線の張り方が尋常じゃない。

 トラファルガー・ローとホーキンスが対峙したとき、ローは海楼石の“釘”を撃たれた。そしてホーキンスはこう言った。

世界に拡がる「海楼石」はこの国で生まれたんだ
そんなに小さく加工できる技術者はワノ国にしかいない

 ルフィがカイドウの手下に捕らえられて、牢屋に入れられたとき、最悪の世代のアイツと、ルフィの首を狙ったアイツと再会する。ビッグ・マム編でベッジと共闘したように、ワノ国編でも共闘があるのだろうか?

 ゾウでミンク族を蹴散らした化け物“干害のジャック”。やつは百獣海賊団の最高幹部“大看板”の一角だが、どうやら3人いる大看板のうち、一番下っ端のようだ。カイドウ一味は化け物ぞろいということか…。

 そしてルフィたちの奮闘の裏で行われている“世界会議(レヴェリー)”で大事件が起きた。「革命軍」の軍隊長たちが“くま”奪還のために、聖地マリージョアで海軍大将“藤虎”や“緑牛”とぶつかったという。

 他にも様々な伏線が張り巡らされ、ワンピースの世界を襲う“時代のうねり”をピリピリと感じる。今や四皇の一角となった“黒ひげ”の言葉が印象深い。

もう始まってんだよ!!!
“王”の座をかけた強者共の潰し合いが!!!

 懸賞金22億に跳ね上がったコイツもいずれは倒さなければならない。

 そして92巻の最後には、事態を急転させるであろう、決定的な場面が描かれている。アイツが…ルフィたちをあれほど苦しめたアイツが…記憶をなくして浜辺に打ち上げられたのだ。

 ワノ国編は尾田先生が大切に温め続けた珠玉のストーリー。物語の先はまだまったく読めない。

文=いのうえゆきひろ