ズレているのは相手? それとも自分? 山本一郎が世の中のあれこれをぶった斬る痛快自己啓発本

暮らし

2019/6/7

『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』(山本一郎/文藝春秋)

「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションだ」とアインシュタインは言ったそうだが、確かに周囲が「常識」とのたまう事柄にイマイチついていけないことがある。どうも納得いかない世の中のあれこれ。自分がズレているのか、相手がズレているのか。周囲とのギャップに感じるモヤモヤを解消するすべはないのだろうか。

 山本一郎氏の『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』(文藝春秋)は、周囲と自分とのズレを認識するための自己啓発本。山本氏といえば、かつてはハンドルネーム「切込隊長」の名で知られ、近年は、作家として多くの著作で知られるが、本書は、「文春オンライン」での大人気連載をまとめた一冊。世の中のモヤモヤにどんどん斬り込んでいく姿勢はなんとも痛快。我々が言語化できない苛立ちをよくぞ言葉にしてくれたものだと感動すら覚える。「上層部に読ませたい」「励まされた」など30代、40代に共感を呼んでいるというその内容をほんの少しご紹介するとしよう。

●仕事観のズレ 足りないのはデータサイエンティストではない

 現代は、データを見て判断するデータ資本主義全盛時代。「データ分析ができる若者を育てろ」との声を聞くことも多いだろう。だが、山本氏は言う。

「足りないのはデータサイエンティストではなく、データを活用するために必要な仕組みや知恵であって、極論を言えばデータを扱えなくて判断も遅い老兵はいらないという、遠回しなクビ宣告であることに誰も気づいていません」

「真顔で『人工知能が人間を見抜く』という人がもしいたら、少なくとも現段階では儲け話に弱い、何かに騙されやすい可哀想な人だ、ぐらいに思っておいて損はないと思います。人工知能は儲かると騙されて投資した私が言うんだから間違いありません」

 これからの時代に必要とされるのはデータサイエンティストではなく、データに興味を持ち、現場に関わり、学び続けられる人なのだろう。

●結婚観のズレ 正しい努力をしても「札束」扱い

 結婚したいのに、できない。そんな人は、異性に受け入れられるための正しい努力をすれば、成功率が上がるはずだと山本氏は言う。

「どんなにスペックが高くても、また正しい努力をしていても、その若い女性から見れば『若作りしているおっさん』とか『頑張ってアプローチしてくる札束』ぐらいにしか見えていないのではないかと思います」

「あくまで結婚するという面において、スーパーで30%引き、半額というシールを貼られても売れない商品に自分はなっている、という理解をどこまでしているのか、売れるための正しい努力をしているのか」

…厳しい言葉だが、自分自身のことをよく見えていないまま、「結婚したい」と騒ぐ男女が少なくないのが実情だろう。

 漠然と感じていた思いをこうも鮮やかに言葉にされると、なんだか気分が晴れていくのは私だけではないだろう。ハッとさせられたり、時に反省させられたり…。前向きな気分になれるこの一冊は現代を生きる人々にとって必読の書といっても過言ではない。

文=アサトーミナミ