アニメも話題! 累計300万部突破の王道部活もの、題材は…お箏! 今『この音とまれ!』がアツい!

マンガ・アニメ

2019/5/3

『この音とまれ!』(アミュー/集英社)
『この音とまれ!』(アミュー/集英社)

 累計300万部突破。2019年4月からTVアニメもスタートした『この音とまれ!』(アミュー/集英社)をご存じだろうか。和楽器の“箏”(こと)を題材にした高校生の部活ものである。

 単行本20巻も発売され、ますます盛り上がる本作を紹介していく。

知る人ぞ知る和楽器、箏

 箏は伝統的な和楽器のひとつ。琵琶や三味線などと同じ弦楽器である。

 本稿のライターは本作を読むまで箏についてまったく知らなかったのだが、聞いてみると弾いたことのある知人がいた。なんと私の家族も弾いた経験があるという。

 また調べたところ関東だけでも箏曲部(そうきょくぶ)がある高校は120校以上あり、全国大会も開催されている。

 とはいえ、箏曲はブラスバンドや軽音に比べて知られざる音楽であることは間違いない。

 ただ本作を読むと、箏という楽器そのもの、弾いた感覚、曲のイメージの描写、情報量の多さと強い説得力にぐいぐいと引き込まれる。

 箏を知らなくても楽しめるのはもちろん、読んでいくうちに箏を好きになって聞いてみたくなるだろう。(本稿のライターも動画サイトなどで聞いてみるようになった。作品内の曲はジャンプSQ.編集部のYouTubeで公開されている)

 箏の描写や説得力が確かなのは当然で、実は作者のアミュー氏は箏曲家の母親のもとで育った。

 箏が当たり前の環境で育った作者は、3歳から箏に触れて演奏してきていたため“わからないことがわからない”こともある。

 そこで箏の先生もしている家族に、初心者のぶつかる壁、つまりキャラクターたちの悩みの表現を相談することもあるのだとか。

文化系でも“スポ根”! 王道部活ストーリー

 廃部寸前の時瀬高校箏曲部。そこに入部を希望してきたのは、ふだつきの不良男子と恐れられている久遠愛(くどうちか)。だが彼は箏職人の孫で、本気で箏に打ちこもうとしていた。

 部には箏の家元の娘で、天賦の才をもつ鳳月さとわ、部長の倉田武蔵(くらたたけぞう)らがいた。愛は彼らと共に部員を集め、学校に部を認めさせ、全国大会を目指す。

俺は早く上手くなりてぇんだよ
そんでぜってぇ全国行く

 愛は箏を好きで才能はあっても、実力は初心者だ。ただそこで泥臭い努力と根性でレベルを上げて、仲間と共に勝利をつかんでいく。

 まさに王道な“青春部活ストーリー”であり、演奏という文化系ではあるものの、アツい“スポーツ根性もの”なのだ。

悩み、成長する高校生たちの物語

 愛は中学時代に荒れており、刹那的に生きていた。当時ただひとり自分を認めてくれた箏職人の祖父を想い、箏と箏曲の奥深い世界に踏み込んでいく。そして仲間たちと大切な時間を過ごし、未来を考えられるようになる。

 さとわは、家元の母親との確執により、またその才能により、ひとりで生きることを余儀なくされていた。ただ愛たちと箏曲部で過ごすことにより少しずつ心を開いていく。

 また自分に自信がもてないでいたメガネブチョーこと武蔵の成長も描かれる。

 登場するキャラクターたちが丁寧に描かれているのも、本作の魅力のひとつ。

 本作はお箏のマンガというだけではなく、高校生たちの青春群像劇なのだ。

 2019年4月に発売された20巻では、箏曲部員たちが全国大会で優勝した一英高校の演奏を聴くエピソードが収録されている。“過去5年連続で全国1位”の音に圧倒される愛たちは、その帰り道に一英の奏者、美蘭とリュカと偶然出会う。

 強烈な刺激を受ける愛と箏曲部。今後の展開から目が離せない。

 本作で、箏と箏曲の魅力にどっぷりつかるのもおすすめだ。

文=古林恭