桜の木の下で見た、涙のわけは…? 甘酸っぱくて真っ直ぐな、男子高校生2人の青春ラブストーリー

マンガ

公開日:2019/3/15

『晴れのち四季部』
(ひのた/KADOKAWA)

 勘違いやうっかりから、物事が思わぬ方向に進んでしまうことがある。大抵はどこかで間違いに気づいて引き返すはずだが、相手がいる場合、そうもいかないこともある。そしてその間違いが、告白だったりしたら――。『晴れのち四季部』(ひのた/KADOKAWA)は、ひょんなことから勘違いが起こり、付き合っていることになってしまっていた男子高校生2人の青春ラブストーリーだ。

 主人公・野原日乃と転校生・一瀬大和の出会いは、日乃が桜の木の下で泣いている一瀬を見かけたことだった。

 その後2人は同じクラスになったが、一瀬は真面目で真っ直ぐすぎる、強烈すぎる個性を放っていた。転校初日の自己紹介で、黒板に名前ではなく「四季部」と書き、「入部おまちしております」と部活を宣伝。その後もあらゆる手段を使ってひたすら四季部の入部希望者を募っていく。もちろん日乃も、あらゆる角度からじわじわと勧誘されていた。ちなみに四季部とは、名前の通り季節に関する物事に興味を持ち、触れ、それを感じる部活である。

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 日乃は初めこそ入部を断っていたが、一瀬の熱意に押され入部することにした。……のだが、ここで大きな勘違いが発生。部活に付き合うという意味で「付き合ってやる」と言ったはずが、一瀬もまわりのクラスメイトもそれを“愛の告白”と受け取ってしまい、日乃の知らない間に2人はカップルになっていたのだ。

 途中でそのことに気づいた日乃だが、男からの突然の告白を受け入れ、その後もずっと自分のことを受け入れ気遣ってくれていた一瀬への好感度はさらに急上昇。「一瀬って良いやつだな…」と、勘違いを訂正するのではなくなぜかその状況を受け入れてしまった。そう、このカップル間にツッコミ役は存在しない。どちらも素直で超がつく天然なのだ。このあと、日乃の中学時代のサッカー部の先輩・鳴子雷が登場するなど一波乱起こるが、2人はマイペースに、そして確実に愛を育んでいく。

 付き合うことになったきっかけは勘違いだったが、天然2人の緩やかで穏やかな、それでいて甘酸っぱい関係は本物。見ているこちらが恥ずかしくなるくらいピュアに相手を思い合っている。この絶妙な空気感は、男女ではなかなか作り出せない。男同士の関係ならではではなかろうか。

 この『晴れのち四季部』は、上で述べたように男同士の恋愛もので、一応カテゴリーとしてはBLに分類される。しかし過激な描写もなくひたすら爽やかに甘酸っぱい青春を送っているので、普段BLを読まない人も抵抗なく読めるはず。大人になると忘れてしまいがちな損得勘定抜きの純粋な気持ちに、ただただ心が浄化される。とにかく尊みがすごい…。BL好きな人にはもちろんのこと、仕事が忙しくてぐったり、人間関係のストレスで心がすさむ、という心が疲れた人にも、きっと癒しを提供してくれる。

 また、後半では、一瀬が四季部を作るにいたった経緯や事情、冒頭で桜を見て泣いていた時の思いも明かされる。2月27日には第2巻も発売する予定だ。これから2人がどんな経験を重ね、どんな関係を築いていくのか非常に気になる。筆者は女だが、こんな日乃と一瀬みたいな恋愛がしてみたい、と思ってしまった。

文=きこなび(月乃雫)